そこにはポツンと佇む女の人がね……いたんですよ…?深夜ですよ?
遠藤康太君......「私の最高の友達」である彼は所謂、魅せてくれる男だ。ゆるキャンをこよなく愛するナイスガイ。そんな彼は「あと一歩でラブコメに成り得たのではないか?」という体験があった。
作品に魅せられ原付ライダーとして、キャンプ地を転々とする彼は、しまリンが作中で行ったように旅先で出会う人と触れ合いつつ、「今僕は時空を超えて、しまリンを感じている!」と良い笑顔を浮かべる日々を送っていたのだが、ある夜の事......。
とあるダムにこんな時間にいるはずのない場所で……大学生ほどの真っ青な顔をしたお姉さんに遭遇したのだとか。改造手術されそうになった俺を窓パリーンを失敗してまで救出に来てくれる俺の遠藤君が、そんな人を見捨てるわけがない。
当然彼は彼女に「どうしたんですか!? トラブルですか!?」と声をかけ、彼女を保護したのだという。しかし……此処からが遠藤君である......! 彼女が此処で心の傷を語りつつ、こうお姉さんと高校生の、甘くて切ない冬の夜とかになったら、普通にラブストーリーである。遠藤君がそんな人であるものか......!
落ち着いたお姉さんは遠藤君の目を見つめながら、こう語ったのだという。
「彼氏を......彼氏を男に取られちゃった.んですぅ.....! 取られちゃったんですよぅ……!? ええ、そりゃあ昨今価値観が色々変わるとか、そういう事とかもあるんだし......そういう事もあるかもしれない! でもね!?何があたいのプライドを木っ端みじんに粉砕してくれたかと言えばねぇぇぇぇ!?
彼氏をあたいから寝取った男ってばさぁぁぁ! あたいよりも間違いなく美人&女子力高かったって事なんすよぉぉぉ! しかも周りの声がね! 「あ、アレに取られたんだったら仕方ないね☆ ドンマイ♪」とか、納得した声をあげている事なんですよぉぉぉ!」
人生は色々である。実は遠藤君、内心で「おや? これは撫子ちゃんとしまリンの出会いシーンの様な構図とも言えなくはない……?」とか、冒頭思って少しだけ新たなキャンプ仲間に出会えるかもしれないとか思っていたら、業の深い話を聞かされ、絶句するしかなかったとか。
しかし……しかし、遠藤君はまだ知らなかった。此処から語られる内容こそ真の恐怖だったのである。冷静になっていれば漂う猛烈なワンカップの匂い......! 壮絶に酔っぱらっているであろうこの女性。彼女は座った目のまま、遠藤君にダブルピースで真の目的を語った……!
「そこでねぇぇぇ! あたい考えちゃいましたぁぁぁ! 考えたんですってばぁぁぁ!? 普通の男が皆ぁ男の娘の方に流れちゃうならばー! 新しい発想で攻めなきゃいけないんじゃないかってぇぇぇ!
そこで、あたい通常の方法での出会いではなくぅ! 新たな出会いを求める斬新な方法を思いついたんですぅぅ! 本来はダンジョンで行うべき出会いの求め方をぉぉ! リアルワールドでは心霊スポットに求めるべきだったんじゃないかなぁって......♡
そうしたらさぁぁぁ! 君が釣れたって寸法なのさぁぁぁ! うぃー! 初めましてマイダーリン! このまま逝くべき所まで逝ってしまいましょう――って、うぷ、うぉ……えれえれえれ......(←虹色の何かが遠藤君にかかる音)」
遠藤君はそこがまさか心霊スポットだったとは、夢にも思わなかったそうである。死に物狂いで逃げる遠藤君を追いかける飲んだくれお姉さん。原付でスティーブマックィーン張りの逃走劇を演じた彼は、その後、俺の下宿のすぐ下でゲロまみれになりながら、俺に一連の出来事を語ってくれたのであった......!
それに関し、俺が思った事はたった1つのシンプルな答えである......!
「それ......呪霊じゃね?(汗)」
遠藤君大パニック......! 翌日何となく怪奇とかも何とかしてくれそうな、佐枝後輩に遠藤君を抱えて、見せに行った俺だが、佐枝後輩は話を聞くと、何故か近所の山田さんちのゴールデンレトリバーまなぶくんに遠藤君を見せるという不思議な行動に出た。
そして……佐枝後輩は聖母の笑顔を浮かべた後、こう告げたのである。
「安心して下さい遠藤先輩。憑いてないとの事です☆」
遠藤君、大喜び。きっとヘンテコお姉さんだったに違いないとお礼を言いつつ、笑顔で去っていった。佐枝後輩め......きっと、犬とか小道具を出しつつ、それらしい感じを出して遠藤君の恐怖を祓ってあげたに違いない。まるで呪術高専のような真似しくさってとか、俺は彼女に「このこのー」とか言った。後輩はその全てを肯定も否定もしなかったのだが、最後に一言だけこんな事を言った。
「……本当に運が良い人......余程前世で徳でも積まれていたに違いないですね……」
佐枝後輩......! 遠藤君を襲ったお姉さんは、もしかして両面宿儺の指とか喰っちゃったヤツだったのか!? 指何本分の強さだったの!? フォースの健康面に堕ち、今頃はきっと元気で暮らしているであろう遠藤君......!
