剣と魔法の世界に巣食う『手からビーム出しちゃうおじさん』の脅威(癖増量版)
より拗れた人を追及したかったのです。他でも変更がんばってみようかなと。
ミリアがフィーナとロクデナシの婚約を止めなかった事には、実は明確な伏線が存在していた。彼女はだいぶ前からこう言っていたのである。
「魔王怪異の数が激しく増えている。近い内に必ず私の手だけでは足りなくなる。領内の防御を固めよう。このエリア周辺を固めた後に王都や他の事は考えるべき」
この時には、ミリアは王都周辺の話は今は考えても仕方がない事だと素っ気なかったのだが、実はミリアは王都と周辺地域に出現する魔王怪異の数はこっちよりもはるかに多いと、後であたしに教えてくれた。
現有戦力でフォレスト領内およびその周辺を、確実に死守した後で王都の事は決着する事になるだろうし、異変の中で、あのロクデナシが婚約者だのなんだの言っている暇はないと、
そしてミリアは王都から戻るように言われたとしても......「きっと、私は辺境の対処で忙しくなって動けない。今度の魔王怪異の数は多いから、王都は自分達だけでどうにかするしかない」とも言った。つまり、ミリアは遠回しだが、ハッキリ言い切ったのだ。「王都は知った事じゃない」と。これはミリアの復讐宣言だったともいえる。
多分、あの時が本当にあたしとミリアが分かり合えた瞬間だった。アンタ人形なんかじゃないよ。アンタ、あの王子が彼女にしていた事に本気で怒っていたんじゃないかと、あたしはあの子を思い切り抱きしめた。
計画は完璧だと思った。あたしとミリアで色々理由をつけてフィーナを領内に繋ぎとめてしまおう。王都の方にも、秘密裏に危機を知らせて助けておきたい人達を可能な限り救う事をするとか、あたし達にやる事は山済みだった。
上手く行くと思ったのだ。問題は……あたしとミリアが、フィーナの優秀さを甘く見ていたことだ。
報告や資料を見ている間に、彼女は気づいてしまったのだ。王都に必ず魔王怪異が複数出現する事に。そして、フォレスト領内防衛も激戦になってしまう事を察してしまったのだ。それを知った彼女は……王都に急報を告げるべく行く事を決めてしまった。
万に一つでも王都を説得出来たなら、フォレスト領への増援も出来るし王都での住民避難や、他の地域も残された時間で可能な限り出来る事があるからと。確かにその可能性はあった。フィーナは多分、あたし達が色々秘密にしていた事も察していたのだと思う。そんな、彼女にミリアはこう告げた。
「ねえ、フィーナ。そしてアンナはその友達。なら私はこう勧める。2つに1つしかないから、真剣に聞いて。フォレスト領だけは守ってあげる。
でも、他の連中はもう諦めて。私は最初から最後まで呪われていたから、最期だけは私の好きにしようと思う。
だから、王家はもう捨てよう?此処からリンディアの新しい国を興したらいい。私も最後に呪物と成り果てる私の屍を最後に封じてくれるなら友達にそうしてほしい」
......ミリアは無表情だった。でも、何処か泣きそうな様にあたしには見えたし、実際彼女は泣いていたのかもしれない。フィーナは頭が良い子だし、リスクしか残っていない事は当然分かっていただろう。でも、フォレストの人達は「人を助ける可能性を最後まで模索してしまう人達」だから。
きっと、ミリアも止められない事は察していただろうけど、最期は2月かけては絶対にダメ、その前までに絶対に戻ってほしいという言葉を告げて、あたしに後を託した。
脱出計画はしっかり練った。ミリアから成功プランと失敗時の脱走プランをそれぞれ10も提示され、あたし達はその後、王都へ向かう。
中には「処し計画」もバッチリ入っており、あたしは内心で密かに拳を「よっしゃ!」と握った! ふふふふふ……! あーはっはっはっは! そりゃあね? 最後の最後はフィーナの安全だけどね……?
