山田刑事VS残骸の王子様ーこの夢から醒めたくないんだー
テロ屋とは戦争したよ。ああ、映画のまんまだよっ!?(ノД`)・゜・。
まなぶさんにクリスマスに、ジャーキーの良いヤツを食わせてやろうと思って買いに行ったら、なんか駅ビルをテロ屋がジャックしたんだよ! 動機だぁ!? 「クリスマスにイチャつく恋人たちに、忘れられないロマンティックをプレゼントしたかった」なんだとよ!
主犯が「クリスマス死すべし☆DTの会」とかの超能力教祖だったしな! 手から稲妻発射して直撃すると、髪の毛がM字禿になるとかいう地獄絵図だったな! M字禿でも貫ける愛こそ、真の愛だとかなんとか。
迷野は謎だけ解いて逃げやがるし、オレぁビルの中に置き去りで、人類滅びろと思ったもんだよ。まなぶさんが最後にジャーキー美味そうに喰ってたのだけが救いだったかな。
まあ……そんなんだったらオレぁの神経がガリガリ削れて、ついでに上層の首が吹っ飛ぶくらいで済むからマシなんだけどな。大概寝覚めが悪いのが「あだしぎり」が出てくるような案件だ。丁度、今みたいなヤツだ。
『おかあさま......! ぼくはできましたよ! せんせいにほめてもらえたんです! よくできたでしょ! ほら、もう1度やってみせますからね!』
キューピー達磨が膨らんでニコニコ笑いの子供の顔が、全身からピラニアみたいに射出されてくる。オレぁ、その首をさっきダンテの旦那からもらった風のナイフで吹っ飛ばし下に堕ちた先から銃撃くわえて粉々にしてやった。
ピラニアには銃撃は効くから、掃除そのものは差ほど難しくはないが、風のナイフもらったのは、本当にラッキーだった。格段にやりやすい。
ああ、コイツ......お母さんの前で全身からピラニア出して獲物を食わせる実演してるわけじゃなくて……多分、良い夢見てるんだろうなぁ……! 『あだしぎり』の案件はいつもこれだ! 良い夢でも悪い夢でも、大概本人は夢見心地……!
最初が何だったかは知らん。つーか知る意味もねえよ。だって全部もうどうしようもない話だらけだ。それがどんだけ痛かったのは、本人だけが分かる事だ。外野に語れる事なぞあるものか。
ただ、向こう側に落っこちると取り返しが付いちまう。死人は生き返るわ、失われた物は全部戻ってくるわ、まさにリセットが利く人生というヤツだ。
ああ、オレぁも心底羨ましいよ。だが......その夢を持続する条件は現世の物を片っ端から喰いつくす事に他ならない。(※ちなみに、悪夢バージョンの方もやる事ぁ同じだけどな? 攻撃力の桁が良い夢版の3倍は高いぞ。もう死にたくなるレベルだ!)
コイツも……きっと、お母さんの前で良いカッコしてるんだろうなあ……! ずっとそうさせてやりたい気も、ぶっちゃけ無いではないんだが、放置しとくとこっちが死ぬなら、もう戦争しかない。既にダンテの旦那が連れてきた騎士にも5人ほど、重傷者が出ていた。
今のピラニアでも1人血しぶきあげてやがる。救護班と盾班が死に物狂いで背後に担いで逃げていく。まさかドルアーガの塔と思いきや此処まで、スプラッターになるとは思っていなかったろう。
こういうボス戦じみた場所で、怪我人を救助する余裕は残念ながらオレぁらにはない。迂闊に救助に意識を割くとその瞬間に、こっちが攻撃を喰ってしまい全滅しかねないからだ。怪我人救助を専門家ができやすくするためにも、とにかく一刻も早くアイツを始末しなければ。
一応、打倒の算段は頭の中で1つ組み上がっていた。あの口から山の様に出てくる意味が分からん腕の群れだ。あれに捕まると即死だが、観察している限りあれが何かを喰うと腹の中の仏に変な色の液体が何度も吹きかけられている。
つまる所、あの口の中に、魔術の類をぶちこめば内部から爆裂させる事が出来るのではないかとオレぁ見た。
