信じる心
人々からの応援で奮起したアルムの攻撃を受けたエレメントキメラはアスファルトを抉るように地面に叩きつけられた。
人間への憎悪が頂点を超え、煩わしい人間を直接排除しようと全身から爆炎を噴き出すがその炎は人々の前には届かない。
行動を察知したアルジェが氷の防壁を作り出して爆炎の進路を阻んだためである。
役目を終えた氷の壁は蒸発して足元の水溜りへと変化した。
アルジェの活躍に人々は歓喜し、より大きな声援を送った。
『逃しはしない』
アルジェはエレメントキメラの隙をついて背後から組みついた。
重量に勝るアルジェに組みつかれたことでエレメントキメラは得意の機動戦を封じられる形となった。
エレメントキメラの抵抗で繰り出される放電もアルジェには一切通用しない。
アルジェは全身から冷気を放出してエレメントキメラの体力を奪いにかかった。
炎と雷に相対する氷の力を至近距離からぶつけられたことでエレメントキメラはたちまち体内のエネルギーが不安定になってゆく。
『今のうちにトドメを』
アルジェはアルムに決めにかかることを促した。
エレメントキメラを足止めしている今が彼を倒す絶好のチャンスであった。
アルムは空中に滞空すると咆哮と共に放電した。
空から雷が無数に降り注ぎ、彼女の足元から青白い電気が駆け巡る。
アルジェが放出する冷気によってエネルギーを強引に傾けられたエレメントキメラは青色に変色すると同時にその余波でアルジェを弾き飛ばしたが、それと入れ替わるようにアルムの放った電気が足元へと到達した。
その電気は瞬く間にエレメントキメラの身体から自由を奪い、その場に棒立ちさせる。
アルムは全身に青白い電光を纏うと雷鳴にも似た音と同時にエレメントキメラへと突撃を繰り出した。
アルムの身体は音をも置き去りにしてエレメントキメラへと迫り、その胴体を貫いて背後へと通り抜けた。
足元に展開されていた青白い電気が消え、アルムの姿が現れる。
『バカな……こんなことが……こんなことがあってなるものか……』
アルムに胴体を貫通されて致命傷を負ったエレメントキメラは倒れることなく、なおも呪詛を吐き続けた。
生まれてからずっと憎み続けた人間を愛する同族によって復讐を悉く阻まれ、求めたものを何一つとして得られなかった悔しさに双眸から涙が零れる。
アルムはじっとそれを睨み、空から回り込んでエレメントキメラと向き合った。
神妙な空気が流れ、声援を送っていた人々も静まり返って静寂に包まれる。
『強かったでしょ。 キミが憎んだ人間は』
『私は人間に負けたのではない。 完成されたキメラである金龍と銀龍の力に負けたのだ』
エレメントキメラは己の敗因はあくまでアルムとアルジェの力によるものであるとし、人間の干渉の可能性を否定した。
それを聞いたアルムは首を横に振った。
『それは違うよ』
アルムはエレメントキメラの言い分を真っ向から否定し返した。
『確かにキミは強かったよ。 ボク一人じゃ勝てなかったし、アルジェと二体がかりでも勝てなかったかも。 でもね、ボクは大事なもののために強くなれるけどキミにはそれができなかった。 それだけのことさ』
アルムの言葉にエレメントキメラは言葉を失った。
『愚かだな、貴様……』
『そうかもね。 でもボクはそんな自分のことが気に入ってるんだ』
底抜けのお人好しを侮蔑するエレメントキメラに対してアルムは冗談のように返した。
それと同時に電線が復旧し、町の中に明かりが戻り始めた。
人間が作る光に包まれたエレメントキメラは自らの敗北を受け入れたように事切れ、膝から崩れ落ちてうつ伏せに倒れた。
町に破壊と混乱を齎した元凶が倒されたことで観衆から大歓声が巻き起こった。
アルムとアルジェは観衆の声を聞き届けると宵闇に溶け込むように空へと姿を消していった。
空には雷鳴が轟き、地上には冷たい風が吹いた。
カグヤは配信を切り、アルムたちの帰りを待つべく彼女のいるべき場所へと戻るのであった。




