ミリアさんはエキセントリックー彼女は履いてないと言い切った―
昔......詳細はド忘れしたが、すげえ早朝に山登りしたくなった俺はずっ友の遠藤君と一緒にお小遣い片手に電車に飛び乗った事がある。辿り着いたのもこれまたスゲエ早朝で、お腹をすかせた俺達は近所のパン屋さんでご飯を食おうと思ったのだ。
確か......営業中と看板はあったと思う。それは遠藤君にも確認済みだ。ただ、此処から先がSAN値を削る展開へと発展する。店内には……『妄想の中で直面した佐枝後輩もビックリな、パジャマの前を全開にしつつ、「んあ♡」とか寝ぼけ眼でこっちを見つめるパン屋のおっちゃん』がいたのである......!
何を言っているのかさっぱり分からないと思うが、これを言っている俺もそして遠藤君も何が何だか分からず絶句した。新手のスタンド使いによる襲撃を真剣に疑うべき状況! 今でもはっきり覚えている......!
お、おっちゃんの良い具合の中年腹に自生する胸毛......! 臍から下腹までを彩る毛筋......! 間違っているだろう……! こういう時は「きゃ☆ 何見てるのよーへんたーい☆」と可愛らしいお嬢さんの御着替えとかであるべきではないのか!
ちなみに佐藤敦子同輩曰く、「んー。ぶっちゃけた話ーあたしはそっちもそっちで怖いと思うんよー。だってさあー。人前でいきなりお肌けをするネェサンっしょ。それ絶対美人局だわー」とか、夢も欠片もない話を嚙ましてくれたが......でもね佐藤同輩......!
それでもだよ!? おっちゃんがお肌けしている衝撃よりは......! 同時にお毛毛の自生具合まで見せつけられるのに比べたらさ!? 後で輩が釘バットもって出てくる方が俺は許容できると思うんだよ!
ええ、深山秋穂さんはやってやりますよ! 遠藤君と一緒に地の果てまでランナウェイしてやるつもりだったんですよ! しかし……此処で、遠藤君が、正に「魅せてくれたな伏黒恵......もとい遠藤康太」を噛ましたのです……!
「あ! すいませーん! 僕達これから山登りするんですけどー! 美味しいパンでおすすめとかありませーん?」
遠藤君......! 逃げる時のアカザ殿の様に俺は思ってしまったよ!? 頭でも湧いちゃったのか遠藤君!君が今やるべき事は、そんなジョナサンを救うべく「明日って今さ!」みたいに、面妖なおじさんにパンをお願いする事じゃあない!
何となく道でも聞きにきた感じで、サラッとおじさんをスルーし改めて駅の自販機で、ジュースだか適当に購入してその後、適当なお店を探すべき事だったんじゃあないのか!? そんな俺の驚愕を他所に、遠藤君は、人の善性を信じ切った顔で、おじさんをジッと見つめ......おじさんは......
「あーそっかー。じゃあこれやるわー。お代とか要らないねー。ふひひひへへへ」
......2つの卵パンを渡してきた。さあ......! 良い子も悪い子も決して侮ってはいけない怖い卵食中毒の可能性を前にして、俺とずっ友の遠藤君はどうしたのかといえば......!
――『お残し厳禁という謎の道徳観に基づき食してしまい、何故か俺だけが史上空前の当たりをみました☆』――
なんでや! なんで一緒に食べたのに俺だけクリーンヒットするんや!? あ、別に遠藤君に当たってほしかったわけじゃないんだけど、あの時の鼻に突き抜ける酸味......というか、口内を蹂躙するエグみ&シュワシュワと音を立てて軋む胃袋......! そして地獄など生ぬるい腹痛......!
最期のお医者さんの「全部出し切るまで......死ぬなよ♡」の一言が、今も俺の脳内を焼き続けている。ちなみに、あのパン屋さん......帰り道には何故か空地になっていたんですが。あれ、マヨイガのナイトメアモード版とかだったんですかね? 求む情報。
この壮大な地獄をなんでまた延々と語っているかといえば......そりゃあ、もう言うまでもないでしょう。ダブルピースの味は......これを超え......超えていた......!!
