カグヤを支える声
エレメントキメラ率いるカルト集団に目を付けられ、軟禁状態に陥って数日。
集団からの包囲を受けたカグヤは自宅から出ることを許されない状況に鬱屈とした感情を募らせていた。
アルムとアルジェが交互に外から物資を供給してくれるため生活には困窮しないものの、それでも窮屈であることには変わらない。
「あー、あの信者どもウザいなぁ……まとめていなくなればいいのに」
「やってこようか」
「やめてね」
カグヤの独り言にアルジェが反応するとカグヤは制止をかけた。
アルムと違って人間を守るように仕込まれていないアルジェであればカグヤの命令一つで本当に実行しかねない。
アルジェも今のカグヤが置かれた状況を不憫に感じていた。
カグヤはこの状況が続く可能性にうんざりしていた。
どうにかして現状を打開し、いつも通りの日常に戻りたくてならなかった。
その時、カグヤは妙案を思いついた。
『今夜配信やります。 今回はあーしが出るよ』
カグヤはSNSで配信を告知した。
アルムとアルジェを呼び寄せ、配信の内容を周知する。
「そんなことして大丈夫かなぁ?」
「大丈夫。 下手に動けばあっちのイメージ悪くなるから」
カグヤは配信を通じて自分が置かれている現状をリスナーたちに知らせ、その元凶となっているカルト集団へのイメージダウンを仕掛けようとしていた。
それに加え、配信中に妨害を受けるリスクこそあれどそれはそれでイメージダウンを裏付ける材料となるため都合がいい。
一定以上のリスナーを抱える配信者になった今でこそできる捨て身の作戦であった。
そして来る十九時、カグヤは配信を開始した。
彼女の両脇にはアルムとアルジェも付いている。
「やーやーみんな。 こうしてあーしがメインで配信やるのはなんか久しぶりだねー」
カグヤはリスナーたちに挨拶をした。
チャンネルのメインがアルムとアルジェになっていた今、カグヤがメインでの配信は珍しくなっていた。
それを理解しているリスナーが数千人規模で配信に訪れる。
『リアルが落ち着いた感じ?』
「そうだねー。 まあなんていうか、無理やり落ち着かされてるって感じだけどさ」
「カグヤ、そろそろ本題入ったほうがいいよ」
「早めに言っておいたほうがいい」
「ごめんごめん。 久しぶりにリスナーとやりとりするのが楽しくてさ」
アルムとアルジェに唆されたカグヤは面持ちを切り替えた。
「あのね。 今日は今あーしがどんな状態になってるかっていうのを伝えたくて」
カグヤは神妙な面構えで現況報告を切り出した。
普段ゆるい雰囲気のカグヤが真面目な表情を見せたことでこれまで和気藹々としていたリスナーたちの空気感が変わる。
「最近なんかニュースとかにもなってる変なカルト集団いるじゃん? あーしアレに目をつけられちゃってさ。 家から出られなくなっちゃったんだよね」
カグヤは自分が置かれた状況を臆することなく公開した。
『カグヤ何したの?』
『ケンカ売るようなことしたの?』
「知らないって。 この前いきなりあーしの職場に押しかけてきてさ。 マジ怖かったんだから」
カグヤは自分が無辜の人間であるとした上でカルト集団から受けた仕打ちをリスナーに打ち明けた。
「でね。 アルムたちにもあの集団のこと調べてきてもらったんだよね。 アルジェ、みんなに教えてあげてよ」
「わかった。 例の集団の元締めはエレメントキメラという怪物。 人間を滅ぼすことを目的としている」
アルジェからの発表にリスナーは騒然とした。
あまりにも荒唐無稽な内容ではあるものの、アルムとアルジェが人外であるという事実が逆に説得力を与える。
その時であった。
カグヤの自宅の窓ガラスが割れる音が聞こえた。
配信を監視していた何者かが石を投げ込んだのである。
「ちょっと見てくる」
だがカグヤたちは怯まなかった。
アルジェが様子見のために席を外すとカグヤとアルムがトークを再開する。
「ね? こういうこと」
「ボクたちは断固として戦うよ。 だからみんなも応援してほしいんだ」
アルムが呼びかけるとリスナーたちから次々と応援のコメントが寄せられた。
配信の様子はSNSのトレンドに入り、集団の悪評が瞬く間に伝播する。
三十分程度の配信を終え、カグヤたちはSNSをチェックした。
案の定リスナーたちによるカルト集団の悪行や悪評て埋め尽くされていた。
カグヤは初めて自分が持つ『人を動かす力』を明確に武器として使ったのである。
「これがあーしなりの戦い方よ」
カグヤは胸を高鳴らせながら独り言を溢すのであった。




