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轟き照らすは金の龍  作者: 火蛍
リバース・アルケミスト
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声を届ける

 アルムはアルジェに戦線を任せて離脱し、カグヤの元へと戻ってきた。

 そこにはアルジェが残した冷気が漂う涼しい部屋の中で一人小さくなっているカグヤの姿があった。


 「カグヤ?」


 「アルム……? あのキメラは?」

 

 「今はアルジェが繋いでくれてるよ。 少し休んだらまた戻らなくちゃ」


 アルムはふらつきながら少し歩くとカグヤのそばに腰を下ろした。

 肉体的な疲労が溜まっていることはカグヤにも一目で理解できた。


 「勝てそう?」


 「わかんない。 ボク一人じゃ無理かも」


 アルムはキメラとの戦闘に関して珍しく弱気な反応を見せた。

 エレメントキメラの力は強大であり、力を解放したアルムにすら肉薄するほどである。

 

 「そっかぁ……じゃあ力が出るようにしたげよっか」


 「カグヤにそんなことができるの?」


 「本当に強くすることはできないけど、気持ちを上げるぐらいならしてあげられる」


 カグヤはそう言うとスマホで何かの設定を始めた。

 十数秒ほどそれをした後、アルムの方を見据える。


 「アルム、あーしを戦場に連れてって。 戦いの様子を配信する」


 「何言ってるのさ!? そんなことしたらカグヤの命が危ない!」


 アルムは思わずカグヤの正気を疑った。

 カグヤはこれまでにも何度か危険を顧みない行動を起こしたことはあったが今回は明らかに度を越している。

 死と紙一重であった。


 「アルムたちが勝ってくれるから大丈夫でしょ。 さぁ、あーしを連れてって」


 カグヤは強気に言い放つ。

 彼女は無条件にアルムとアルジェの力を信じており、アルムもその期待を無碍にはできなかった。


 「わかったよ。 でも前には出ちゃダメだからね」


 アルムはカグヤの覚悟に折れると再び立ち上がり、彼女を戦場へと駆り出した。


 「行っといで。 あーしはアルムを信じてるから」


 カグヤはアルムを送り出すと配信を開始した。

 スマホをモバイルバッテリーと接続し、キメラたちの戦いの様子を映し出す。


 『みんなの力を貸して』


 そう題された配信には瞬く間に多くのリスナーたちがやって来た。

 リスナーたちは配信に映される熾烈な戦いの様子に息を呑んだ。

 

 激しい衝突音と打突の勢いでオブジェクトに激突する金龍、銀龍、エレメントキメラ。

 空中に放出されて明滅するエネルギーの波。

 そのどれもがあまりに現実からかけ離れたものであった。


 「今、金龍と銀龍は戦ってる。 あーしらを守るためにね。 金龍と銀龍にみんなの応援を届けてほしいな」


 カグヤはリスナーたちに語りかけた。

 

 「応援のやり方? そうだな……窓の外からライトを照らして。 懐中電灯でも、スマホでも、車のライトでも、明かりがつくものならなんでもいいから」


 カグヤは思いつきの応援の形をリスナーたちに示した。

 リスナーが近くにいたのか、停電で闇に閉ざされていた町の中からポツリ、ポツリと光が灯りだす。

 その光景は配信にもバッチリと映し出されていた。


 カグヤのリスナーやそれに触発された人々によって真っ暗だった町に明かりが灯った。

 

 「金龍ー!頑張れー!」


 「負けるなー!」


 明かりの中から声援が発せられた。

 一つ、また一つとその声は次第に広がっていき、その声はついにアルムたちに届くまでに大きくなっていった。


 『うるさい連中だ!』


 アルムとアルジェに声援を送る人々にエレメントキメラは苛立ちを隠せなかった。

 体色を再び青から赤に切り替える構えに入り、その余波で人間たちを消し飛ばそうとするがアルムとアルジェがそれを許さない。

 すかさず電撃と冷気を同時に浴びせかけ、不安定なエレメントキメラの属性の力を狂わせる。

 莫大なエネルギーを強引に喰らわされたエレメントキメラはエネルギーを暴発させて黒煙を噴き出した。


 『どいつもこいつも、なぜ私の邪魔をする!』


 『キミが人間にとって危険なキメラだから』


 『貴方の思想が気に食わないから』


 度重なるイレギュラーにとうとう発狂を起こしたエレメントキメラは呪詛を吐きながら暴れ回る。

 暴発したエネルギーから雷のエネルギーを吸収し、声援から力を得たアルムは再度強化形態へと移行して決戦に臨む。


 『ありえない。 なぜこれほどの力を』


 『ボクは人間を信じてる。 その人間の声がボクに力を届けてくれる!』


 アルムは己の心情をぶつけながらエレメントキメラに殴りかかるのであった。

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