ホークキメラ強襲
とある日の昼下がり、事件は起きた。
ホークキメラが直接カグヤの家に乗り込んできたのである。
上空からカグヤの部屋の位置を観測し、窓に背を向けたタイミングを狙って突撃する。
しかし飛び込んだ時すでにカグヤは部屋におらず、そこにいたのはアルジェであった。
彼女はカグヤの所持するゲームソフトを漁りにカグヤと入れ替わる形で部屋に入ってきていたのである。
目測を誤ったホークキメラはそのままアルジェと対面することとなった。
連日に渡って家に攻撃を仕掛けられたことに加え、今度はキメラにいきなり部屋を荒らされたことに対してアルジェは静かに怒りの炎を燃やす。
冷たい眼光でホークキメラを睨みつけた。
カグヤが慌てて引き返すとそこにはキメラとアルジェが睨み合う場面が展開されていた。
キメラ関係で二度も自宅を荒らされたカグヤのストレスは頂点に達しようとしていた。
「アルジェ。 やれ」
カグヤはアルジェに対してゴーサインを出した。
アルジェは無言で頷くとホークキメラはと詰め寄る。
「この前のとは違う。 金龍ではないな」
ホークキメラの問いに対してアルジェは返事をすることなくホークキメラに先制攻撃を仕掛けた。
銀龍の姿に変身し、ホークキメラに掴みかかるとそのまま力任せに外へと押し返す。
閉所で機動力を活かせなかったホークキメラはアルジェに力負けし、部屋から引き摺り出されてアスファルトの上に叩きつけられた。
『お前を生かして帰すわけにはいかない。 ここで始末する』
アルジェは殺意に満ち溢れた宣告を放った。
彼女の使命はカグヤを守ることであるため、カグヤを狙おうとしたホークキメラは問答無用で排除の対象であった。
アルジェはホークキメラに対してマウントを維持すると冷気放出して自分の周囲を凍結させた。
気温が一気に低下し、ホークキメラの体温を奪う。
ホークキメラは鉤爪を模した剣を手に取るとそれをアルジェの肩や首に叩きつけた。
剣はアルジェの全身を覆う強固な銀色の鱗に阻まれて歯が立たないものの、身体から火花が飛び散る。
アルジェはそれ対して怯まなかった。
ここで逃せばホークキメラが即座に空に逃げることを理解していたためである。
アルジェといえども機動戦に持ち込まれると手が出せず、アルムは人質を取られたら戦えないため、なんとしても周囲に他人がいない地上で仕留めておきたかった。
ホークキメラはアルジェの身体に剣を何度も叩きつけた。
アルジェの銀色の鱗に傷がつき、その一部が剥げ落ちるがそれでもアルジェはホークキメラを逃さない。
『無駄な抵抗を』
アルジェは周囲の空気を凍結させると氷の柱を無数に形成し、自身の周囲を包囲するように上まで覆った檻を作り出した。
檻の隙間は非常に狭く、ホークキメラでも通り抜けることはできない。
「お前は何者だ……」
『答える必要はない』
アルジェは冷徹に吐き捨てるとさらに冷気を放出した。
体温をさらに奪われ、ホークキメラの動きがあからさまに鈍りだす。
アルジェはそれを見逃すことなく接近するとホークキメラの翼を氷結させ、それを引きちぎって投げ捨てた。
機動力の全てを担う翼を失ったことにより、戦いの主導権は完全にアルジェが握ることとなった。
翼を失い、氷の檻に封じられた今ホークキメラの逃げ場はどこにもない。
逃げられないことを悟ったホークキメラは死に物狂いでアルジェに挑みかかった。
だが体温を奪われ動きが鈍っているため、アルジェの予測演算によって動きが正確に予想される。
アルジェは有効だとなりうる攻撃をすべて回避し、ダメージにならない攻撃を鱗で受け止めると即座に反撃を仕掛けた。
『終わらせる』
トドメを刺す頃合いと判断したアルジェは氷の槍を生成するとそれを射出した。
槍はホークキメラの背中から胸部を貫通して致命的なダメージを与えると同時に全身が凍結し、氷細工のように固まって動かなくなった。
アルジェは動かなくなったホークキメラの前に立つと渾身のパンチを打ち込み、凍らせたホークキメラを粉々に吹き飛ばした。
翼を力強くはためかせると破片を吹き飛ばし、風に乗ってどこか遠くへと消え去った。
アルジェは自ら生成した氷の檻を体当たりで突き破ると空へと飛び去った。
氷の檻は崩壊し、戦場だった場所には異常に冷えた空気のみが残ることとなった。
「ただいま」
「おかえりアルジェ。 また窓割られたよ」
「ガラス代は降りる?」
「キメラ相手に請求できるわけないじゃん。 今回はあーし持ちだよ」
カグヤは割られたガラス代が自分持ちになることを嘆いた。
前回は実行犯が人間だったため弁償させることができたが今回は相手がキメラであったためそういうわけにはいかなかった。
「カグヤ気の毒」
「ほんとにね」
アルジェはカグヤの境遇を労り、カグヤはそれに対して自嘲気味に茶化すのであった。




