ネクロマンスキメラ
復興から間も無くして再びキメラが姿を現した。
その気配を察知したアルムが駆けつけると、思わず己の目を疑った。
『前に戦ったキメラじゃないか!?』
アルムの目の前にいたキメラはかつてアルムと交戦したカメレオンキメラであった。
アルムはその姿を見つけるなり上空から背後に周り、急降下で勢いをつけて蹴り飛ばした。
カメレオンキメラは数メートル吹っ飛ばされ、一撃で物言わぬ骸と化す。
だが次の瞬間さらに目を疑う事態が起きた。
カメレオンキメラの身体がボロボロと崩れ落ち、赤茶色の土になったのである。
アルムは土を拾い上げるが特に変わった様子はなく、さっきまで感じられたキメラの気配もまるで感じない。
ただの土であった。
アルムは不思議に思いつつも土塊を残してその場を後にした。
その夜、アルムが戦いのことを報告するとカグヤは首を傾げた。
「前に戦ったキメラが生き返った?」
「間違いないよ。 で、倒したら土になったんだ」
「はぁー、それは変だなー」
それは今までにない事象であった。
もしそれが真であるとすれば死者の復活が起きたことになる。
「キメラの気配は確かにあった?」
「駆けつけた時は間違いなくあったよ。 でも、倒したら気配が消えて土になったんだ」
アルジェが当時の状況を再確認した。
キメラの気配を感じ取っていたためキメラであることは間違いないがそれにしても不可解であった。
「カグヤ、『蘇生』ができる生物っている?」
「いるわけないじゃんそんなの」
アルムの疑問にカグヤは至極真っ当に答えた。
もし蘇生が起きているのであれば人類の歴史を揺るがす大事件である。
だがカグヤはさらに首を捻った。
彼女の中でとある仮説が浮かんだのである。
「もしかしたらさ、『復活させる能力』じゃなくて『そっくりな模造品を作る能力』なんじゃないかな」
カグヤはアルムとアルジェに仮説を唱えた。
それは『コピーを作る能力を持ったキメラ』の存在を示唆するものであった。
「本体は別にいて、そのキメラは土とかを使ってコピーを作る。 みたいな?」
「本体を倒さないと戦闘が終わらないタイプの敵」
カグヤの説明でアルジェはすぐにその性質を理解した。
本体を叩かなければ永遠にコピーが量産されるため、早急に手を打たなければならなかった。
その時、アルムは再びキメラの気配を感じ取った。
「行くよアルジェ。 キメラの気配だ」
「ん」
アルムとアルジェは家を飛び出した。
カグヤはそれを見送りながらキメラの能力を考察するのであった。
『アイツは……』
アルムは夜の町を徘徊するキメラを見て攻撃を躊躇した。
そのキメラはかつてアルムを完封に近い形まで追い込んだトータスキメラであった。
打撃が通りにくく、電撃も通じない相性最悪レベルの相手である。
『アルジェ、ここはお願い。 キミの方が戦いやすいはずだから』
『わかった』
アルムはトータスキメラの相手をアルジェに任せると自身は空中を旋回して周囲を探った。
再生したキメラを操っている存在がないかを探るためである。
アルジェはトータスキメラを上から踏みつけるように急降下から体当たりを仕掛けた。
アルジェの重量の負荷を受けたトータスキメラは身体が地面にめり込むが何事もなかったかのように這い出てくる。
『なるほど。 確かに私の方が適任』
アルジェはトータスキメラの挙動を見てアルムが自分に任せた理由を理解した。
動きが遅いトータスキメラに狙いをつけ、冷気のブレスを浴びせかけた。
トータスキメラの身体は一瞬で凍りつき、四肢の末端から氷柱を伸ばして行動を停止する。
アルジェが拳を叩き込むとトータスキメラの肉体は粉々に砕け散った。
凍った肉片は土に戻り、氷と混ざって泥になる。
(やはり不可解)
アルジェはアルムが体験したものを追体験するとアルムがいる上空へと戻った。
『何か見つけられた?』
『何も見つけられなかったよ。 キメラの気配もなくなった』
アルムは今回の黒幕を発見できなかった。
キメラの気配もなくなってしまったため、これ以上は手の打ちようがない。
アルムとアルジェはその場を引き上げるのであった。




