龍の居場所
エレメントキメラが倒された翌日の明け方。
アルムとアルジェはカグヤの待つ家へと帰ってきた。
二人は互いの肩を持ち、身体を引きずりボロボロの状態であった。
「おかえり」
玄関を開けた二人をカグヤが出迎えた。
眠気を押して待ち続けていたため、彼女も瞼が半分ほど閉じかかっている。
カグヤはよろけるアルムとアルジェを抱きかかえてリビングまで連れて行った。
「やったよカグヤ。 ボクたち世界が滅ぶのを止めたんだ」
「うんうん。 あーしもばっちり見てた」
疲労困憊で床の上に横たわるアルムにカグヤは労いの言葉をかけた。
それからすぐに視線をアルジェへと向ける。
「アルジェもありがとう。 よく頑張ったじゃん」
カグヤはアルジェもしっかりと労った。
今回の勝利はアルムが回復するまでアルジェがエレメントキメラ相手に持ち堪えられたからである。
防戦に徹した分、彼女が負ったダメージはアルムよりも大きかった。
「ありがたき言葉……」
アルジェはカグヤの膝下に頭を乗せると疲労が限界に達し、瞼を閉じて眠りについた。
マスターであるカグヤからの労いはアルジェにとって最上の報酬であった。
カグヤはそんなアルジェを優しく受け入れてそっと頭を撫でた。
「アルム、ちょっと手伝って」
カグヤはアルムに手伝いを呼びかけ、アルジェをソファの上へと運んだ。
二人とも疲労が押しており、二階の寝室まで運ぶ気力が残っていなかったのである。
カグヤはアルジェをソファの上に寝かせると自身の膝をアルジェの枕代わりにした。
「ボクも今日はここで寝る」
アルムはソファの隙間を縫うようにカグヤの隣に座るとそのままカグヤに寄りかかった。
角と尻尾を出し、尻尾を伸ばしてその先端をコンセントと接続すると充電を開始した。
「しょうがないなぁ……」
カグヤはアルムの行動を許容した。
アルムとアルジェの拠り所となれるのが自分だけであり、キメラと戦う力のない彼女にできることはそんな二人の可愛げのある我儘を受け入れることだけであった。
「二人とも、本当にありがとう」
エレメントキメラによる緊張の糸が切れたカグヤは呟くようにアルムとアルジェに感謝を伝えると次第にソファの上で気を失うように眠りについた。
日が昇ってもカグヤたちは眠り続け、目を覚ましたのはその日の日没の直前になってからであった。
カグヤは目を覚まして早々にスマホの画面を見て驚いた。
そこには家族やバイト先の人たちからの安否確認のメッセージが無数に届いていたのである。
とりわけ妹のハルヒからのメッセージの量は凄まじく、朝からつい数分前まで十数分間隔でメッセージが送信されていた。
カグヤはハルヒに通話をかけた。
『もしもしお姉ちゃん!?』
「もしもし? ごめんね心配かけちゃったみたいでさ。 あーしなら五体満足で大丈夫だよ」
『よ゛か゛った゛ぁ゛!お゛姉ち゛ゃん゛が生き゛て゛る゛!』
カグヤの声を聞いたハルヒは感極まって泣きだした。
彼女は今自宅にいるらしく、カグヤの無事に歓喜する両親の声がハルヒの背後からうっすらと聞こえてくる。
「大袈裟すぎるってばー。 うん、うん。 アルムとアルジェも無事だよ。 今はまだ疲れて眠ってるけど」
カグヤはハルヒたちに現状を報告した。
住んでいる町が甚大な被害を受けたため復旧にある程度の時間を要すること、エレメントキメラの配下たちに荒らされた自宅の修繕が必要なことを伝え、それが落ち着いたらハルヒを家に招くことを約束すると通話を切った。
「あー、今回は特に大変だったなぁ」
カグヤは今回の一連の事件の顛末をぼやくと安否確認のメッセージに既読をつけ、その一つ一つに返信をするのであった。




