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轟き照らすは金の龍  作者: 火蛍
リバース・アルケミスト
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復讐のエレメント

 その夜、エレメントキメラは廃墟の中でホークキメラが戻らないことから彼がアルムたちの手によって倒されてしまったことを悟った。


 「なぜだ……私の錬金術が生み出したホークキメラは金龍にも劣らぬはずだというに……」


 エレメントキメラはエレメントキメラの敗北を信じられなかった。

 自らの手によって生み出したホークキメラはアルムと同格の力と知性を有しているはずであり、それがアルムたちとの戦いで後れを取ることなどありえないのである。


 「まさか……」


 エレメントキメラの脳内にとある可能性が過った。

 それは人間の存在であった。

 とりわけ、一度はコンタクトを図ったカグヤの顔が脳裏に浮かぶ。


 (私の力はあの人間一人如きに覆されたとでもいうのか!?)


 日本において勢力を築き上げたはずであった参加の人間たちは皆カグヤの言葉一つで後ろ指をさされ、社会の中に沈められた。

 今回カグヤを直接襲撃に向かったホークキメラもカグヤの傍についているアルムたちによって目的を果たすことなく返り討ちに遭う始末である。

 エレメントキメラは自らをあざ笑うカグヤの幻影を見て焦燥に陥った。


 「いや、そんなはずはない!」


 エレメントキメラは気を取り直し、その言葉と共に可能性を自ら否定した。

 人智を超越した力を持つキメラたる自分が人間に劣ることは彼のプライドが断じて認めなかったのである。

 エレメントキメラの中で人類への憎悪が募る。


 廃墟の中、エレメントキメラの周囲に赤と青、二色の光が渦を巻くように煌いた。

 幻想的な光景とは裏腹にエレメントキメラは悶えるように膝をついて息を荒げる。

 それは彼が持つ力に起因するものであった。


 「なぜだ……?私は万物を統べる究極のキメラのはず……」


 呼吸が落ち着いたエレメントキメラは自分に言い聞かせるように独り言を零した。

 その言葉通り彼はその体内に炎・雷・氷など多彩な属性を内包しており、そのどれもがすさまじい出力を秘めている。

 だがその強大な力を操る技術は彼のマスターであるアルギアには手に余る代物であり、結果として力の持ち主となったエレメントキメラ自身ですら制御が不安定なものとなってしまったのである。


 エレメントキメラは焦った。

 これではキメラたる自分の力が『人間によって御されるもの』になってしまう。

 それは彼にとって耐えがたき屈辱であり、エゴによって自分を生み出した挙句それを見捨ててのうのうと繁栄する人類に対してなんとしても一矢報いたいのである。


 覚悟を決めたエレメントキメラは本来の姿へと戻ると単身夜の町へと繰り出した。

 キメラである自分が自ら人間の文明を破壊し、その力を知らしめたうえで人類を滅ぼすつもりであった。


 エレメントキメラは高層ビルの屋上に身を移すと自身の体内の雷の力を一気に放出した。

 高出力のエネルギーによって周囲一帯の電線がショートを起こし、大規模な停電が巻き起こる。


 「うわっ!?なんだなんだ!?」


 停電を起こした地域にはカグヤの家もあった。

 いきなりの停電にはさしものカグヤも驚かずにはいられない。


 「アイツだ」


 アルムは停電がエレメントキメラによるものであることを察知するとすぐに家を飛び出した。

 変身の瞬間は夜の闇に紛れて人々の目には映らなかった。


 「私も行く。カグヤはここから動かないで」


 アルジェはカグヤの身を案じて待機を提案した。

 冷気を少量放出し、それを空調代わりにするとアルムの後を追って外へと飛び出していった。


 アルムはあっという間にエレメントキメラの元へとたどり着いた。

 両者は建物を挟んで正面から対峙する。


 『今度は逃がさない』

 『上等。ここで終わらせてくれるわ』


 アルムとエレメントキメラは互いに啖呵を切りあった。

 アルムとしてはこの事件の首謀者であるエレメントキメラはなんとしても倒すべき存在であり、エレメントキメラとしても自分の計画の最大の障壁となるアルムを活かしておく理由はない。


 『ねえ、戦う前に一つ教えてよ』

 『はぁ?』

 『キミはどうして人間が憎いの?』


 アルムは戦闘の前にエレメントキメラに問いかけた。

 彼女の無神経なまでの質問はエレメントキメラの神経をひどく逆撫でする。


 『黙れ!』


 エレメントキメラは返答することもなくアルムへと攻撃を仕掛けた。

 莫大な雷エネルギーを放出し、周囲一帯に紫電を走らせる。

 しかしアルムはそれを避けようともせず、逆にそのエネルギーを吸い込んで自分の力へと変えてじっとエレメントキメラを見据える。


 『だってわからないんだ。ボクたちは人間の手で作られたキメラなのに、どうして人間を憎むことがあるの?』


 『貴様にはわかるものか!自分たちの都合で生み出され、自分たちの都合で捨てられたものの思いが!』


 エレメントキメラは呪詛を吐き出しながらアルムへと殴りかかった。

 人類のエゴによって生み出されながらもその役目を果たすことなくそのまま捨てられた挙句に忘れ去られた自分と人類のエゴによって生み出されて見事にそのエゴに応え、語り継がれる伝説となったアルムとでその存在は対極といってもよいものであった。 


 アルムは吸収したエネルギーを利用し、強化形態へと移行してエレメントキメラを迎え撃った。

 その力もスピードも互角であり、落雷の如く激しい放電を伴いながら二体のキメラは殴り合う。

 両者は打撃を受けては身体が吹き飛ばされ、建物に激突してはその壁面を破砕する。

 

 その夜、町はキメラの戦場となったのであった。

 

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