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二度目の婚約破棄――王国が滅びるまで  作者: ゲント・カイ


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第五章 敗者のいない戦勝式

公国独立から半年後、領都では戦勝式を行うべきだという声が上がった。


 軍人たちは当然のことだと考えた。


 四年の戦争に勝った。


 独立を勝ち取った。


 新しい国家には、新しい国家の誇りを示す儀式が必要だった。


 ヴィクトールは最後まで反対した。


「何に勝った」


 閣議の席で彼は問い返した。


「王国軍に、でございます」


「その兵士の半数は、五年前なら我々と同じ旗の下にいた者だ」


 軍務卿は黙った。


「兄弟同士で殺し合い、国を二つに割った。それを勝利と呼んで広場で酒を飲む気にはなれん」


 結局、式典は「独立記念式」と名前を変え、戦没者追悼を中心としたものになった。


 広場に設けられた祭壇には、公国兵だけではなく、王国兵の死者数も刻まれた。


 反発はあった。


「敵兵まで祀るのか」


 そう言う者に、エレオノーラは答えた。


「昨日まで同胞だった人々です」


 四年の戦争は、彼女から若さの一部を奪った。


 二十六歳。


 以前より痩せ、笑うことも少なくなった。


 婚約破棄された令嬢として噂された頃のことを、今では誰も口にしない。


 公国では彼女は、戦争中に病院制度を整備し、戦災孤児の救済を始めた公女として知られていた。


 その後、彼女は国内の侯爵家嫡男と結婚した。


 恋愛結婚ではなかった。


 だが、相手は戦争で兄を失った男であり、二人は多くを語らずとも同じものを見ていた。


 結婚から三年後。


 一人娘が生まれた。


 セシリア。


 ヴィクトールは孫を抱きながら、初めて公王らしくない顔を見せた。


 その子が十歳になった時。


 祖父は死んだ。


 病床でエレオノーラに残した最後の言葉は、王国を憎むな、だった。


「だが、忘れるな」


 それだけ付け加えた。


 公位はエレオノーラの夫に移り、彼女自身は公王妃となった。


 独立から二十年。


 公国は変わった。


 戦争中に必要に迫られて整備した街道が商業を発展させ、軍需のために拡張した製鉄所が農具を大量生産するようになった。


 常備軍制度が整えられ、領主の私兵に依存していた軍隊は国家直属へ改められた。


 行政官登用試験も始まった。


 身分の低い家から官僚になる者が現れた。


 公国が自由の国になったわけではない。


 貴族は依然として土地を持ち、多くの農民には納税義務がある。


 それでも、二十年前と同じではなかった。


 一方、国境の向こうでは。


 アレクシス王の治世が続いていた。


 王国は滅びなかった。


 だが、かつてほど豊かでもなかった。


 アルヴェイン公国の独立によって失った港、鉱山、穀倉地帯。


 その穴を埋めるため租税が増え、地方諸侯への負担も重くなった。


 不満の理由として、公国の存在は都合がよかった。


 学校では教えられた。


 王国が貧しくなったのは、アルヴェイン家が国土を奪ったからだ。


 戦争が始まったのは、アルヴェイン公爵が反乱を起こしたからだ。


 王太子妃候補だった令嬢は、父の権力を利用して王家を支配しようとしていた。


 それを拒んだ英明なアレクシス王に、公爵が逆恨みした。


 二十年。


 同じ説明を聞いて育った子供たちが、大人になった。


 その中に、一人の少年がいた。


 王太子ユリウス。


 アレクシス王の孫である。


 彼が幼い頃から最も多く聞いた言葉の一つが、


「失われた西方領」


 だった。


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