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第510話 魔法の発動方法

「簡易詠唱と言うのは?」

「詠唱を省略したり、魔法名だけを唱えて魔法を発動する方法よ」


 幽氷の悪鬼を討伐した時ユウゴが叫んでいた『ディヴァイン・レイ』がこれに当て嵌まるのだろうか?


「デミトリさんは話を聞いてる限り基本ソロで活動してるんだよな?」

「ああ」

「じゃあ詠唱魔法と簡易詠唱の魔法を使う人と出会わなかったのも納得できるな」


 俺がソロで活動している事と関係があるのか?


「詠唱魔法は決められた魔法を確実に再現できる事が最大の利点なの。詠唱に時間が掛かるけど決められた範囲と場所に魔法が発動するから、仲間と連携を取りながら依頼をこなす冒険者の戦い方と相性が良いわ」

「なるほど……」

「ただ利点ばかりじゃないわ。乱戦になったり計画が狂った時、細かい調整が出来なくて融通が利かないし、咄嗟に発動できないから不測の事態に対処し辛いの」


 詠唱魔法は戦略的な運用が出来る代わりに明確な弱点があるのか……興味深いな。


「そういう時は簡易詠唱を使うのか?」

「そうでもないわね……簡易詠唱の場合、発動したい魔法の発現が補助される代わりに無詠唱の魔法と同じで制御と操作は自分でしないといけないの」

「それでも発動したい魔法の発現を簡略化できるだけ有用じゃないか?」

「魔物や魔獣が相手なら良いけど、盗賊なんかと戦ってる時相手に自分がなんの魔法を発動するつもりなのか伝えても良い事なんてないでしょ?」


 そういう事か。


「対策されるか避けられる可能性が上がるだけだな」

「そう。だから対人戦では無詠唱の魔法を使うのが主流で、魔物や魔獣と戦う時も変な癖が付かないよう簡易魔法は多用しない方が良いって教わるわ。簡易詠唱の魔法も使い道が無いわけじゃないんだけど……」


 不本意ながらヴィーダ王国に渡ってから数々の戦いに巻き込まれて来たのに、詠唱魔法や簡易詠唱の魔法を使う相手に遭遇して来なかった謎が解けた。


 アヴリルの言う通り自分の行動を予告する簡易詠唱の魔法は対人戦には不向きだ。これまで俺が戦ってきた相手が使わなかったのもそれが理由だろう……相手を惑わすために敢えて簡易詠唱する手も無くはなさそうだが。


 咄嗟の対応が求められる事が多い対人戦で、発動までに時間が掛かる詠唱魔法が使用されないのも頷ける。小規模の戦闘ではなく戦争規模になれば話は変わってくるかもしれないが……それこそ俺には関係のない話だな。


 ……そう言う意味では、悠長に戦闘中に詠唱をしようとしていた幽氷の悪鬼は本当に例外中の例外だったのか……。


「デミトリさんは無詠唱の魔法しか使わないんだよな? 魔法の威力を上げたい時はどうしてるんだ?」


 ベンからの唐突な質問に首を傾げる。


 聞き方からして、込める魔力の量を増やすみたいな答えは求めていなさそうだが――。


「そうだな。魔力量以外だと思いや感情……正確には殺意を魔力に込めた方が魔法の威力が上がるな」

「そこまで魔法学を学ばずに辿り着いてるのね……色々と納得だわ」

「アヴリルは分かり易さを重視して説明を省いてたけど、詠唱魔法は呪文に対する理解に加えて発現する魔法に対する思いが十分じゃないと使えない」


 呪文に対する理解と思いか……理解はともかく、思いが発動条件に含まれるのはかなり特殊だな……?


 それに先程の詠唱は実際発動した魔法と関係が無い、意味不明な言葉の羅列にしか聞こえなかったがちゃんした意味があったのか。


「ただ呪文を覚えて詠唱しただけでは魔法を発動させるのは無理なのか」

「そう言う事だな」


 必ず決められた魔法を発動できる利点はともかく、詠唱に掛かる時間と生じる隙、何よりあの恥ずかしい詠唱が必要になる以上俺が詠唱魔法を使う事は無いと元々考えていた。


 更に呪文の理解のために知識が必要で、発動条件に思いまで絡んでくるとなると尚更俺自身が詠唱魔法を使う未来が思い描けないな。


「詠唱魔法の発動が困難なのは理解出来たが、呪文等は一般的に知られているのか?」

「物によっては一子相伝だったり、危険過ぎて秘匿されてる詠唱魔法もあるわ。そのせいで年々失われてる詠唱魔法も少なくないらしいけど、さっき私が使った『水漠』の魔法なんかは呪文書を買えるわよ? 呪文書以外だと、他の魔法使いに依頼を出して教えて貰ったり、学ぶ方法は色々とあるわ」


 呪文書か……受け継がれなければ失われてしまう事や、基本的には既存の魔法を習得するしかない事から察するに、新しい詠唱魔法を作る技術は現代に残されていないのだろうか?


 そもそも誰がどういった目的で詠唱魔法を作ったのかが気になるな……中二病風の詠唱を聞いた時、どうしても異世界人が頭をよぎってしまったが……決めつけるのは良くない。


「一応治癒術士の俺からも補足させて貰う。属性魔法と違って、他人の身体に魔力を浸透させて傷付いた箇所だけ治す治癒魔法は、詠唱と簡易詠唱ともの凄く相性が悪い。だから治癒院に所属しないで、呪文を唱えながら治癒魔法を掛ける潜りの治癒術士は信用しない方が良い」

「そう言う輩は確実に詐欺師よ」


 アヴリルの語気の強さから、過去何かあったのではと勘ぐってしまうな……それにしても、何故治癒魔法だけが詠唱魔法と相性が悪いんだ?


「潜りの治癒術士を信じない事を肝に銘じる……ちなみに治癒魔法と詠唱魔法の相性の件だが、人によって体の作りも違ければ負傷した場所や内容も異なるだろう? 必ず同じ魔法が発動すると言う詠唱魔法や簡易詠唱の再現性が逆に仇になるのか?」

「今の情報だけで良くそこまで察せたな?? デミトリさんが言った事が通説になってる」

「通説……? 確証はないのか?」

「俺もそこら辺はあまり詳しくないんだ。治癒術士協会か、聖女の魔法について研究してる光神教教会のおえら方なら知ってるかもしれないな」


 やはり詠唱魔法や簡易詠唱は過去の遺産で、その仕組みを解き明かそうと研究されているみたいだな。


 未知の詠唱魔法が今後ぽんぽん出てくるわけではなさそうなのはありがたいが、ある程度普及しているにも関わらず、中途半端に技術や知識の継承がされていないのが気持ち悪いな……。

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