カグヤのスターダム
エレメントキメラが引き起こした騒動から数週間が経った。
町の都市機能は概ね回復し、そこに暮らす人々はまた日常の中に戻りつつあった。
そんなとある日の昼下がり、カグヤは一人配信を行っていた。
『突発雑談配信』
そう題された配信の中でカグヤはリスナーたちとトークでやり取りをしていた。
今回アルムとアルジェは同席しておらず、カグヤ一人である。
「みなさんのおかげでチャンネル登録者数が十万人を超えましたー。 ありがとうございまーす」
カグヤは自身のチャンネル登録者数が大台になったことを感謝した。
アルムたちとエレメントキメラの戦いの様子を映し出した配信が全国的に広まり、そこからカグヤを知ったリスナーが爆発的に増加したのである。
「いやー、ここまで来ちゃうと大手企業系Vみたいだよね。 登録者数の跳ね方がさ」
カグヤは現状を茶化すように語った。
『アルムちゃんたちは今日どうしたん?』
「えー? アルムとアルジェはって? アルムは復興のボランティアに行っててアルジェはグラツーの対戦会に遊びに行ってる」
リスナーから疑問を受けたカグヤはアルムたちの不在の理由を答えた。
アルムはまだ復興が進んでいない場所へのボランティア、アルジェはゲームのオフ会と全く異なる理由で家を空けていた。
日頃の二人を知っているリスナーからすれば非常に『らしい』理由であった。
「グラツーでエゴサかけたらアルジェ見つかるんじゃない?」
カグヤはそう言いながらスマホで実際にエゴサーチをかけた。
するととあるユーザーの投稿の中にアーケード筐体に向き合ってゲームに興じるアルジェの姿があった。
「本当にあったわ」
『対戦会に参加してると思わしき他の人の投稿見てるけどアルジェちゃんめっちゃ強いらしくて草』
「アルジェはねー、対戦アクションゲーはマジで強いね。 あーしら一回も勝ったことないもん」
そんなこんなでトークを進めているとリスナーからとある話題が振られた。
『このチャンネルは他のチャンネルとコラボとかしないの?』
それを見てピンと来たカグヤはその話題に触れることにした。
「コラボねー、実は前に結構大手の配信者からコラボ打診の連絡を貰ったことがあったんだよね。 でも断っちゃった」
カグヤはかつて他の配信者からオファーを受けており、それを断っていたことを明かした。
続けてカグヤはその理由を説明する。
「断ったのはちゃんと理由があってさ。 まずこのチャンネルって名前こそカグヤチャンネルだけど今の主役って間違いなくアルムとアルジェなわけじゃん? あの子たちの能力って電気と冷気だから少し匙加減間違えたら向こうに大怪我させちゃうかもしれないし、アルムとアルジェじゃ配信の味が全然違うでしょ。 だからそこ理解してないとお互いに満足いくものにならないんじゃないかなーって」
カグヤはこれまでコラボをしてこなかった理由を語った。
アルムとアルジェはそれぞれ全く異なる配信スタイルを取っており、そもそものファン層が違う。
それに加え、人外であるが故の能力を持っている二人が無知でなにかをしでかした場合相手の命が危ういかもしれない。
そういった事情からカグヤは配信者同士のコラボを避けてきたのである。
『そもそも人外飼い慣らせる女っていう個性を扱い切れる人がいないのでは?』
『確かに』
カグヤの言い分を聞いたリスナーたちは納得の姿勢を見せた。
「飼い慣らすって……ペットじゃないんだからさ」
カグヤはリスナーのコメントをいじりつつも感慨深い表情を見せた。
「さっきのとは別にまだ理由あってさ。 あーしじゃ力不足じゃないかなって」
カグヤは一転して弱気な姿勢を見せた。
カグヤのチャンネルがここまで来たのはアルムとアルジェが現れたからこそであり、それ以前の登録者数がせいぜい十から二十人程度であったことがそれを物語っている。
「だからあーしはあーしが納得できるようになるまで他の人とコラボはしないし、アルムとアルジェ相手でもあーしが目を通して大丈夫と判断できるまではお預けかなー」
カグヤは自分自身は他の配信者と比べて力不足であるとした上で改めてコラボに対する見解を示した。
『アルムたちのマネちゃん?』
『マネージャーみたいなことやってる』
「確かに……あーしはアルムとアルジェのマネージャーなのかな」
リスナーたちのコメントにカグヤは苦笑いをするのであった。




