火つけから始まる2人の濃いのストーリー
テツヲはドヤ顔で通信機を持って、ライヘンバッハの塔の中にいるというテツヲのお師匠?だかと謎の会話を続けていた。ダンテ王子にキース氏に、他の騎士団の全員も息を呑んでいた。そう。この時までは色々誤解があったわけだし、テツヲがお師匠とか呼ぶガンマンの強さに関してもあたし達は全員知っていたから。
テツヲの説得でお師匠とやらが、あたし達の仲間になった時点でテツヲの誘導で、お師匠が上層へ駆け、後詰めであたし達が駆ければそれで済むと思っていたのに……!
ああ、それなのに……! テツヲは全員の視線が集中する中、しばし椅子に持たれつつ目を閉じ、天を仰いでいた。目の前の「そそり立つおじさんの塔」は壮大なキャンプファイヤーと化していた。そんな中で、ダンテ王子はテツヲの肩をポンと叩いた。
「……自分が思うに交渉は決裂したとみなしていいのか……?」
「決裂……どっちかといえば火葬にされたという方が良い感じではないだろうか?」
何処となく、決まりが悪い感じでテツヲは冷や汗を垂らしていた。キース氏はキース氏で、もう据わっちゃった目で、「アロン王子とお仲間はどうでもいいっすけど、シャロンちゃんに関してはマジで困るんすよぉぉぉ!? ちょ、どうするんすかぁ!」とか騒いでいる。
「落ち着いてください! 大丈夫ですよ! かなり壮大にテツヲのお師匠による爆撃でやたら燃えてますけど、まだ本格的に建物の中が炎上している気配は……炎の魔術師として感じません! まだ方法はあるんじゃないでしょうか!」
あたしは、アロン王子に関してはぶっちゃけ見捨てる気満々だったので、どうでも良いが当初の目的であるシャロン王女に関しては気になっていたので、真剣に集中して炎の様子を見分して断言する。全部を操れる炎にする事は出来そうにないが、まだ時間はありそうだと思えた。
それを裏付けるように、おじさんからのアナウンスが響く......!
『あーあー、マイクテス! 緊急イベント開催なのである! 『ドキ☆水の代わりに炎溢れるライヘンバッハ!―君は時間内にお姫様を助けられるか』現在、塔の中は灼熱モンスター大発生でエライ有様になっておるのだが、時間内に塔の最上階まで来られたら、もれなくシャロンちゃんと吾輩と一緒のチェキ写真とプレゼントしてしまうのである......!
ああ、この熱で汗が滴るシャロンちゃんが……! なんと……なんと水着で! きゃー! 吾輩これ以上は恥ずかしくて言えない!
当然、吾輩もお肌け覚悟の所存であるよ! さあ、来たれ王族! 孕み袋君に続く更なる伝説がジッとしてると誕生しちゃうかもしれないZO☆m9(*^▽^*)
あ、シャロンちゃんも何か一言あるとな? ほいマイク。
『きゃー☆ お兄ちゃんー♡ シャロンすっごい水着着せられちゃうー♡ でも恥ずかしいけど……☆音楽板を買ってくれた人だけに……み・せ・て・あ・げ・る☆』』
アナウンスが途切れた。同時にあたしは深刻に動揺した。え、シャロンちゃんって……?(汗)あたしの知る限り、シャロン王女って、年がら年中ヤニふかしつつ、「殺すぞゴルァ」みたいな物騒な顔をしていた......極道一直線の人だったような……?
あんな、こう、あざとさしか感じないキャピキャピな……誰だお前な感じだ。動揺したままダンテ王子を見ると……
「自分にもサッパリ分からんのだ……! 突然若返ったかと思えば、異様な身軽さとミニスカを履いて……! あんな娘では……妹ではなかったのだが……!」
……鋼の精神で忍耐していただけで、実はとっくに限界を迎えていたらしい。キース氏はキース氏で、「一部では以前の極道さんよりは、こっちの方が親しみやすいとか声もあがってるんっすが、キメエもんはキメェという声やら、以前とのギャップで笑いがこみあげて仕方がないとの声もあるっす」とか、教えてくれた。
で……挙句に、テツヲときたらテツヲで……
「……王女様がおじさんに捕まり、暑い中で危ない水着を着せられてしまう……だと?」
……これを全身お経まみれの人がいう光景を、貴方が想像したらどう思うかしら。ダンテ王子がそっとロングソードをテツヲの首筋に当てると、テツヲは……
「王子様、運命とは地獄の機械の様だと思うのだがどうだろうか」
……と、やたら目ったら遠い目で語っていた。緊急イベント。しかし本当に燃えている。おじさんの何らかの術なのか塔より外へは猛火は届かないのだが、これは時間経過と同時にどんどん酷い事になりそうだ。
そして全員がグダグダしていると、テツヲが意を決したように手をパンと叩く。
「こうなってはもう仕方がない。顧問先生については俺がこのまま先行突入してどうにかする。先生は性格から考えて、『手からビーム出しちゃうおじさん』と真剣に手を組んだとは思えない。
だから、これは恐らくウッカリの類と勘案したいが……どうしてもズンバラしたいというのであれば、それはそれとして要相談としよう!
ただ、悪い事は言わないから、もしも俺以外の人が先生と遭遇したら、可能な限り交戦は避けるなりして......ともかく適当に先生を上の方へ通す事だけに皆さん、注力をお願いする......!