君ならば……ああ、ずっ友の君がこの場にいたならば、どうこの現場を収めていたのだろうか……!? キルヒアイス亡きあとの、ラインハルトに気分だけはなったうえで、俺は必死に今現在の状況を整理した。
目の前に倒れている赤髪のお嬢さんの持ち物と、彼女の持っている持ち物からして恐らく彼女は魔術師の類と判断して間違いは無さそうだ。おそらくアナウンスお姉さんは彼女だろう。そして周りの神殿の様な様子......何処となくエチオピアだかでエメラルドの短剣が出たとかいう話がある教会遺跡に似ている気もする。
少なくとも......やっつけで作られた様子はない。全巻読破はしているが、マスターキートン張りの考古学の知識は俺にはない以上、これが偽物かどうかはどうにも分からない。
さて……目下最大のポイントは1つ。「これは佐枝後輩の新たな仕込みではないか否か」だ。開頭手術5秒前だった俺は、アナウンスお嬢さんによって反射的に口走ったブラックオープニング曲に合わせて、謎の光に包まれた。
なんか……そのふふふ......直前に後輩にですね、おでこにチューされた様な気分がしたようなしなかった様な気がしないではないけど、実はこのアナウンス女史も含めて、壮大な生贄儀式的な何かだったと言われると、それはそれで説明が付いてしまう気もするのだ。
インディジョーンズの魔宮の伝説で、心臓を抜き取るスタイリッシュ司祭が登場した事をご存知の紳士もいるかと思うが、まさにあれである。なんかあれっぽい儀式の前に、ナイフにチューだったり、犠牲者に祝福を的な意味でチューだったりとか、あるようなないようなとか思ってしまうのだ。
最悪のケースは、実は俺の開頭手術は華麗に失敗し、此処は某天国空港的な何かで、展開次第で向こうから遠藤君が「やっ」してくるのではないかという事だが……それに関しては、もう気にしても仕方が無いだろう。
そして、それ以外の想定が……「ココが実は本当に異世界なのではないか」という事なのだが。それを確かめる為の策は考えた。「世界観違うのが来ちゃった!?」という発言とさっきまでのアナウンスから察するに、彼女は「力を求めている」のは間違いない。
「力を求めてどこか遠い場所から強い戦士を呼ぶ」この条件に合わせつつ、ライダーマスクで顔が隠れている事で恥ずかしさがだいぶ軽減された俺は、召喚された英霊を気取ってみる事にした。
「召喚に応じて惨状したっ! サーヴァントライダー......と言いたい所だが! 残念! 俺には免許がない! ではチャリダーなのかと言えば自転車通学でもない……! 故に敢えて俺はこう名乗ろう......!我が名はテツヲ! 後輩にライダーにされ時と空を超えた男だ!」
ライダーと言い張りたかった......! 後輩のデザインした今の俺の姿は表現するならばカトキハジメさんデザインのガンダムW的な感じとでもいうか......そんなブラックな感じであり、シュッとした海洋堂さんチックなオリジナルライダーという所なのだ。
一言で言えば、「もしかして公式コンペ仕様のデザイン?」みたいな感じで、大変カッコイイ。しかし、実際問題免許がない以上ライダーではないのだ。更には此処には自転車もない。それでライダーとか名乗っても、格好は付かないだろう。
ついでに名前も色々大人の事情で、適当にやってしまうと怒られそうだという事を勘案し......ついでに、歌がカッコイイ上、俳優さんも大好きであるという事から、テツヲを名乗る事にした。 ちなみに生涯で1度はやってみたかった英霊ごっこが出来て大変に充足感もある……! さあ、どうする!? どう返す……!
これだけ色々盛りまくったのだ。佐枝後輩の仕込みであるならばそのスタッフさんも当然、数多のネタに精通したプロフェッショナルなはず......! こんなFateなのか、ライダーなのかテツヲなのかサッパリ分からないヤツに対して、ツッコミを返さざるを得ないはずだ……!
