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第509話 後悔と謝罪

「呪文のようなものを唱えていただろう?」

「? 詠唱魔法だから、そうしないとあの魔法は発動できないわ――ですよ?? 大体、詠唱もしないで人を凍らせたり、()()()事が出来る方がおかしいと思うけ――思います?」


 濡れた雪を集めて作り上げた氷塊を指さすアヴリルの横で、こくこくとベンも頷く。


「そういうものなのか?」

「もしかして、魔法が三つに分類されるのを知らないの――ですか?」

「ベンも俺に敬語を使っていないし、口調の粗さ程度で今回の評価が覆る事はもうないから無理をしなくても良いぞ」

「う……えっと、分かったわ……」


 物凄く悪い方向に受け止められたみたいだな。


 少なくともアヴリルに関しては反省の意思が感じられたのと、先程のベンとの会話を聞く限りパーティーを率いる者として全責任を負う覚悟を示したので個人的な評価は低くないのだが。


「問いに対する答えは……そうだな。俺は魔法学を学んでいないから魔法にそんな括りがある事自体知らなかった」

「……?? あの魔法自分で編み出したの!?」

「そうだが……? 同じ水属性の魔法を使えるから、アヴリルも出来ると思うぞ?」

「は?」


 信じられないと言った様子で固まってしまったアヴリルに変わり、ベンが話し出す。


「魔法学を学んで無いって言っても、金級の冒険者なんだろ? 依頼を請けてれば詠唱魔法の使い手の一人や二人に出会ってるだろ?」

「一度だけ詠唱を始めた相手と戦ったが、徹底的に詠唱を妨害し続けたから結局何をしようとしてたのか分からず終いだったな」

「「うわぁ……」」


 余程の事が無い限り今回の評価が変わらないのを察した二人が、取り繕わずに素直な反応をしているが……評価など関係なく、そうあからさまに引かれてしまうと個人的に傷付くんだが……。


「二つ名持ちで、勇者と一緒に幽氷の悪鬼を討伐したって聞いた時は正直耳を疑ったけど……」

「規格外と言うか……私達、ほんとに喧嘩を売る相手を間違えたのね……」

「ピ!」

「「!?」」


 依頼中に戦闘が発生した場合、安全の為空で待機して欲しいと言いつけていたシエルが俺の肩に着地すると、先程まで少しだけ余裕を取り戻していたベンとアヴリルが凍り付く。


「ピー?」

「言う事を聞いてくれて偉いぞ、シエル」

「ピ!」

「「……」」

「……ラルフとカイルの件は申し訳なかった」

「「!?」」


 腰を折り、深々と頭を下げたのと同時にベンとアヴリルに動揺が走ったのが彼等の姿が見えなくても分かる。


「言い訳になってしまうが、本当は拘束した後ギルドに引き渡すつもりだった。何が起こったのかはギルドに報告するが、二人も仔細を聞かれたら正直に答えてくれ」

「……ラルフとカイルを止めなくちゃいけなかった私が言えた立場じゃないけど、あれは自業自得よ」

「俺達も馬鹿じゃ――いや、馬鹿だけど()()()()馬鹿じゃない。元々血が頭に上りやすい奴らだったけど、あそこまで向こう見ずだとは思わなかった」


 顔を上げるとベンとアヴリルそれぞれの顔に後悔が滲んでいた。


 俺からしてみればラルフとカイルは悪漢そのものだったが、二人にとっては仲間だ。


 正直ここまで冷静に俺の謝罪を受け止めてくれたのは意外だったが……謹慎処分を受けてギルドで勾留されている間に、二人共今回の件に付いて色々と考えていたのかもしれない。


「本当に馬鹿だな、俺達。なんであんたが先に謝ってるんだよ……デミトリ、さん! 本当に申し訳なかった!」

「ベン……! そうね、さっき言ってたけどもう何を言っても私達の評価は変わらないのよね?」

「え、あ、ああ」

「じゃあ評価の為に媚びてるだけとか思われないわよね。デミトリさん、私達の故郷を守ってくれてありがとう……! そして、色々と無礼を働いてごめんなさい!」


 俺よりもさらに深く頭を下げた二人になんと声を掛ければいいのか分からず戸惑っていると、シエルに首を突かれ我に返る。


「二人共頭を上げてくれ。謝罪は確かに受け取った……ありがとう」


 思いの丈を伝えられて肩の荷が下りたのか、顔を上げたベンとアヴリルが先程まで纏っていた緊張感が大分和らいだ。


「辛気臭い話題はもうやめましょ……その、魔鳥さんは攻撃して来ないのよね?」

「シエルは賢い子だから、俺に危害を加えようとしない限り絶対に安全だと保障する」

「ピ!」

「そう……とにかく、話を戻すけど魔法は大きく分けて三つに分けられるわ」

「詠唱魔法と?」

「簡易詠唱、そして無詠唱の三つよ。言うまでも無いと思うけど、デミトリさんが使ってるのは無詠唱の魔法で、私がさっき使ったのは詠唱魔法」


 何となくそれぞれの名称から違いが分かりそうで、具体的な差異については全く想像できないな。

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