「王族殺し!いっきまーす♡」……満願成就の夜が来たって事で、内心ものすごいテンションだったのは言うまでもない。あ、勿論彼女とあたしで逃げる事優先だけど……行きがけの駄賃的な……そんな意味だった。
さて……そして王家とあのロクデナシとの謁見がどうなったかに関してだけど、結論から言えば失敗した。フィーナは多くの時間をかけてコネクションも使い、資料を提示し説明も行ったけど、肝心かなめな所で、ロクデナシとその一派は全力で話を握り潰しに来た。
予想通りではあったのだ。でも……握り潰すだけではなくて、ロクデナシはフィーナを……あたしとミリアの大事な友達をこれ以上ないまでに侮辱した。
「……伏してお願い申し上げます。時間がもう残っておりません。昨今増える魔王怪異の数は例年の倍を超えております。出現予想エリアへの呼びかけと増援を……! 騎士団が出せないというならば、せめて魔力がこもった武器を出現予想エリアへ提供をお願いいたします。
通常の人対人の話では無く、魔王怪異に道理は通じません。出現前に迎撃準備を整えておかなければ、多くの人命と財産が失われます。勿論、王都もその例外ではありません。商業エリアと宿泊エリアで、7か所を超えてけた違いの者が出てしまえば大惨事になります」
気丈にフィーナは婚約者に頭を下げていた。接して初めて分かる事だが、魔王怪異とは単純に生き物が怪物化する事だけではないのだ。
「肉料理を注文していた人達から、延々と腹を突き破って牛肉が噴出し続けてエリアが拡大」とかガチである上、その切っ掛けが「いつの間にか混じっていた古ぼけた缶切りだった」とか、理不尽極まる物が本当にある。
ミリアなら物量ゴリ押し作戦だったり、出現前に呪物を発見して破壊してしまえるが、彼女がいない場合は騎士団や探知魔術の使い手が怪異に怯えつつ、死に物狂いで探査して元凶を探して破壊するしかなくなってしまう。ムリゲーもムリゲーと化す。
でも……それが分かっているというのに、あのロクデナシは話を聞かなかった。
「……人形姫ならばどうにか出来るであろう? それに補佐は君たちフォレスト家がどうにかする手はずのはずだ。あの人形に底などあるものか」
「ミリア様も不死身ではないのです。土や岩から無数の軍兵や武具を生み出せるといっても魔王怪異に決定打を入れるのであれば、魔力を持った武具を提供した方が目的にかないます。瘴気渦巻く魔王怪異が大発生するのであれば、彼女にかかる負担は最小限に抑えなければなりません。
発生場所は彼女が事前に示してくれております。それならば、最終的にミリア様が出向くのであったとしても、事前に騎士団を配置し閉鎖区画にするか、可能ならば討伐を試みた方が被害は少なくなります。お願いいたします」
「随分と人形に入れ込むものだ。それとも目的は英雄を健気に補佐する事をアピールし、資金と権限を自分らの元へ集める......そうだな、物乞いという所かな。 勘違いがある様なので、ハッキリ言っておこうか?
私はあの人形が大嫌いだ。魔王怪異から生まれた王家の者など存在すら汚らわしい。利用価値があるので生かしておいてやっているが、あれを巡る因縁で何人が世を去ったと思っている。あれが衰弱するというなら結構な事ではないか。
私はアレを滅ぼせるというならば、その為の犠牲はどれ程あっても構わらないとすら思っているよ。広がれ魔王怪異。忌まわしい王家の汚点を喰いつくすがいい……! 事が終わった後ならば、ああ、やる前よりも高くつくかもしれぬがね、多くの人と財を使おうか……!
だから、私はお前も気に食わない。穢れをいつまでも守ろうとするその姿勢が! 狂っているとでも言うのか……!? お前も王家の連なりであり、その一部だというのに、いつの間にか人形と戯れるようになった。
しかも……嗚呼、しかもだ……! そんな穢れを守る者の中に一番強力な魔力を持つ女が出てしまうとはななぁ! お前を娶ろうというのは言うなれば、その穢れてしまった中から再び聖なる灯を見出すための儀式なのだよ!
口を慎めよ孕み袋が……! 嗚呼、最も......それすらもこの様な諫言ばかりをする様ならば価値が下がるというものだがね。ああ、どこかに魔力が高い孕み袋のみが落ちてやしないだろうか! いっそ、それのみおいて去ってやくれまいか? ああ、自分が孕み袋であるとしか思えぬような目にでも遭えば変わるかなあ? 良い声で啼けよ?」
フィーナは完全に絶句していた。そして、王子の中にあったのは退廃と狂気だけであった事がこの時点で、ハッキリした。かの人形姫の友として、多くの時間を過ごしたフォレスト家とミリアを心から慕う彼女にとって許し難い侮辱だった。
無論、あたしにとっても。でも、ある意味ではスッキリしたと言っても良い。よーしミリア、これでこのロクデナシはあたし達の敵になった! フィーナにとっては……残酷だったと思うけど、後はプランBだ! ちなみに……処す計画は……ちくしょう、ちょっと会場を見た限り材料が2,3足りない……!
