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星粒のリテラエ ——異世界転移した文化人類学者、理系王女と最適解王子の“誤差”を観測する  作者: はなちゃん
第一章 虹の王女ナナリエ 〜ふたつのソラの下で見つけた、私の座標〜
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第6話 虹と黒、最初の接続

タイトルを変更しました。内容はこれまで通りですので、引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです。

 その後、道ゆく人にいろんな言葉で挨拶をしてみたけど、

 答えてくれる人はいなかった。


 こんなに心細いのは初めて……


 いや、そうでもない気がする。


 はっきりとは思い出せないけど、似たような経験はたぶんたくさんしてきた。


 ——ぷくぷく、と水の音がした。


 この音は知っている。


 流れる音じゃない。


 湧き上がる音。


 地面の奥から、静かに押し出されてくるような、あの音。


 どこかで、ずっと聞いていたことがある。


 高い山の麓で。


 信じられないくらい透明な水の前で。


 覗き込むと、底まで見えるのに、どこか現実じゃないみたいで。


 私は、ただひとりで。


 何時間も。


 あの音を聞いていた。


 ……湧き水だ。


 音を頼りに進んでいくと、鼻腔を湿らせる匂いもした。


「お水だ!」


 よし、飲もう!


 駆け寄って、その泉を覗き込んで息を呑んだ。


 水じゃなくて。

 ……先に、息を呑んじゃいましたね。


「虹色?」


 透明なはずの水の中で、虹が揺れている。


 表面じゃない。

 もっと内側。


 深さのある光。


 シャボン玉とも、油膜とも違う。

 もっと、生きているみたいに、ゆらゆらと色が変わる。


 底が見えない。


 浅いはずなのに、どこまで続いているのかわからない。


 考えるより先に、喉が叫ぶ。


 飲め。


 両手でお椀を作って水の中に入れようとした、

 その瞬間


「ネイ!」


 小さいけれど、はっきりとした声が飛んできた。


 私は声の方に目を向けた。


「虹?」


 虹色の瞳が私を見ている。


「きれい」


 宝石をはめ込んだようだ。


 いや、宝石にはない生命力が宿っている。


 私が見惚れていると、瞳はどんどん近づいてきた。


 あ、乳白色の髪も、動くたびに虹色を跳ね返してるんだ。


 虹色の瞳と虹色の髪の女の子。


 この色、なぜか見覚えがある。


「ネイ!」


『ネイ』……禁止とか、ダメって意味かな?

 音の響きは鋭いけど、どこか悲鳴に近いような……


 ネイの後も何か言ってたんたけど、ちょっと聞き取れなかった。


 でも、私の行動を制止しようとしていることだけは伝わってきた。


 でも、でもね?


「水……、飲みたい!」


 口を開けて、泉を指差して、必死に伝えた。


 この人なら話を聞いてくれる気がしたんだ。


 伝われ!と念じながら、再度泉に手を突っ込もうとしたその時、


「ネイ!」


 彼女は素早く私の手を掴んだ。


 彼女の手、ひんやりして気持ちがいい。


 虹色の、たぶん日本人でいうところの20歳くらいの女の子が、ため息をついた。


「タリヤ、テンテンメ」


 まあ、だいたいそんな感じの発音だったんだけど、

 私には「仕方ない。最後の手段だ」と言っているように聞こえた。


 最後の手段って、何。


 彼女は髪を束ねていたリボンを解いた。


 虹色の髪がほどける。


 風はない。


 なのに、髪が浮き上がる。


 ゆっくりと、空中へ。


 静電気?


 いや、違う。


 見惚れている間に、その髪は意思を持ったみたいに動き出した。


 こちらへ向かってくる。


 応えるように、私の髪も浮き上がる。


 黒い髪が、静かに広がる。


 引き寄せられる。


 磁石みたいに。


 虹と黒が、触れた。


 絡み合う。


 そして——繋がった。



 電撃が走った。



 誰かの、記憶が、泥流のように押し寄せる。


 そう知覚した時、もう私の意識は遠のいていた。

 倒れゆく身体が太陽の光を全身に受ける。


 草の上に身体が横たわるとき、私は空に二つの太陽を見た。

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