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ジルキン編12 騎士の暴走

≪レオン視点≫

 執務中の事だ。ジルキン()から緊急の通信要請が入ったそうだ。俺はシドに通信用の魔宝玉を用意させる。

 ジルキンと言えば、冒険者ギルドの総本山だ。あそこのギルドマスターは()()のわりに落ち着いている青年だ。

 ジルキン()とはあまり話をしたことはない。ただ、あまり贅沢をしない王だった。そこのところは評価はするが、自国の貴族を抑えきれてないことは評価できない。

 更にだ、オルテガの話では黒女神の連中が、オルテガからの依頼でジルキンで滞在しているそうだ。明らかにあいつらが絡んでいる予感がする。あいつらは英雄だが、バトスのような根っからの英雄ではなく、危なっかしい英雄と言ったところか…だが、あいつらはこの国に必要な奴らだ。だから、良く知らない国とあいつらを天秤にかけるのならば、俺はあいつらを取る。たとえシドに何を言われてもだ。

「リリアンもあいつらをかわいがっているからな…」

 考え事をしていると、シドがニヤニヤしながら魔宝玉を持ってきやがった。

「なんだよ」

「陛下。魔宝玉です。どうやら想定以上の事態のようです」

 俺は魔宝玉に目を通す。どうやら映っている()()だ。一体誰だ?


 女性が俺に話し始める。この物腰、()()か?

「初めまして。アロン王国国王レオン=アロン殿……ジルキン王国()()ソフィーヤ=ジルキンと申します」

 なに!?女王!?ジルキン王は!?

「陛下。返事をしなさい」

 こそっとシドが俺に返事を求める。

「あ、あぁ。済まない。女王と言ったが、ジルキン王はどうしたんです?」

 まさかと思うが、みつき達を国の内輪揉めに巻き込んだのか?俺は目の前の女性に対し怒りを覚えた。

「いえ、ジルキン王はもともと存在しません。私が女の身であることで他国に付け込まれないように、身代わりを立てたのです。申し訳ありません」

「そういう事か…」

 女の身か…俺はそういう偏見はないが、国によってはそこに付け入る馬鹿な国も存在する。魔王のような圧倒的な力を持っていない限り、舐められて終いだからな。

「それで?本当の姿を晒してまで、我が国にどういったご用件で?」


 俺はジルキン女王から、事の顛末とこれからを相談された。正直、頭を抱え込む程の問題だ。勇者が王子で悪事を働く?最悪じゃねぇか……都合がよすぎる。獣人が話をするとは思えない。どうする?いや、答えは決まっているが、この国だけでは支えられねぇ。ことが大きすぎる。うちの国の属国にするか?リスクが大きすぎる。

 どうする?ソーパー王に協力を求めるか?

「ジルキン女王。事が大き過ぎる。王位返上も頭に入れていますか?」

「はい。私の首が必要でしたら、この国の平和のために喜んで差し出します」

 覚悟はある…それなら俺の出来ることは一つだな。

「分かりました。貴族全員の処刑と…あなたの息子、王子の廃嫡と処刑も約束してください。みつきはそこにいますか?」

「なんです?」

 みつきがひょこっと顔を出す。

「みつき、獣人との間を取り持ってやってくれ。獣人の態度次第でアリス殿に協力を俺の方からする。それでジルキンをアロン王国の属国にするかアリス殿の庇護下に入れるか考える。もし、獣人がジルキン協力するというのなら、ジルキン人と獣人の混合国を作ればいい。だから協力してやってくれ。いつきには報酬をきちんと払うと言っておいてくれ」

「分かりました」

「ジルキン女王。こちらも最大限努力はしますが、獣人との交渉は貴女が行ってください。その結果を受け止めてください」

「分かりました…」


≪みつき視点≫

 

 通信が終わった後の女王様は明らかに疲れている様だった。騎士は王様の態度に不機嫌になっている。自分が慕う人があそこまで言われると許せなかったのだろう。でも、仕方がないんじゃないのかな?

「で?黒女神は受けてくれるのか?」

「うん」

「じゃあ、俺からの依頼だ。王子を捕獲しろ。ヘダーを守りソフィーヤの前に連れてくること、出来るか?」

 僕は、いつきさんよいやみを見た。ゆーちゃんは少し前から涎を垂らして寝ている。可愛いから僕が許す。いつきさんとよいやみも頷いている。

「じゃあ、僕達はいくよ。ヘダーの拠点を教えて?」

「あぁ。たし「ちょっと待て!!!!」…あ?」

 騎士の人が怒りの表情で僕達を見ている。

「黙って聞いていればこの国を侮辱しおって!!貴様らの助けなどいらぬわ!!女王陛下!!私達だけで行きます!!こんな奴らの助け入りません!!」

 そう叫んで騎士は出て行った。


「どうします?」

 いつきさんが呆れた顔で聞いてくる。そりゃそうだろう。今までできなかったことが、怒っているからという理由でできるのなら、なぜ今までやらなかったのかということになる。

「黒女神はあいつらと関係なくいってくれ。もしあいつらが危険になっても助ける必要はない。魔道地図を渡す、これで魔獣の森まで行けるはずだ。その森の中にヘダーの拠点があるはずだ」

「騎士はどうやって向かうの?転移魔法がある以上僕たちの方が早く着くと思うけど」

「いや、騎士には転移魔法陣がある。魔獣の森の近くに設置してある」

 下らない争いを避けるのなら僕達が先に行くか、騎士が全滅してから行くかだけど……

「すぐに向かいましょう。下手に獣人を刺激すると状況がさらに悪くなります」

「頼んだぞ」

 クレイグさんは、そう言って部屋を出た。あの人……

 いまは、それどころじゃない。僕達も魔獣の森に行く準備を「お待ちください!!」


 僕を止めようとしたのは?青い髪の毛をした青年?

「フランツ……」

 ふらんつ?女王様の知り合いか?

「私はジルキン王国第二王子フランツ。兄が申し訳ありません。兄を止めてください。人が人でいられるうちに……」

 フランツさんは涙を流し悲しそうな目をした。いつきさんはそれを怪訝そうな目で見ている。


「みつきさん行きましょう」

 ゆーちゃんを起こし、いつきさんの転移魔法で魔獣の森に向かった。


 目の前に広がる森。これが魔獣の森か。確かにいくつもの魔獣がいる。いや、魔獣が一か所に固まって同じ方向に進んでいる?その方向には別の反応?これは人間、騎士だ!!

「よいやみ、もう魔獣と騎士の戦いが始まるよ!!」

「みつき、しばらく様子見っす。あいつらには多少痛い目を見せなきゃダメっす」

「なんで?」

「自分たちの立場もわきまえず、あの場で大口をたたく。せっかく協力を仰ぐことになったにも拘らずです。普通ならあそこで協力関係は解消。ジルキンはあそこで終わりです」

「あの騎士はそれを分かっていなかったっす」

「しかし、あのフランツ殿下。凄いですね」

「いつき、わかったんすか?」

「はい。あの涙も悲しい目も、全て嘘ですね。あの人はあの場にいた誰よりも冷酷で、誰よりも王に相応しい。恐らく勇者王子を連れて行けば、顔色一つ変えずに処刑するでしょうね」


 そうだったのか…優しそうな人だと思ったのに。人間は怖い……

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