後はこう……変質者気質満載で、あたしの友達にゆっくり近寄るロクデナシからフィーナを庇い、ヤツが大嫌いな人形姫の力で地面からポイされたアーミングソードをひっつかんで、連中をけん制し、おっぱじめようか……と、思ったその時だった……!
あの汚らわしい会場に変な……変な笑いが響いたのだ。
「えふ......えふえふえふえふえふ......!」
「はっはっは」とか「わははは」じゃない。「えふえふ」え、それって、笑いなのそれとも新種の動物の求愛鳴き? ただ、まあ実際本人は笑っていたと自分で言ったので、きっと笑い声だったのだ。そこにヤツが出現したのだ……! 「手からビーム出しちゃうおじさん」が……!
何を言っているのかさっぱり分からないと思うかもしれない。しかし、実際そうだったから仕方が無いのだ。突然意味もなく足をスパッと左右に広げ、それが180度ピーンとなった後、スタッと降りたその紳士は......異国の装束でタキシード......に酷似したネクタイも兼ねた礼服らしいものを着て、あたしたちの前を通り過ぎた。
ちなみに、この時、「いや失敬、大爆笑してしまうとは紳士らしからぬ行為だった」とか言っていた。
魔力は持っていない。リンディア王都において特に城内の奥の間においそれと入っていいはずのない立場だった。しかし、誰も彼を止められる者はいなかった。そして謎の人物はフィーナとあたしに突然ホロリと涙をこぼしたのだ。
「吾輩は最期まで王都に残る者の為に策を探す君たちに感動した……! しかし、吾輩さっきからずっと見ていたけれど、そこの人前で妙齢の淑女に孕み袋とか、人前でいやらしい言葉連呼しちゃうお兄ちゃん達は、君たちのお話を聞く気はナッシングだ……!
これ以上、此処にいても君たちはセクハラパワハラエトセトラで、こうなんかエライ目に遭ってしまうばかりと思う……! とーくにー! 君だよぉぉ! 王子......と言ったか! そこの君ぃぃ! さっき、そこにいた側近さんと、熱いまなざしを交わし合ったのをぉぉぉ!
吾輩は見てしまったのだよぉぉぉ!? もしかして……やっちゃうのかい!? 暗殺とかやっちゃうのかい! きゃーエッチだぁ! 羞恥プレイ&オープンプレイの挙句にみんな大好き人斬り暗殺プレイとは…...!
吾輩.....流石にその趣向はハイレベルすぎて、ちょーっとひいちゃうかなぁぁぁ!?」
あたしは思わず......この時点で彼は名乗っていなかったが、あたしは感じ入るものがあった。
『コイツ......! 捨て駒にしても後腐れ無さそう!? 狙えちゃうか!? ロクデナシ&愉快な面々を適度に火葬し残る罪状をコイツに押し付けて、フィーナと一緒に、あばよとっつぁん行けちゃうか!?』
そんなあたしに対し、おじさんは何故か首をまるでミリアみたいにカクンと折り曲げ「君からは......!ふふふふ......! 吾輩と同じく癖に生きる者のカホリがする......! 君は高みへ至れるぞ?m9(*^▽^*)」と不穏な一言を告げてきて、なんでか知らないが、呆然とするフィーナを他所にあたし達は拳を軽くぶつけあったりもした。
ロクデナシはロクデナシで、「何を根も葉もない事を!? 痴れ者を呼びせて何のつもりだ孕み袋風情がぁ!お前はこんな男を誑し込んで......さては、不貞を隠す為に私を呼び出したか......! 躾がいるようだなぁそこの下賤女も同様になぁ!」とかなんとか言っていたが、おじさんは、耳まで裂ける様な怪物じみた笑顔を浮かべて、ロクデナシを瞬時に黙らせた。
その下賤女に真っ二つにされてみるかとあたしは言いたかったが、おじさんの笑顔は狂気の魔物そのものだった。
そして……おじさんは、まるでスポットライトを浴びる舞台俳優の様に恍惚としたポーズをとった……!
