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第496話 相容れない?

 ニルに連れていかれたカミールは、翌日魔力枯渇症の予兆が一切ない状態で戻って来た。


 カミールの体調が良くなった事に安堵できたのも束の間で、彼とアイリスの間に一瞬重苦しい空気が流れたため焦ったが、開口一番約束を守れなかった事を謝罪して頭を下げたカミールを見てアイリスの態度はすぐに軟化した。


 俺に聞こえないよう、アイリスがカミールに何やら新しい約束をさせたみたいだが……一先ずは静観する事にした。


 約束の内容がおかしかったら負い目を感じていてもカミールなら断るだろうし、今後もしもその約束が原因で彼が困るような事があれば相談に乗ってあげれば良いだろう。


 そんなこんなで再開したカミールとアイリスの魔法練習を見守り始めてから三日が経った朝。いつものようにアイリスとそりの自室で準備をしていると、部屋の扉が叩かれた。


「デミトリさん、起きてますか?」

「ああ。何かあったのか??」

「ヴァネッサさんとセレーナさんが今日依頼から戻られるみたいです! 後少ししたらヴィラロボス辺境伯邸に到着するみたいなので共有でした!」

「ありがとう、教えてくれて助かる」

「はい! それではまた後で!」


 扉越しに聞こえるカミールの遠ざかって行く足音に気を取られている隙に、アイリスに背後から力強く抱き着かれた。


「!? どうしたんだ?」

「きょうもまほうのれんしゅうする?」

「あ、ああ。ただ、ヴァネッサ達と話したいから少しの間自習して貰う事に――ぐっ……!」


 慌てて身体強化を掛けながら、締め付けられた腹筋に力を入れる。


「はなさなくてもいいよ?」

「そう言う訳には行かない。二人は俺の仲間で、話したいんだ」

「アイリスといっしょにいるよりも? ひとりぼっちにしないって、いったのに」

「アイリス……」


 一人きりになってしまう不安は、ニルやカミールとの交流を重ねて大分和らいだと思っていたが……。


「アイリス、約束した通り俺はアイリスの事を守るし独りぼっちにする気はない。だけど、アイリスと一緒に居るためにはこれからもたまに傍を離れる必要がある」

「どうして?」

「そうだな……分かりやすいのは狩りかもしれないな。アイリスはお姉ちゃんと一緒に狩りをした時、一緒に行動する事もあれば、二手に分かれた方が効率が良かった時は傍を離れる事もあっただろう?」

「……うん」

「それと理屈は同じだ。今俺達は狩りをしなくても生活できているだろう? この生活を守るためには、どうしても俺が一人でやらないといけない事がある」

「うーん……」


 ヴァネッサ達と話がしたいのは大切な仲間だからであって、途中から論点を完全にすり替えてしまっているが……今の俺にはこれ以上アイリスにとって分かりやすく、かつ納得出来そうな例が思い付かない。


 せめて、アイリスが姉と二人きりではなく群れと一緒に行動していたらもう少し例えようがあったんだが……。


「……それに俺は帰ってくると約束して、約束を破った事が無いだろう?」

「うん」

「アイリスは、それでも俺を信じられないのか?」

「しんじてるよ! そうじゃなくて……うーん……」

「デミトリ、いる?」

「ぐはっ!?」


 扉越しにヴァネッサの声が聞こえて来たのと同時に、大蛇に締め付けられたのかと錯覚する程の圧迫感に胴が襲われる。


「!? 大丈夫!?」


 勢いよく部屋の扉が開き、見慣れた深紅の瞳と視線が交差する。


「「「……」」」

「ヴァネッサちゃん、深呼吸……って息止めてない?? しっかりして!」

「! すー……久し振り。デミトリ……とアイリス」

「ひ、久し振りだな。依頼は恙なく済んだのか?」

「うん」

「……」


 ゆっくりとヴァネッサの視線が俺の目から、体を伝って腹に巻き付いたアイリスの腕まで下がって停止した。


「セレーナは、その、大丈夫だったのか?」

「ヴァネッサちゃんに守って貰ってたから」

「……大袈裟だよ。冒険者ギルドが発注してる森の調査依頼は何が起こるか分からないから、基本的に街中で完結する依頼ばかり請けてたの」

「そうか……」

「……」


 会話が続かないな……。


「アイリス、二人の事は覚えているか?」

「……うん」

「さっきも言ったが、二人共カミールやニルと同じで俺の仲間だ」

「……うん」

「仲良くしてくれると嬉しい」

「……」


 ニルとカミールの事は割とすんなりと受け入れてくれたのに、どうして――。


「ち、ちなみにシエルは――」

「その事でちょっと話したいんだけど……」


 未だに俺の腹に視線が固定されたヴァネッサを見兼ねて、身体強化に更に魔力を込めながらアイリスの腕を掴み少しずつ剥がしていく。


「アイリス、少しだけお留守番して貰えるか?」

「……いっしょじゃだめ?」

「それは――」

「アイリスちゃん。お留守番が嫌なら、デミトリがヴァネッサと話してる間私と遊ぼうね~」

「セレーナ!?」


 俺が引き剥がしたアイリスの腕を掴んだセレーナが、強引に自分の近くまでアイリスを引っ張る。


「え、やだ」

「そんなつれない事言わないで欲しいな。ほら、髪の色も似てるし仲良くなれると思うよ?」

「にてないもん……!!」

「と言う事でアイリスちゃんは連れてくね」

「だが――」

「色々事情があるとは思うけど、ずっと我儘放題を許すのは良くないよ? それに私もアイリスと仲良くなるなら()()しないと始まらないから」 


 対話が何か別の事を指しているような気がするのは俺だけか……?


「じゃ、行くよ」

「!?」


 じたばたしているアイリスに力負けせずに引っ張っていくセレーナに驚愕する。アイリスの膂力は身をもって体験しているが、並の力じゃ押さえ込めないはずだが……。


「……まだ剣を握って戦うのは抵抗があるみたいだけど、元々体を動かすのが好きだからずっとうずうずしてるみたい。私も依頼の合間に素手で稽古を付けられたよ……」

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― 新着の感想 ―
筋肉で語り合うとか胸熱。前衛2人にバリアの娘も入れればかなりバランスの良いパーティーになるな。バフ系のにーちゃんも居たな、何処で何してるのかな?
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