逆に言えば、此処でツッコミを返してこないのであればこの赤髪のアナウンスさんはガチの異世界人である可能性が高い。その場合は......え、どうしよう? いや、異世界もの...…大好きなんですよ。でも、実際に自分が行きたいかと言われたら、開頭手術と同じくらいで猛ダッシュ案件ですわ。
歴史に詳しいクラスメイトの佐藤敦子同輩が以前十字軍の頃合いの、「ガチで怖い十字軍」の話を語ってくれたが、どうしてもそれが頭の中を過ってしまうのだ。
怪我や病気に対し景気よく手足スパスパやっちゃう話だったり、道理が通った交渉が深刻に通じなかった話だったりで……ロマンの前に屍が転がりそうな逸話が滅茶苦茶怖かった。
食事に関しても、小麦やらの改良がなされていない時代の食べ物と現在のそれだと、色々違う面があったりなかったりやら、トイレを巡る過酷な物語等......。俺は思った。
「これは石神千空に全てを任せよう☆」
……異世界だから、現実とは違うのかもしれないけど、それでも石神先生案件かもしれないと思うと、自然と体にも緊張が走るというもの。嫌な汗を俺は感じ……ん、なんだろう、ちょっと暑いな。いや、密封性が高すぎる……いやいや、今はそんな事気にしている場合ではない。
お、アナウンスさん動いた……!? 何か呆然とした顔で口走っている! ツッコミか! ツッコミなのか……!?
「ふ……ふしだら……ふ、ふしだらいだー......!? 友を寝取られ……少女と睦み……脳髄をコネクラレ……え、ハイレベルって……レベルが高いって……そういう意味……なの......? 後輩に……ふしだらにされ……ライダーって何に乗っているの……? 桃色なの? 桃色夢時空なの……!?」
……アナウンスさん、上手い事を言う。ふしだライダー。演者藤田さんで藤田ライダーならぬ、伏田さんが演者という事で伏田ライダーか。このままテツヲを名乗るよりはそれを名乗るというのも悪くないかも……違うな。彼女の後半のセリフが全て違うと言っている。
彼女はどうやらエッチな事を考えているらしい。佐枝後輩の言葉を借りるわけではないが、アナウンスさん......なんてイケナイ人! ダメだ淑女が真昼間……昼なのかな?……でそんな事を口走っていては! 一部解釈違いがあるけど、大体言っている事に間違いは無いんだけど、脳髄コネクラレは未遂だからね!?
あと、少女ともしも睦あっていた場合は、今頃俺のSAN値は脳髄コネクラレとワンセットで底値を付いていたよ!? ダメだ、このままではいけない。彼女が異世界人であるかどうかの確証が持てない。ならば、次の手を打つべきだ……!
「問おう。君が俺のマスターか!?(カッコイイポーズ!)」
さあ、君が原作ステイナイトからの履修組か、それともグランドオーダーだったりから参加した人なのかは分からないが、頼む......! 現代人であってくれ……! 「令呪を持って命じる。ランサーよ自害しろ」とか言ってくれたら、「あははー☆ ライダーですよー。嫌だな間違えたなー」「だって、一度は言ってみたかったじゃない」とかで和気あいあいと出来るんだ……!
一瞬が千瞬にも感じられた。アナウンスさんは青い顔と赤い顔を行ったり来たりしている、さり気なく見ているが、旅人のマントっぽい服の下を見る限り、いわゆる露出多めの魔法使いさんなカッコとかではなく、恐らく何らかの金属とかが入ってるガチ目な装束だ。
体形は……佐枝後輩よりは、年相応の少女らしい。そんな事を現実逃避の様に考えていると、彼女はキッと半涙目&クッコロみたいな表情で俺を睨んできた。あ、これ嫌な予感がするヤツだ。一応、救ってもらった恩人の可能性がある以上、紳士的に対したいのだけれど……!
此処で俺の中に電光が走る! あった! あったぞもう1つ! クッコロみたいな顔をさせないで済み尚且つこの場を紳士的に収める方法が……! そんな問いかけがたった1つだけ……!
「それとも……! 『僕と契約して魔法少女になってよ☆』……の方が好みかなっ!?」
Qべえ感はだいぶ出ていたと思う。緊張もこれならばだいぶ緩和したのではないだろうか?
魔術師が魔法少女になる。かの駆除対象に認定される勧誘動物は果たして、そういう場合はどうするのだろう……? そんな事を考えていると彼女は唐突に言い放ってきた。
「や、やっぱり! やっぱりエロい魔神だった! 俺の女になれとか唐突に言い放ってきた!? いいわよ! なったらぁ! なってやろうじゃない乗るわ乗ってやるわよ! でもね、役に立たなきゃ即廃棄だわ! そ、そしてあんたがどれだけ乱れに乱れたモラルであろうとも黙認してやるけど、あたしが守らなきゃならない人達に手を出したら、絶対に許さない! ブッコロシテヤルわ!」
……魔法少女になってみませんかと言ったのに、俺の女になれと言った事にされた。いやまて、でもあの契約の台詞……考えようによっては、そんな感じに聞こえない事も無いのか……? ああ、でもどうしよう、遠藤君。
アナウンスさんの頭の中の桃色はすごく重症で……此処は本当に異世界みたいだ。契約って令呪とか本当に出たらどうしよう……(汗)




