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第523話 予想だにしなかった収束

「氷!?」

「ジェイド大丈夫!?」

「みんな落ち着いてく――」

「誰だお前!? ジェイドの兄貴から離れろ!!」


 ジェイドの仲間の内、一足先に俺達の事を視認できる距離まで近づいた前衛と思われる三人が三者三様の反応を示しながら武器を構えた。


 廃坑に似つかわしくない散らばった氷、見知らぬ俺の姿、そして氷越しでも人影が確認できる氷の台。それらと並んで立っているジェイドを見て、冷静さを保つのは難しかったらしい。


「俺は大丈夫だ! 頼むから落ち着――あぶねぇ!」


 前方の闇から飛来した矢をジェイドが未だに手に持っていた練習用の短刀で払い、隙を付くように放たれた風の刃は俺が水魔法の壁で受け止める。


「後衛二人は敢えて到着を遅らせて様子を伺っていたのか」

「まぁ、そうだろうけど……この状況で普通そんな分析するか?? 余裕綽々だな……」

「そうでもない。矢を防いでくれて助かった」

「……おう」


 ジェイドは魔法が使えないと言っていたが、隠密の練度や不意打ちへの反応と対処の速さと言い、その代わりに身体強化を駆使した戦闘技術はずば抜けて高そうだな。


 襲って来た後衛達の戦闘能力もかなり高いと見た……暗闇に紛れながら放った矢の奇襲は陽動で、恐らくそちらの対処で生まれてしまう隙を突く不可視の風魔法が本命だろう。


 彼等にとってこの状況は不測の事態に違いないはずなのに、すぐさま的確な連携を取れるのは侮れないな……ジェイドが早く場を収めてくれるのを祈るしかない。


「ジェイドが仲間以外を守った……!?」

「何が――」

「メルとサイクスは今すぐ攻撃を止めろ!! お前らも武器を捨てて話を聞け!!」

「お前……ジェイドの兄貴に何をした!?」


 前衛の一人がジェイドの事を『兄貴』と呼んだが、確かに全員ジェイドよりも若そうだ……ジェイドが二十台だとしたら、彼等は十代後半位だろうか?


 明らかに困惑している者、警戒しながら武器の構えを解かない者、そして我を忘れたかのように激昂している者……未だに後方に控えている後衛達の様子は伺えないが、これだけバラバラの反応をされてしまうと困る。


 この短いやり取りで恐らく全員戦闘技術が高いのは分かったが、精神性に関しては年相応そうなのが不利に働いているな。冷静さを欠かず、恐らく彼等のリーダー格であろうジェイドの指示に素直に従ってくれれば楽なんだが……。


「黙ってないで何とか言え!」

「ルシア! 俺は何もされてねぇから、とにかく話を聞いてくれ!」

「でも――」

「デミトリ、いい加減にするんだ!!!!」

「「「「「「「!?」」」」」」」


 急に聞こえて来た怒号に驚き思わず後ろに振り向くと、何故だか分からないがあり得ない位怒っているクリフに詰め寄られた。


「質問をされたのに答えないからあの子達が不安がってるだろ!!!!」

「え、いや――」

「せっかくジェイドが頑張って宥めようとしてるのに、横で無言で威圧してたら話が進まないじゃないか!!!!」

「わ、悪かった! ちゃんと話すからクリフも落ち着いてく――」

「謝るのは俺じゃなくてあっち!!!!」

「え!? あ、ああ……」


 突然氷の台から飛び出したクリフと俺のやり取りを、目を丸くしながら見ていたジェイドたちの方へと向き直す。


「その……色々と考えていて黙り込んでしまい申し訳なかった。ジェイドには何もしていないし、彼の話を聞いてくれるとありがたい。頼む」


 数秒頭を下げ、再び前を見た頃にはジェイドの仲間達から怒気が完全に抜けていた。怒りの代わりに困惑に感情を塗りつぶされたと言った方が正しいかもしれないが……。


「ちょっと話して来るから、少しだけ離れても良いか?」

「ああ」

「よし。お前ら集まってくれ」


――――――――


「ごめんなデミトリ」


 何が彼の琴線に触れたのか分からず、ジェイド達が話し合っている間に謝ろうと思い近付いたクリフに逆に謝罪されてしまった。


「いや、驚きはしたが問題ない。どちらかと言うと、何か怒らせてしまったのであれば謝りたいと思っ――」

「あー! 本当にすまない、あれは演技だから気にしないでくれ」

「演技……??」


 仮に演技だったとして、なんで怒っている振りなんかしたんだ……??


「あのままだと話し合い所じゃなかっただろ? 昔世話になった冒険者の先輩に教えて貰ったんだ、『人は自分より怒ってる人を見ると急激に冷める』って」

「それは……」


 確かに一番怒っていたルシアと呼ばれていた剣士さえも、クリフの剣幕を目の当たりにして凄まじい勢いで怒りが収まっていたが……。


「勿論誰にでも通用する手じゃない。例えば熟練の戦士には通用しないと思う、けどあいつらはまだ若造だろ?」

「『若造』か……そう言うクリフも年齢はあまり変わらないだろう?」

「まぁ、自分で言うのもなんだけど精神の成熟度合の話だ」

「……心がおじいちゃんと言う事か」

「そこまで言ってない!! ジェイドと話してるのを見守ってた時も思ったけど、デミトリは意外とずばずば言う性格なんだな?」

「そんな事は無いと思うが……」


 あの時は意識してジェイドを煽ろうとしていたので、あれを標準だと思われてしまうと困る。


「とにかく意図は理解出来た。型破りなやり方だったがあの場が収まったのはクリフのおかげだ、助けてくれてありがとう」

「少しは力になれたみたいで良かった!」

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