しかも前の卵パンの時と違って、手が勝手に動いて地獄を口にかっこむ事を止めてくれない。しかも嘔吐すら出来ない仕様......! どうやらあのライダースーツには佐枝後輩謹製の暴走モード発動時には、完食しない限り手が止まらないという謎の縛りが課せられているらしく。
しかも全て終わった後に、彼女の幻影......あ、AIの佐枝後輩だけど……マッパの俺の顎元を「つつっ」と撫でて、「うふふ......良くできましたね。イケナイ人......また未知への扉を進んでしまって♡」と言ってくれるモードがついている。
これはマズイ。何度も調子に乗ってしまえば、ありとあらゆる意味で誰もたどり着けないロンリーハートの領域に至ってしまう! 使用には最大の注意が必要だ。
そして、そんなモノローグ中の俺が今現在、何をやっているのかと言えば......光のオーロラで股間とかやべえ部分を規制された状態で―あ、アンナさんが魔術師の情けか規制部分にタオル掛けて縛ってくれたのだが、輝きがまだ止まらない―フォレスト領の魔王怪異討伐作戦中の陣地へ連れてこられていた。
途中で意識が戻っていたのだが、アンナさん、シックストーンフラッシュで発生した大量のまつぼっくりを改めて火炎燃料に使って、遺跡内の魔王怪異を一掃したらしい。その後俺を抱えて、外へ脱出した所でミリア令嬢......どんな人かは分からない……の派遣した土人形の兵隊の御す車の様な乗り物に乗ってスゴイ勢いで此処まで戻ってきたのだ。
その間、アンナさんはずっと俺の様子を見て、心配とかしたりミリアさん達への連絡とかで結構忙しかった様子。ちなみに、その間俺は悪いとは思ったが、死んだふりとかしながら、これからの事を考え込んでいた。
此処まで戻ってくる短い間に見た感じ、道の様子とかをジッと見ている限り、砂利や石炭を古い時代の物の上に撒いて、定期的にそれを整備している様子があるメインの街道とグネグネと曲がりくねった小道なんかがあったり、ヨーロッパで言う所の牧人と思われる人だったりが見受けられた。
まさか、佐藤同輩との本当は怖い中世談義で見た図説とかが、そのまんま役に立つとは思わなかったが、こりゃあ......本格的に中世気配がある。違いとしては、魔術とかの普及のおかげかトイレ事情だったり、食べ物とかで中毒の心配などはしないでも良さそうな所か。
ただ、心配な点はもう1つあった。佐枝後輩謹製のライダースーツへの信頼のおかげで、ダブルピースとの戦いは心配しないで済んだし、ゴルゴムとかをシバキ倒すまでは全く心配していないのだが......どうもアンナさんの口調から察するに、人間同士の深刻な抗争なんかも発生しているらしいのだ。
多分、ライダーという事で何にも気にしないでゴリ推しとかも出来ちゃうんだろうが......ぶっちゃけ、戦争当たり前の時代の人で、しかも戦国の頃合いの様な住人を甘く見るというのは、散々本部推しで大賑わいになった宮本武蔵編の読者としては、出来そうにない。
過酷な環境の中で暮らしている人間の身体能力とか、時折エライ変態枠が発生したりするし化かし合いに関しても、殺ったもん勝ちを常時やっている人は普通に怖い。るろうに剣心追憶編での、お師匠のお説教ではないが、色々利害が絡み合う中での人同士の殺し合いやらも……ねえ、君本当に参加するつもりかとかも思う。色々地雷じゃないかと。
こっちだって、佐枝後輩&遠藤君&愉快な同窓生でヘンテコ冒険の数だけは引けを取らないと思うが、やはり最大警戒は必須なのではなかろうか。
アンナさんの必死さだったり、なんか......本当に助けを求められている様子があるので、可能な限り善処はしたいとは思う。え、そんな今更マッパでそんな事を言われても説得力が無いって? いやまあ、それはそうなんだけど、タオル掛けられている間も股間か輝き続けていて......もう、シリアスの振りでも、あ、止めて、魔術師さん、剥がした上でどうなっているか確認しないで。
しかも数人規模で……おいいい! 繊細な男子高校生魂をみんなして抉りに来るなよぉぉ! ちくしょう、変身したらSAN値を削られ生身では羞恥心を削られ......どっちにしても地獄......あ、後半は見方によっては......?
