第13話 三人の証言
依頼人は三十代の男性で、職場で財布を盗まれたと言い、同僚三人が犯人候補として挙がっているが誰が盗ったのか分からないと言った。依頼人の名は田所純一で、昼休みに社内にいたのは宮田、上条、平野の三人だけだった。
翌日、会社を訪れて三人に順番に話を聞いた。ちひろはスマートフォンを向けながら、三人の話し方を観察した。
廊下のカメラ映像を確認すると、上条がコンビニ袋を持って戻ってくる映像と平野が給湯室から戻る映像があり、宮田は廊下に出た形跡がなかった。
「草薙さん、宮田さんが怪しいですか」ちひろが小声で言った。
「宮田のアリバイだけ証明できない。でも上条のレシートが早すぎる。昼休み開始から六分後にコンビニの領収時刻がついてる」
「急いで戻る理由があったってことですか。または、時間を短く見せたかったか」
「そうなるよ」
ちひろは少し考えてから言った。
「草薙さん、うち、上条さんに気になることがあって。さっき話を聞いたとき、財布の色を聞いてないのに茶色の財布ですよねって言ってたんですよ」
草薙がちひろを見た。目が静かになった。
「田所さんは同僚三人に財布の詳細は話してないと言ってましたよね。うち、最初のときにそう録ってますわ」
ちひろがスマートフォンを操作して田所の「色とか種類は話してません」という声を再生すると、草薙は少しの間それを聞いてから言った。
「それが決め手だよ。上条に聞きに行こうか」
「うちが見つけたんですか、決め手」
「見つけたよ」
上条に財布の色をどこで知ったか聞くと草薙が録音を再生して顔色が変わり、コンビニに行く前に引き出しを開けてしまったと話して泣いた。財布は返却されて上条は自分で謝罪した。
帰り道、草薙はちひろに言った。
「今回はちひろが決め手を見つけたよ」
「でも草薙さんも気づいてたんやないですか」
草薙が少し間を置いた。
「気づいてなかったよ。上条のレシートを見て急いでいたことは分かったけど、財布の色の話は俺には拾えてなかった」
「ほんまですか」
「ほんまだよ」
ちひろは少し黙ってから前を向いた。夕方の光が商店街を橙色に染めていた。