その作戦をダンテの旦那に話そうと、飛んでくる手を避けつつ近寄ると旦那はオレぁに吐き捨てる様に言った。
「口の中だな? あの中に術を叩きこんで中身から爆発させる」
「話が早くて助かるよ。懸案事項は1つ。此処にさっき貰った炎の筒4つ全部くくったヤツを用意したが、これ喰わせてもトドメまで行くか分からん。だから放り込むのと同時に風のナイフで腹の中を掻きまわしてやろうと思うんだが……」
「それでも腹を割くまで行くか読めん......という事だな。自分は全身に雷を纏った上でロングソードを口に突き刺してやろうと思っていた。後は……(背後の部下たちを見て合図をする。すると全員が何かを察したように頷いた。)」
「雷をまとっても、あの腕に触れる度合いは少なければ少ないほどいい。だから皆さんに援護射撃してもらうってわけだな」
「それで自分が失敗したら、お前が後に続く。これでダメだった場合は後は同じ段取りを繰り返すだけだ。自分と貴様の二段構えで相応のダメージは間違いなく掛けられるだろうからな。
ただ、貴様の場合は……あの腕にやられた場合、即死……」
「塔の中で拾ったハイパーアーマーがあるよ。焦げるけど内部までは行かなかった。まあ、なんとかなるんじゃないのか?」
「「…」」
「仕事にかかろう」
「残業代が恋しいよぉ」
……話に掛けたのは、ほんの2分程度。そして作戦は結構された。呼吸を合わせて2人で走り出す。騎士さん達が片っ端から風だの炎だの、水だのの散弾をぶっ放す。そしてダンテの旦那を邪魔する口から出てくる手を片っ端から叩き落した。
当然、それから逃れてしまう手もあるが、それはダンテ王子が良い具合に斬り落としていく。剣術は単純に斬り合いの術を学ぶための物ではない。単にその程度の物だったら、それこそオレぁ達の懐かしい日本の方だろうと、さっさと廃れてしまったはずだ。
稽古の中で、何がヤバくて何が平気なのかを見る目を得るのが本題の本題。だから人でない相手と切り結ぶ時も、実際相対経験も半端ないのだろうが、肝心要の時は上手く体捌きが生きる。雷に任せるもの、部下に任せるもの、ついでにオレぁの......銃弾では致命打にはならないが……ダンテの旦那の代わりに喰わせるものとしての射撃での銃弾提供でどうにかするもの、ダンテの旦那はマッハで判断を重ねた。
そして、ついに一瞬まっ平になった所にロングソードをねじ込んだ! 酷く湿ったグッシャ……という生音が響き、同時に傷口から墨汁の様な血しぶきが噴き出してきた。
中には、これまた夢見る様な笑顔の子供がたくさん染み入っている......! ああ、ちくしょう! やっぱりグロイなぁ……!
『おかあさま! ダンテ兄さまからも、ほめてもらえたんです! 筆頭騎士にもなれるに違いないって! ぼく、がんばりますね!』
「!」
ダンテの旦那の顔が一瞬歪んだ。涙が落ちそうだったのは錯覚ではないだろう。だが、それよりも旦那は騎士であり王族である事を優先した。
「さらばだ弟よ! 母の元へ戻るがいい……!」
渾身の力で稲妻を召喚するダンテの旦那。階層全般を焼き尽くすような稲妻が炸裂した。それによりキュピ達磨の頭と、胴体、腹の中の仏挿入部にえらい亀裂が入る! これは......やった……やってねえ!!
キュピ達磨はロングソードの先端を凄まじい勢いで体内に飲み込んでしまい、危うくダンテの旦那も体内に飲み込まれかけた。しかし、旦那もさるもので、再び稲妻を堕として第二撃を入れた。しかし、それでもキュピ達磨を葬るには至らず、口から再び生え始めた腕でダンテの旦那は背後に殴り飛ばされてしまった……!
ああ、これはオレぁの出番だ……! ダンテの旦那の安否確認よりも目標殲滅が至上命題。腕が再び襲い来るも、ダンテの旦那のおかげで数が回復していない。風のナイフで切って、銃弾で弾いて、後はハイパーアーマーを信じてキュピ達磨を登る、登る、登る……!