そんな切ない気持ちを抱えつつ、俺は目を閉じていると……ふと、何処からか「ミリア様がいらっしゃいました」という声がした。おい、エライ人の前なんだ。せめて股間にタオルを......あ、どうせ光るんですから同じことですね。なんか、泣きたくなってきた......! カッコイイ台詞でも言って気を紛らわすか......!
ええと、こういう時にマッパで何かカッコいい台詞って......ああ、シュワちゃんだ! そうだよぉ!俺は佐枝後輩を狂わすほどのシックスパックの持ち主に成り得たんだぜ! だったら気を紛らわす為に、あえて小さい声でも、アレを呟いてみるべきなんじゃあないのか......!
「「成程......これはとても興味深い&君の服と靴とバイクが欲しい」」
「「…」」
声が被ったため、何となく目を開けた。目の前には淡い栗色の髪の毛をした人形の様に綺麗な10歳ほどの、女の子がいた。え、その、なんか輝く股間を覗き込まれつつ......俺は今、何を口走った……? 周囲の皆さんも息を呑んで、俺達を見つめた。
すると......ミリアと呼ばれた少女は、まるで人形の様に首をカクンと折った。そして無表情に俺にこう問うた。
「バイク......それはパンツと見なして構わない……?(小首をカクン)」
「ああ.....まあ、パンツ......死ぬほど欲しいのは、間違いない……」
「私のものに興味津々......?(小首をカクン)」
「全性別対応伸縮自在で、なおかつ君は供用を一切気にしないという衝撃の真実があるとかだったら、かなり迷うが、君との出会いの……タイミングの問題が悪かった。他意はない。信じてほしいと言わざるを得ないが......君は君の下半身事情を優先してほしい……(死人の目)」
するとミリア......この場合は、もう敬意を払いつつミリア令嬢と書くが。彼女はしばし無言でジッとこっちを見ていたかと思うと、またまた口を開いた。
「その姿でその考えはある意味、とても理解できる。しかし……大変残念なお知らせがある......(カクン)」
「周りの人が俺を見る目がえらい感じになってきたのと、アンナ様を呼んで来いという声と魔術師だかいう人が集まってくる事以上に残念な事とは......?」
「私は現在パンツを履いていない……(カクン)」
な......なんだ…と!? 時代によっては確かにそういう可能性とかを考えないではなかったけれど、ああ、でも此処で、まさか此処でそんなカミングアウトをされてしまうとは!? し、しかしパンツという言葉を知っているという事は存在自体は知っているという事か!?
ああ、なんて......なんて事だ! この時代の価値観はまさかノーパンが普通だったと……あ、でも何かそんなの言わせてしまった自分の中に、どうしようもない罪悪感が……!?嗚呼! と、とりあえず土下座......!
「……まあ、嘘なのだけれど……(ドヤァ)」
「Σ(゜Д゜;)!?」
ミリア令嬢の無表情だけど、ハッキリ分かるドヤ顔と飛んできたアンナさんの「下がって!やっぱりちょん切っておくべきだった!」という声が響く中、そして背後からこれまた顔を出した聖女さんみたいな感じの女の子を尻目に、なんかふん捕まえられながら、俺はやれやれとか思ったのだった。
ちなみに......こんなになっても、まだ股間のオーロラは消えないままでした......(遠い目)