「吾輩は決めたよ……! 吾輩は自分の探求こそ全てと思っていた......! しかし、その探求が此処にいる健気な淑女達の懸念払拭と、王国の皆様のドキドキ暗殺プレイ横行する世界の両立に役立つというならば……今こそ公開しようじゃあないか! いでよ! 我が同志たち! 「がんばってがんばってマジか団」! 略してGGM団の皆さん!」
その瞬間だった。白と赤の道着の様な物を身を纏い赤い鉢巻をした無数のおじさん&橙色で背中に孫とか書いてある道着おじさん&赤いキャップと赤い袖なしジャケットを着たおじさん等......おじさんおじさん、あ、よく見たらなんか、お兄さんとか若い人もすごい中にいた。
中には、「フィーナ様! よくぞ忍耐されました! 後は我らにお任せください! 魔術......? ははは......!我らは、貴女への忠義と男のロマンで集結した有志達......! 今こそ目にも見せてくれましょう......!」とか涙を流す魚屋のフィーナの知り合いのおじさんなんかまでいた。フィーナはフィーナで……
「みなさん!? どうして!? あ、商業エリアの御魚屋さん! お孫さんの誕生おめでとうございます……あ、でもだからこそこんな処に入ってきてはいけませんよ!」
......とか言っていた。魚屋さん......トゥンクとかしているその顔! 気持ちは分かるぜ可愛いだろうあたしの友達は......! おいといて、そんな狂乱の中、……おじさんは高らかに叫んだのである......!
「さあ、今こそ我が名を語って聞かせよう......! 遠からぬ者は音に聞け! 近くは寄って目にも見よ......! 我が名は『手からビーム出しちゃうおじさん』……! そしてGGM団とは......! 「がんばってがんばってマジか!」つまり、手からビームが出るようになってしまったロマンに身を捧げし罪深き集団の事を指すのだ……!
今こそ語ろう! 吾輩が解き明かした人体の神秘......! あのね、人の体はね……!? あの日あの時吾輩達が夢中になったコマンド入力......!
こう、指先とか、足先とか舌先とかで、上上下下斜斜上目遣いとコマンドを瞬時に入力すれば......! あ、当然他の簡単なヤツでも可能だけど……!
出てしまうのだよぉぉぉ! 手から閃光がビームが飛び出てドカーンとやれちゃうのだよぉ! あの日夢見たパワーウェイブ!かめはめ波なんでも出来るよ! スッゴーイ☆ つまり、男の子のロマンは......現実化するという事! これを1人で楽しむのは、あまりに勿体ない!
故に吾輩ぃぃぃ! こっちに来てからぁぁぁ信者をぉぉ集めていましたぁぁぁぁ! 公園でやりたかったのだよビーム対戦バトル! そこに年も性別も貴族も裸族も関係が無ぁぁい!
ちなみに、コマンド次第で、髪の毛の色も変わるエフェクトも可能ぉぉぉ! ふははははは! そこな淑女達! 吾輩はこれから「よりカッコイイ効果の出るコマンド」は有料会員サブスクでのみ公開するが、王都の「日頃からリンディア王国の門閥貴族2564たいDEATH!」という皆さんに、コマンドをゲリラ的にばらまこうと思う!
これで平民の皆さんも自衛戦力が手に入り、貴族の皆さんは夜な夜な波動拳に怯える愉快な毎日になるというもの......! さあ、安心して郷里へお戻んなさぁぁい♡
これからこの町は、抜刀斎とか孫悟空とか、ジャンプな皆さんが集まる魔境になるぞぉぉ! 魔王怪異何するものぞ! 強ければ生き残る! 良識派は......えーとフォレスト領でフィーナ嬢と握手なのだぁぁぁ!」
......そこから先は、もう何が何だか分からなかった。風魔法におじさんの疾風拳が激突し、炎の極大魔法に雷刃波動拳とかがぶつかる。ええと……ついでに、人望って大事なんだなぁって思うのは、ソニックブームとか放ってた靴屋のおばさんとかが、あたしたちを見つけると、良い笑顔のサムズアップで道を切り開いてくれたことだったりするので良く分かった。