『ぼく、良い王様になってみせますよ! おかあさまのほこれる、そんな王子様になりますからね! まおうかいいだって、やっつけますよ! 勇者様がいなくなって、女神様がこなくても、きっときっとだいじょうぶです……!』
ああ、本当にな。丁度、さっき勇者さんとやらと女神様がいる供給源にオレぁ行ってきたところだったよ。ぶっちゃけ、東南アジアの薬の密売所じゃねえかって塩梅だったけどな。でも、ここの世界の担当がホイホイ見つかって……そんでもって、ここの事情をもっと早く知ってたら、オレぁ首に縄つけてでも引っ張ってきたのに。
何処で油売ってるんだろうな、勇者さん&女神さま。まさか『ビーム出しちゃうおじさん』やら、オレぁじゃあるまいに......ジャンプ読みすぎて、遅刻してたりしてな。どっかで就業規則を作ったりした方が良いんじゃねえのかな......?
そんな事を、一瞬思いながらもオレぁ持っていた炎筒のセットを口に捻じ込んで、起爆させる。至近距離の大爆発をハイパーアーマーが受け止めるが、肩部分と腹の部分が砕け落ちた。そこに更に腕がやってきて首を捥ぎ取ろうとするが、もはや意味をなさなくなった警棒を代わりに投げつける事で一瞬の隙を作る。
後は、どうやら息を吹き返したらしい後の騎士さん達が出してくれたであろう氷の壁が、コンマ数舜だけだけど、腕の到達を阻止してくれた。愛してるぞ騎士さん達! さっき凹殴りにしてめんご☆
そしてオレぁ、再び口の前に到達する。さっきの炎でも引導が渡せなかったようだが、中身のヌラヌラ輝く胎内が見えた。うぉ、キッショイな! 何がどうなったら生き物が此処まで分からんものになるんだか......!
だが、今は問答の時間ではない。オレぁ風のナイフを突き刺して中身に風を全開で吹き荒れさせた。これにより、ついにキュピ達磨の全身から体液が噴出し、巨大な爆発が発生した。オレぁ、その勢いで近くの壁に激突し、それにより今度こそハイパーアーマーが壊れる。
頭から血が流れる。耳がガンガン痛い。眩暈がして今にも倒れたくなる。しかしオレぁ唇を噛んで立ち上がった。うえ、この血を浴びたら変な呪いにかかるとかないだろうなぁ……?
ボヤきつつも、オレぁ、ニューナンブを取り出した。さっき見た。まだ仏が原型を留めていた。これだと時間差で生き返る事がある。第二形態変身バトルはまっぴらごめんなので、オレぁ、キュピ達磨の残骸をよじ登り崩れて倒れている仏の前に立った。
『ほら、だからだいじょうぶだったんですよ! ぼくらたすかったんですよ! ふぉれすとの人達が守ってくれた……! ああ、おかあさま......! おかあさん……!』
仏はずっと譫言を言っていた。骸骨になっている。だが、骸骨の表面に金髪の男の子が母親らしき女性に抱かれて泣きじゃくっている様子が映っている。彼のお母さんも、本当に安心したのだろう。悪夢が終わった事に安堵し、愛する息子を抱きしめて、ボロボロ泣いていた。
ああ......こういうのが本当は良いんだよ。こうなったら……ああ、ちくしょう、こうなったら良かったんだけどなあ……。『あだしぎり』案件は、結局こうなる。一瞬ダンテの旦那こそ決着をつけるべき立場だという事で丸投げしたくなった。
しかし、迷野の鬼畜生でもあるまいに。これは......こういうのはお巡りさんがやるべきだろう。オレぁ銃口を仏に向けた。
「良い夢見ろよ。お母さんと仲良くな」
……発砲した。銃弾が仏の頭を打ちぬくと、それに合わせる様に周囲のキュピ達磨から何かが空へ向かって流れていく。ああ、きっと、あの鬼畜生な転生案内所とやらではなくて、お母さんのいる所へ魂が還るのだろう。
仏はお母さんの所へ帰り、きっと良い夢を見続けるはずだ。しかしオレぁは……そんでもって、こっちに近寄ってくるダンテの旦那達は……ああ、腕から血を流してるが死んじゃいねえ……まだ悪い夢の中でのたうち回らないといけないのだろう。
誰もいないんだったら、ザ・リアル・フォークブルースを心の限り歌いたいねえ! 愛してたと嘆くには余りにも時が過ぎてしまったー♪ まだ心の綻びを癒せぬまま風が吹いてるー♪ 乾いた瞳で誰か泣いてくれぇ......。
煤けたおじさんにも、なんだか号泣したい日はあるのだ。でも、まだ最上階へ行かなければ。そもそもここから出れないし......深山君や。お前、まだ生きてるか?




