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第515話 広まる噂

 ――この数の屍人を一体ずつ相手をしていたらきりがなさそうだな。


「魔法で一掃するから絶対にその場から動かないでくれ!」

「っ、分かった!!」


 こちらには目もくれず、互いの身体を足場にしながら無理やり冒険者達の元に辿り着こうとしている屍人達目掛けて水魔法を放つ。


 激しい水流に背中を討たれた屍人達の動きが一斉に乱れ、壁面に張り付いていた人肉の膜がまるで一つの生命体のように痙攣した。


 濡れて不安定になった足場の上で屍人達が体勢を崩し、瞬く間に冒険者達を呑み込もうとしていた肉の壁が崩壊する。


 そのままのたうち回る屍人達ごと放った水を凍らせると、様々な体制で複雑に絡み合った屍人達は歪な氷の集合体と化した。


「……」


 本当は屍人達を拘束するだけでなく完全に無力化したかった。


 氷の槍等を放ってしまったら屍人はおろか、屍人が群がっていた冒険者達の避難している足場諸共破壊してしまう危険性があった。


 水流を放ったのは苦肉の策だったが……取り敢えずは安全を確保できたことを喜ぼう。


「凄いな!!」

「今からそちらに行く!」


 凍った屍人の上を歩くのは流石に忍びないので、氷の足場を作りその上に乗って冒険者達が避難している岩場まで移動すると、飛んでくるとは思っていなかったのか剣士らしき人物が目を丸くしながらこちらを凝視した。


「一応先程名乗ったんだが、恐らく聞こえていなかっただろう? 廃坑道を調査中に行方不明になった冒険者パーティーの捜索を任せられた、金級冒険者のデミトリだ」

「デミトリって、まさか――」

「その話は後にしよう。そこで倒れている魔術士は大丈夫なのか?」

「命に別状はない」


 魔術士の看病をしている治癒術士も、俺の質問に答えている剣士も疲弊しきった様子だが目立った外傷はなさそうだ。


「良かった……疲れ切っている所申し訳ないが、冒険者証を見せて貰えないか?」


 自分も首に掛けた冒険者証を取り出してかざしながら冒険者達にも同じように提示するよう促す。


 依頼を請けた時に彼等の容姿を軽くイーロイに説明して貰い、依頼票に載っている特徴とも一致しているので人違いではないはずだが、万が一の事がある。


「そうだよな、すまない! シェリル、エリーの冒険者証を取り出すのを手伝ってくれるか?」

「分かったわ」


 提示された全員の冒険者証を確認してほっと胸を撫で下ろす。


「協力してくれて感謝する。三人が俺の探していた冒険者達で間違いないな……一番重傷なのはエリーみたいだが――」

「連戦が続いたせいで魔力枯渇証を発症したの。魔力の回復を補助する訳じゃないから気休めだけど、治癒魔法を掛けながら安静にしてるから直に目を覚ますと思うけど……」


 心配そうに青ざめたエリーの様子をシェリルがうかがう横で、剣士のクリフが複雑な表情をする。


 何か事情がありそうだが……。


「……俺はまだ余力があるから不測の事態が発生しても対応できる。屍人達の拘束もすぐには解けないし、エリーが目覚めるまでここで待つ事も可能だが――」

「いや……救助されてる立場で我儘を言って申し訳ないが早くこの場を離れたい。エリーは俺が担いでいくからすぐに出発させてくれないか?」

「クリフ……! 『俺よりもエリーを看ろ』って言ったからまだ看れてないけど、あなたもボロボロなのよ?」

「これ位平気だ」


 全然大丈夫ではなさそうだな……肩で息をしているし、クリフ達が避難している足場の縁に血まみれの手形と血痕が残っている。


 恐らくエリーの看病にシェリルが集中できるように、クリフは疲れ果てた体に鞭を打ちながらずっと登ってこようとする屍人達を退けていたのだろう。


「クリフはこれを飲んでくれ」

「ポーション……? 中級じゃないか!? 救助された上にこんな高価な物を貰う訳には――」

「救助されたからには大人しく俺の言う事を聞いてくれ。三人共無事に連れて帰らないと意味が無いだろう?」


 強引に収納鞄から取り出したポーションをクリフに押し付けてから、俺が乗って来た氷の足場に氷を付け足して広げる。


「これぐらいの大きさなら全員乗れるはずだ、こっちに乗り移ってくれ」

「えっと、大丈夫なの……?」

「大船に乗ったつもりで任せてくれ。これならクリフも消耗しないし、シェリルもエリーの看病に専念できる」


 顔を見合わせたクリフとシェリルが数秒間なにやら考えた後エリーを抱え、恐る恐る氷の足場の上へと移動した。全員が乗っているのを確認してからゆっくりと足場の移動を開始して、広場の出口へと向かう。


「生きた心地がしないな……」


 透明の足場越しに見える足元の屍人達を眺めながらクリフが固唾を飲む。シェリルに至っては熱心にエリーの方を見て視界に入らないようにしている様子だ。


「広場を出たら高度を地面すれすれまで落とす。少しの間だけ我慢してくれ」

「あ、ああ……それにしても本当に凄いな。ヒエロ山の戦いの噂を聞いた時は半信半疑だったけど、あいつらに謝らねぇと」


 ……あの場に居た対策部隊の人間から話を聞いていたのか? 妙な噂が流れるのは勘弁してほしいんだが……。

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