第506話 追い詰められた冒険者達
「……」
「「……」」
気不味い沈黙に鼓動が早まる中、心の平穏を保ちたいがためにラルフとカイルの死体をから目を背けて深呼吸をする。
動揺しながらも、それほど二人の死を重く受け止めずに事務的に作業が出来てしまう自分に驚く。昔は人の死を目の当たりにしたら吐き気を抑えるのでやっとだった事を思うと……大分変わってしまったな。
「はぁ……」
思わず溜息が漏れる。
この変化をどう受け止めるべきなのか、人として大切何かが欠落してしまってないか、頭の中が渦巻く不安で満たされているが……呆けてる場合じゃない。
ギルドに戻って報告しなければ……。
「……依頼をしている場合ではなくなってしまったし、帰――」
「待ってくれ!!」
仲間の死体が傍にある事など構わず、ベンがなりふりかまわない土下座を披露する。
「頼む! 依頼を続けさせてくれ」
「ベン……!! 何言って――」
「アヴリル!! このまま帰ったらどうなるのか考えるんだ……!」
「焦る気持ちも分からなくはないが……」
今回の付き添いは異例中の異例だ。
ラルフとカイルのせいで二度と俺が付き添いながら依頼を請ける機会が訪れない事、そして贖罪の機会を失った自分とアヴリルが辿る未来が、決して明るくない事にベンは気付いてしまったんだろう。
鬼気迫る様子のベンに迫られたアヴリルが、何とも言えない表情でかつて仲間だった血塗られた氷塊を見つめる。
「どうなるかって、それは……」
「二人で何とかするしかないだろ……! 俺も後方支援じゃなくて、カイルの代わりに前衛として戦うから――」
仲間達の死体がアヴリルの視界に入らないように位置取りながら、ベンが必死になってアヴリルの説得を試みているが……今回の依頼は討伐依頼だ。
どこから移り住んできたのかは分からないが、幽氷の悪鬼が討伐されてから頻繁に目撃されえるようになったチュパカブラが討伐対象になっている。
雑食故に人を襲う危険性があるのもさることながら、森の中の薬草を食い荒らしているらしく俺も何度か依頼を請けているが……本当に二人だけで大丈夫なのか?
「俺はあくまでお前達が逃げ出さないように監視して、真っ当に依頼をこなすのを見届けるのが仕事だ。手は一切貸さないが良いのか?」
「私達だけじゃ――」
「大丈夫だ!! そうだろ、アヴリル??」
「……」
他人事だからかもしれないが、素直に罰を受けて罪を清算してから他の職に就いた方が賢明だと思うが……。
「……依頼を続行するなら二人が先導してくれ」