各階攻略法に関しては、もうノートを渡したから、キースさん、随時アナウンスを。先生にも聞こえる様に無線封鎖とかはしない事で頼む」
「自分が指揮官なのだが、何を仕切っている?」
……また、ロングソードを突きつけられつつテツヲはダンテ王子に「すんません」とか言っているが、この期に及んで、ダンテ王子にも特に反論は無かったようだった。
そして、あたしは当然テツヲと組んでの先行突撃部隊という事になった。「異論はないわよね!?」と言うと、彼は「こっちから頼むつもりだった。心強い」との一言。うん、変な妄想世界に走らないなら、言葉少なくて、それなりに好感を持てるヤツではあるんだけどなあ。
ちょっとだけ気になるのは、佐枝後輩という謎の女の子とミリアのテツヲへの懐き具合が、変な重なりを見せることくらいか。テツヲ自身は、「シックスパックが……年下誘因の謎のフェロモンを……」とか言っていたので、そこは膝カックンしてやった。
そして……あたし達は、炎溢れる塔の入り口。厳密に言えば、テツヲのお師匠が盛大に開けた風穴のすぐ下に立っている。他の人達は塔の入り口……もう、炎の影響で落っこちてしまっているので、コインの心配は無い……に続々と向かっているが、あたし達は炎の力を使うあたしが一気に、炎であの穴までテツヲと一緒に跳躍する事になっていた。
テツヲは炎を見ながら、どことなく落ち込んでいる様に見えた。あ、そりゃあ、なんだかんだでお師匠と戦う事になりかねないこの状況。出来れば避けたかったんだろうし。少し気の毒になったから、あたしは肩を叩いて声をかけてやった。
「気にする事......まあ、気にしない方が無理っぽい大火事だけどさ。多分話せばなんとかなるって思うんでしょ? だったら……ダンテ王子との話し合いには、あたしも口添えするし」
「……ん、ああ、顧問先生の事か。実はそっちに関しては、あんまり気にしていない。ぶっちゃけた話、佐枝後輩ほどではないが……少なくとも、こういったジョンウィックやらダイハードじみたシチュエーションの専門家が先生だ。
ついでに悪運もやたら強いのだし。むしろダンテ王子達が変に先生にかまって、被害を増やしつつ先生が自己嫌悪で死にたくならないか等の方が……気にはなっている」
「……あのガンマン……そんなに強い……というより、佐枝後輩ってあの幽霊みたいな......あんた、これ終わったら魔神に言うのも何だけど、本格的にお祓い受けた方が良いと思うわよ……?(汗)」
実際、割と本音の言葉だった。というか......あれを夜な夜な……あたしの下腹までどうにかなりそうな……それで焦らされ続け……大概、このテツヲもどうかしているわね!?(汗)え、なんなの、変態性癖っぽいけど、実は聖人だったりとか、そういう事なの!?
そんなあたしの苦悩を他所にテツヲは、遠くを見る目をした。
「それよりも……此処を行くという事はまたあのSAN値ゼロシステムを使わなければいけないという事で……。おじさんと衝突する以上は、仕方のない事であるのだが……」
聖人は常に悪魔の囁きに苦しめられる。ありとあらゆる囁き(=プレイ)に苛まれつつ、人の幸せ(=あくまでノータッチを貫き通す♡)とは何かを人に示し続け……あ、やめて、条件がどんどん一致していくような。あたしの中の聖人像が全部これになっちゃうとか色々ダメージがでかい。
「き、気持ちは……分かったとはとても言えないけど。でも、今度は魔除けも書いてあるんだし。いざとなったら、あたしも使い魔の主という事で色々術式を行使してあげるから。だから、きっと物事は良い方向に行くと思うわ。うん」
二カっとしてやる。うん、なんだかんで故郷から遠く離れて此処にいる以上、あたしは味方という事で、コイツを慮る事も……
「今の俺には……ああ、アンナさん! 君のかすかに滴る汗が……! 首筋を伝い……! 艶めかしく髪の毛の一本が首にまとわっていて……唇の艶やかさとか、汗が首筋から胸元へ堕ち、思っているよりも豊かなそこへ……たまっていくのとかもアリアリと想像……」
とりあえず頭を思い切り引っぱたく。よし、同情は止めよう☆ というか、何が怖いかって、それを聞いていると、なんか自分の体に今起きている変化が……! あ、そういわれたら服の下って、そんな感じになってるなぁ、ああ、胸とかもこの脈打つ感覚と肌着の感触がとか......なんか生々しく実感されちゃうんだよぉ! きっと、全部佐枝後輩のせいだ!
「し、システムのせいだ! 全部それのせいって事で、テツヲ! もう変な事言ってないで変身して!へんしーん!」
「それもそうか。では......行くぞ! 全て……全てゴルゴムの仕業! ゴルゴム死すべし!慈悲は無い!変身!」
テツヲの腰にベルトが出現し、なんかカッコイイBGMが流れ、彼の姿が黒いボディと真っ赤な目のバッタ人間への姿に……ふしだライダーとかに変化する! 後はそんな彼にあたしはおぶさりながら、炎を操り、一気に壁の穴にまで跳躍する算段だったのだが……!
ここで、ここで、あたしは痛恨のミスに気づいてしまった! システムが発動している最中には彼女が……ああ、テツヲいう所の、AI佐枝後輩が……! AIでこれなら本体はどれ程だという彼女はしっぽりとまとわりついている事に。
あたしにだけ見えているのか、テツヲにも見えているのか、彼女はウットリする様な笑顔であたしの顎をツツっとした。
『ああ......今日は異世界の貴女も一緒に深山先輩を開発してしまうのですね? 深山先輩……欲深くて……ああ、イケナイ人……♡』
貞操と理性の危機だ。あたしは……生き延びる事が出来るのだろうか……? ゾクゾクする様な少女の微笑みと自身の中の謎の感覚と、ついでにヤベェ感じになっているテツヲを見つめながら、あたしは必死に炎を操る事に集中した。




