閑話 二人のその後
森から帰還して、改めて拘留された後ギルマスに呼び出されたけど……デミトリさんとの依頼中に犯した俺達の失態を鑑みると、良い報せは聞けなそうだな。
ギルマスの執務室の前で所在気なく待っていると、俺と同じく呼び出されたアヴリルがギルドの職員に連れられて来た。
「「……」」
互いにこれからどんな沙汰を下されるのか想像が付いてるからか、気不味い沈黙が流れる。仕方がないと割り切って待とうとした矢先に、隣に立ったアヴリルに肘でつつかれ彼女の方に振り向く。
「どうしたんだ?」
「……あの場ではデミトリさんに仲裁されて聞けなかったけど、なんで一人で全員の罪を被ろうとしたの?」
「……」
なんで、か……聞かれたら失望されそうだけど、隠してたら一生打ち明ける機会がなさそうだな……。
「恥ずかしかったんだ……」
「恥ずかしい??」
「あの日、ギルドに戻ってギルマスと話した時……デミトリさんが誰なのか気づいた後、俺は黙ってたのを良い事にアヴリル達を切り捨てて自分だけ悪くないって言い訳しただろ?」
「それは……」
あの日、俺は自分が失言していない事を強調して保身に走った。
仲間を見捨てるなんてあり得ないと思ってた癖に、追い詰められたら簡単に見捨ててしまう言動を取った自分が許せなくて、今回の依頼中も俺が評価を落としても良いからせめてアヴリルが助かればって思って行動したのにそれも失敗した。
冷静になって考えれば、ラルフとカイルが死んだ時点でボルデに帰るのが正解だったはずだ……依頼を強行した所でアヴリルの評価は上がらなかったし、むしろ俺の独りよがりに付き合わせて彼女とデミトリさんを危険に晒しただけだ。
「自分勝手な行動をした自分が許せなかったくせに、結局自分勝手な理由でアヴリルを巻き込んで……ごめんな」
「あのね、何回も言ってるけど私がリーダーなんだからベンの失態も私の責任よ」
「ふ、そうだな」
「もう!!」
パーティーで居られる時間はそう長くないと悟っているのを気付かれてアヴリルを怒らせちゃったけど、どんな結末を迎えようとアヴリルとパーティーを組めて良かった。
「二人共、入ってくれ」
聞き慣れたギルマスの声に促されて、固く閉じられた扉を開いてギルマスの執務室に足を踏み入れる。
俺なんかに心配される筋合いはないと思うけど、会うたびにやつれてないか……? ちゃんと休めてるのか不安になるギルマスが手に持っていた書類をほおってこちらに向き直した。
「あまり時間が無いから手短に共有するのを許してくれ。カイルとラルフの件もある、分かってるだろうが二人共今回の依頼は失敗だ」
覚悟してたつもりなのに、ギルマスの報告に胃に鉛が落ちた様な不快な違和感に襲われて全身に鳥肌が立つ。
「罰として見習いギルド職員として扱き使うから覚悟してくれ。ある程度実績を積んだら冒険者に復帰させてやるから頑張るんだな」
「「えっ……!?」」
「何驚いてるんだ? デミトリから色々と聞いて、二人なら大丈夫だって太鼓判を押されたんだから期待してるぞ?」
デミトリさんが……!?
「でも、俺達は――」
「そういうのは良い! 見ての通り人手不足でヤバい状態なんだ、文句があるならある程度落ち着いてからにしてくれ」
「本当に私達がそんなに軽い処分で良いんですか……?」
「そうやって疑問に思ってる時点で反省してる証拠だろ? ちなみに依頼の評価についてはデミトリからぼろくそに言われてたから別に忖度されたわけじゃないからな? アヴリルはパーティーの指揮を執れてなかったし、ベンは自分の贖罪を優先して自己犠牲してるつもりが、アヴリルを巻き込んで迷走してる勘違い野郎だったってデミトリが言ってた」
「「うっ……」」
図星を突かれて怯んだ俺とアヴリルを見て、ギルマスのイーロイが微笑む。
「でも過ちを認めて真摯に謝罪できる二人なら、絶対にやり直せるとも言ってたぞ? ギルド見習いとして罪を清算する提案をしたのもデミトリだ」
「そこまでしてくれたのか……?」
「俺としては少しでもお前らが問題を起こしたら厳粛に罰するつもりだった。そこにボルデを救った滅死の魔術士が待ったを掛けたんだから、従わねぇ訳には行かないだろ? ……二人共、デミトリに感謝するんだな」




