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第491話 独学vs魔法学

「うごかせない……」

「身体強化の魔法を使う時自然と魔力を全身に行き渡らせている時点で、魔力はある程度制御出来ているはずだ」

「ほんと?」

「ああ。後は無意識にそうしていた時の感覚を掴むだけだ」


 その感覚を掴むのが難しそうだが……半端な励ましを送るよりは出来ると言い切った方がましだろう。


「焦らなくても大丈夫だ。仮に今日魔法を使うのに成功しなくても俺はずっとアイリスの練習に付き合う。結果を急がなくてもいい」

「……うん!」


 少しは気を紛らわす事に成功しただろうか? すぐに成功しなくてはいけないという意識が抜けて、若干余裕を取り戻した様子のアイリスに安心しているとカミールが耳打ちして来た。


「魔力の感じ方ですけど、肉親だと感覚が似てる事が多いらしいです。アイリスさんは――」

「残念ながら肉親とは死別しているな……」

「……! すみません」

「カミールが謝る必要は無いだろう。真剣に考えてくれてありがとう」

「責任重大らしいですから」


 苦笑いしたカミールが、再び声量を落として耳打ちしてくる。


「ちなみに、アイリスさんが魔力の制御に成功したらすぐに魔法を教えるつもりですか?」

「一度魔法を発動させて成功体験を積ませる方が良いと思う反面、しばらくは魔力制御の精度を上げた方が長い目で見てアイリスのためになるかもしれないから、カミールの意見も聞きたい」

「そうですね……前進してる実感がないと精神的に苦しいと思います! だから僕も早めに魔法を教えてあげる事には賛成です。魔力制御の練習は魔法を使えるようになってからも続けられますし」


 カミールも賛成なら早めにアイリスに魔法を使わせてあげた方が良さそうだな。

 

「ちなみに、魔力制御の精度向上は具体的にどんな事を練習させるつもりなんですか?」

「まずは少量の魔力で良いから自在に体の中で循環出来るようにしたい。それが出来たら、今度は特定の身体の部位に魔力を集中させて留める練習だな。両方をよどみなく出来るようになったら、徐々に制御する魔力の量を上げて行って、全ての魔力を自在に操れるようになれれば一先ずは魔法を使っても安心だろう」

「お手本みたいな魔力制御の習熟過程ですね……一先ずは安心と言う事は他にも習得して欲しい技術があるんですか?」

「魔力を体から放出して魔法を発動する際に必要な魔力操作を学ぶ前に、出来れば制御した魔力を動かす速度を限界まで上げたい」

「速度を??」


 カミールが首を傾げているが、そんなにおかしい事を言っただろうか? もしかすると、俺は独学が故に魔力の扱いについて間違った認識をしているのかもしれないな。


「体外に放出した魔力の方が体内にある魔力よりも操作が難しいだろう? 俺の勘違いかもしれないが、体外の魔力を操作できる速度の限界は体内で魔力を動かせる速度が上限になっているように感じる」

「それは……」

「体外の魔力操作の練習に四苦八苦するよりも、まずは体内の魔力を制御する速度の上限を上げた方が効果的だと思ったんだが――」

「他には何を教えるつもりなんですか??」


 食い気味にカミールに質問されて少しだけ焦る。やはり俺の考えは間違っていたのかもしれない。


「そ、そうだな……後は、魔力を掌から放出して魔法を発動するのに慣れてしまうと変な癖が付くだろう?」

「確かに、それが当たり前の感覚になってからだと修正するのに苦労しますね」

「最初は魔力を手から手に渡す簡単な魔力操作から初めて、今後魔法を発動する際体のどこからでも魔力を出せるように慣れてきたら、色んな体の部位から魔力を放出しては体に取り込む練習をしてもらおうと考えていた」

「なるほど……」


 じっくりと考えるように顎を手に預けたカミールの次の句を待つ。


「途中までは普通の魔法学と遜色ない内容でしたけど、やっぱり独学で学んでるデミトリさんは魔力の捉え方が少し特殊みたいですね」

「独学な分俺の考えは全て個人の感覚頼りで信憑性が無い……カミールの知っている魔法学的におかしな点があったら、アイリスに指導する内容を変えても――」

「いえ、一旦デミトリさんの考え通りに進めましょう! 僕も色々と試してみたくなりました」


 やる気になってくれたのは嬉しいが……本当に俺の考え通りに進めてしまって大丈夫なのか?? 


 ……俺の考えが過去の魔法使い達が蓄積した集合知である魔法学に反する危険な内容だったら流石にカミールも止めるだろうし、考えすぎかもしれない。


「……アイリスも自習をしているし、そろそろカミールの魔法強化を始めるか」

「デミトリさんも使える魔法を増やせるように意見交換するって言ってませんでした?」

「細かい事は一旦置いておこう」

「細かくないです……」

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