閑話 王子の謝罪②
「こうやって二人っきりなんて珍しくて、なんだか変な感じですね」
「そ、そうだね」
最後に話した時、少しだけ打ち解けられたと思ったけど……セレーナがまた敬語に……。
「……えっと、ずっとちゃんと話す機会を設けてなくてごめんね? 僕と同じで、セレーナも来年の春からヴィーダ王国の学園に転入出来るようにアムール王立学園と調整してるから、その……」
「そうだったんですね、知りませんでした」
「う、うん……」
――――――――
「あの、今日呼んだのは色々と謝りたいからで……」
エリック殿下がこの世の終わりみたいな顔をしながら頭を下げてるけど、口調を元に戻したのはちょっと突き放し過ぎちゃったかもしれない。
私も前世の記憶になるけど貴族的な気遣いの仕方は理解してる。エリック殿下が酷く後悔してるのも分かるから、あまり意地悪はしたくないけど……。
「その前に一つ良いですか?」
「えっ? もちろん、先に話して貰って構わないよ?」
「エリック殿下はまだ私と仲良くなりたいと思ってくれてますか?」
「!?」
ばっと頭を上げたエリック殿下が、王族にあるまじき慌てようで手をわたわたとさせる。
「そ、それは、もちろんそうだよ!」
「本当ですか? 数週間一緒に居て、会話らしい会話の一つもしてくれなかったのに?」
「うっ……」
反省してくれてるしエリック殿下を刺すような発言はこれ位で良いよね。
本当は周りを遠ざける事に慣れ過ぎて、歩み寄ろうとする努力をしてこなかった私が言える立場じゃないんだけど……でも、これからは違う。
「ちょっと意地悪でしたね……これで相子にしましょう」
「えっ、相子……?」
「……話は変わるけど、来年からまた同級生なら口調を元に戻してもいいかな?」
「! う、うん」
ちょっと失敗しちゃったかもしれないけど、王族って難しい立場なのに私達を思って行動したエリック殿下を責める権利なんて私にはない。
私もいつまでも過去を言い訳にしてないで変わらないと……!
「アムールでは本当に色々とあって、私も色々と考えたんだけど……ちゃんと周りに居てくれるみんなと向き合おうと思ってるの。だから一緒に頑張ろう?」
「! うん……! ありがとう、セレーナ……」
憑き物が取れたように穏やかな表情でエリック殿下がそう言ったのと同時に、彼の後ろに控えてるイバイさんが咳込んだ。
あのままの流れだとそのままお開きになりそうだったし、従者がわざわざそこまでするって事は、謝罪以外に何か私に伝えないといけない事があったのかな?
「えっと、ナタリア嬢は下手に物を送るとリカ――、婚約者が居るから対面が悪いのと……ヴァネッサの好みも分からなかったから謝罪の品を用意できなかったんだけど、セレーナの為に手配した物があるんだ」
「相子だって言ったよね? 要らないよ?」
「そう言う訳にも行かないんだ。これは、君が持つべきものだから」
私が持つべきもの……??
困惑してる間に、イバイさんが上品な布に長包みされた何かを取り出してエリック殿下に手渡した。
「謝罪とは関係なく、セレーナの事が心配な友達としてこれを送らせて欲しいんだ」
エリック殿下が両手で支えないと差し出せない重みのある長方形の包み……もしかして――。
「アムール王国のニコル王子に協力して貰って、ゴドフリーの埋葬と彼の遺品の整理をして貰ったんだけど……遺品の中に日記と一振りの剣があったんだ」
「ゴドフリーの……」
「ニコル殿下から日記の内容を確認して申し訳ないって伝言と一緒に僕宛てに届けられたんだけど、日記の写しも一緒に預かってる」
恐る恐る包みを受け取った後、エリック殿下が一枚の紙を懐から取り出したのでそれも受け取って中身を確認する。
『自分を見失って色々な武器を試してるあの娘が、いつか自分を見つけた時に渡そうと思って剣を打ったけど、まだまだ時間が掛かりそうね。セレーナは手が掛かる娘だけど、根は良い娘だから信頼できる仲間にさえ出会えれば――』
「ゴドフリー……!」
涙で視界が滲んでそれ以上は読めなかった。
震える手で目を拭っていると、エリック殿下がハンカチを渡してくれた。
「あ、ありがとう……」
「どういたしまして。イバイ、お茶を手配してくれる?」
「はっ!」
「そこまでして貰わなくても――」
「心の準備ができてないのに急に渡してごめんね、落ち着くまでゆっくりしてていいから」
――――――――
「エリック殿下、この度は――」
「イバイ、今回の件はどっちのせいとかじゃなくて二人共悪いから……一緒に反省しよう」
「はい……」
「ふー……」
三人と話す前は心が押しつぶされそうな程緊張してたけど、話し終えてみるとなんでこんな事になるまで放置してたのかって疑問と、もっと早く話せばよかったって後悔はさておき大分気が楽になった。
苦言を呈してくれたり、諭してくれたり……こんな僕でも許してくれた三人のおかげだね……許されたって油断しないでちゃんとこの反省を忘れずに活かさないと三人にも失礼だ。
「……僕達はどこで間違えたんだと思う?」
「それは……」
反省会みたいな空気にしちゃって申し訳ないけど、最後はイバイと一緒に話さないと今回の件は消化しきれそうにない。
「……私にも反省すべき点が多々あります。今晩は徹底的に話し合いましょう」
「うん!」




