第497話 言わないと伝わらない事
「シエルの事なんだけど――」
「元気にしているのか……?」
「うん! 私とセレーナの依頼に付いて来れる位には元気になって、本当は今日も一緒に会いに来る予定だったんだけど」
ヴァネッサがアイリス達が退室した方向を見てから、そっと空いたままの扉を閉じた。
「アイリスがどう反応するのか分からなかったから、シエルはナタリアと一緒に居て貰ってるの。余計なお世話だったかな?」
「一応俺の方からもシエルについてアイリスに説明していたが正直助かった。ヴァネッサとセレーナの事も仲間だと何度も伝えてるのに、あの反応だったしな……」
「アイリスにとって今デミトリが世界の中心で、失ったら独りぼっちになっちゃうって思ってるんでしょ? 仕方ないよ」
……ヴァネッサはずっとアイリスと仲良くなろうと歩み寄ってくれている。勝手にアイリスを保護すると決めたのは俺のなのに、ずっと迷惑を掛けてしまっているな。
「俺の勝手で色々と迷惑を掛けて申し訳ない……」
「デミトリ、謝るのは一旦禁止!」
「だが――」
「前話した時、アイリスの事を見捨てるのはデミトリらしくないって言ったでしょ? 私も協力するから……一緒に頑張ろう?」
あくまで二人の問題として捉えてくれているヴァネッサの優しさに甘えてしまわないように身を引き締める。
「ヴァネッサ……ありがとう」
「そんなに改まって感謝されると困るよ! それに、埋め合わせはしてくれるんだよね?」
悪戯っぽくそう言ったヴァネッサだが、その仕草から別に見返りを求めている訳ではないというのが嫌という程伝わってくる。
「勿論だ!」
「ふふ、じゃあ楽しみにしてるね」
「こちらから提案せず聞いてしまうのが情けないが、希望があれば聞かせてくれないか?」
「……また、本屋に行ったり買い物したり……ゆっくり二人で過ごしたいな」
それ位お安い御用だと言い掛けたが、ここ数週間俺の都合で距離を置く事になっていたのに軽はずみにそんな発言は出来ないな……。
「……最優先で時間を作るから、少しだけ待っていてくれるか?」
「えっと、調整が必要なら無理しなくても――」
ヴァネッサの手を取って、意思を込めながら彼女の手を握る。
「無理じゃない。絶対に時間を作る……約束する」
「! ……うん!」
「こうやって二人で話すのも本当に久しぶりだな……会いたかった」
「ちょっ、急にどうしたの!?」
「ヴァネッサは違ったのか……?」
「そんな事ないよ!! 急に言われてびっくりしただけだから……私も会いたかったよ!」




