第498話 過保護の自覚
「本当に申し訳ない……」
「もう……謝ってくれたから大丈夫だよ」
冒険者として活動できるなら万が一俺に何かがあっても安心と評したつもりだったが、よくよく考えてみればその考えも説明していたらヴァネッサの逆鱗に触れていただろう。
少なくとも心配をかけて久し振りに会った仲間に言う事じゃない……褒め方以前の問題だ。
「ヴァ、ヴァネッサさん! お久しぶりです!」
「カミールさん? 改まってどうしたんですか?」
「いや! その、全然? 僕はいつも通りです!?」
あたふたしながらしどろもどろに答えるカミールの視線が、ヴァネッサの顔と俺の頭を掴んだままの彼女の両手を交互に行き来しているのを見て、ヴァネッサがそっと俺の頭の拘束を解いた。
「……大丈夫ですか?」
俺の傍に移動したカミールが俺の背に隠れながら、ヴァネッサを警戒するように小声で話し掛けて来る。
「あ、ああ――」
「もう……ちょっとしたスキンシップなのに人を猛獣みたいに扱わないでください」
「すきんしっぷ??」
カミールが異世界語に引っ掛かっているが、正直な所スキンシップという表現は俺も引っ掛かる。下手をすれば頭を握り潰され――。
「失礼な事考えてない?」
「!? 考えていない!!」
「……」
「えっと! お二人の話し合いは終わったんですか?」
沈黙を埋めようとするカミールの気遣いは嬉しいが、頑なに俺の背後に身を潜めようとするのは止めて欲しい。
「別に取って食べたりしません。顔を見て話してくれないのは失礼ですよ?」
「ひ、ひゃい!」
「かみーるよわい……」
声がした方に振り向くと、何とも言えない表情をしたアイリスがセレーナに頭を撫でられながらカミールを見つめていた。
「二人共待たせてすまなかった」
「大丈夫だよ! アイリスちゃんとも仲良くなる切っ掛けが出来たから」
「……ん」
あまりにも二人が自然にしているから気付かなかったが、セレーナはいつの間にアイリスの頭を撫でられる位距離を縮めたんだ??
この短時間で二人が仲良くしてくれるのは喜ばしい限りだが……少し胸が痛いな。
この前ニルからも耳が痛い指摘を受けたが、アイリスが自立して周りとの人間関係を築いていくためには、今の俺の過保護な接し方ではだめなのだろう。
もっと広い世界に触れて成長してもらうためには、積極的に俺以外の人間と交流する機会を増やしてあげた方が良さそうだ。
「セレーナ、申し訳ないんだがもう少しだけアイリスを預かってもらえないか?」
「私は良いけど――」
「アイリス、セレーナと一緒に待っててくれないか?」
「んー……わかった!」
「ありがとう。俺はヴァネッサと一緒にナタリア様が預かってくれているシエルを迎えに行く。そんなに掛からないはずだ」
「うん!」




