アルムの帰還
アルジェがカグヤを連れて家に戻ると自転車を停め、カグヤを家の中に帰らせた。
玄関の鍵を閉め、家中のあらゆる窓を施錠するとリビングでカグヤと二人籠る形となった。
カグヤはアルムに通話を駆けようと試みた。
しかしアルムはそれに応じない。
それもそのはず、彼女は今日本に帰還すべく空を移動している最中であるため対応することができなかった。
「カグヤ。シロガネ館のオーナーの連絡先を教えて」
「いいけど。 知り合い?」
「いいから。 少しここを離れる」
アルジェは強引にカグヤからレンの連絡先を獲得するとレンに電話をかけた。
直接赴かなくてもよくなったことでカグヤの護衛をしながらレンと情報のやり取りをすることが可能になったのはこの上ない利点であった。
「もしもし」
『アルジェさんですか。 まさかスマホを持っているとは』
「そんなことは今はいい。 あれから何かわかったことはある?」
アルジェはスマホを通じてレンと情報を交換した。
『エレメントキメラとか言いましたか。 彼が立ちあげたカルトの教義は”神たる私を信じなさい”だそうです』
レンはネット上の書き込みと信者と直接行ったコンタクトによって得た情報をアルジェに提供した。
アルジェは眉をひそめた。
「エレメントキメラは自らが神になって何をしようとしている?」
『確証はありませんが、おそらくは”人類への復讐”かと』
「復讐……」
レンからの情報を聞いたアルジェはエレメントキメラの思惑を理解した。
彼はエゴによって自らを生み出した人類への復讐を企てていたのである。
現状真偽は定かではないがアルムが持ち寄るであろう情報で答え合わせをするのみである。
『そちらで得た情報は?』
「アルムがもうすぐこちらに戻る。 それまで待ってほしい」
アルジェはそう言うと通話を切ってカグヤの元へと戻ってきた。
「なに話してたの?」
「カグヤは知らなくていい」
アルジェはレンとのやり取りの内容を伏せた。
カグヤの元に映る前からレンと内通していることはカグヤには内緒にしなければならない秘密である。
その時、空に雷鳴が轟いた。
アルムが戻ってきたことを確信したカグヤは窓から外の様子を見るがどうも様子がおかしい。
アルジェが外の様子を見るとアルムとキメラとの空中戦が発生していることを確認できた。
アルムが戦闘を繰り広げている相手は鋭角的なフォルムに一対の翼と鋭い鉤爪を携えた鳥型のキメラであった。
『お前の目的はなんだ?』
「監視と反乱因子の排除」
アルムが鳥型のキメラ=ホークキメラに尋ねるとホークキメラは簡潔に答えた。
すると戦闘を中止し、アルムから逃げるように人混みの中に消えていった。
(アイツ……ボクが人間を攻撃できないことを知っているな)
戦闘力では互角かそれ以上のアルムといえども人間の中に紛れ込まれては手の出しようがない。
アルムは追撃を諦め、人間の姿になるとカグヤの家に帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえりー。どこ行ってたんだよー」
リビングに入って来たアルムをカグヤが出迎えた。
「何か分かったことは?」
「この時代の錬金術はやっぱりアルギアが遺したものだったみたい。 それと……」
「それと?」
「アルギアはあの時代に独自にキメラを作っていたんだ。 それがエレメントキメラで間違いない」
アルムは自身が得た情報の数々をアルジェに共有した。
その情報からアルジェは一つの仮説を打ち立てる。
「アルム、あのキメラの目的が分かった」
「それってどんな?」
「人類への復讐。ないしそれに対抗できる私たちの排除」
エレメントキメラの目的を知ったアルムはどこか腑に落ちたような反応を見せた。
エレメントキメラの生い立ちを知った今、彼が人類に対して敵愾心を抱くのは当然のことだと思えた。
「カグヤ。 敵は貴方が私のマスターであることを知っている。 しばらくは迂闊に外に出ない方がいい」
「わかった。 しばらくは通販暮らしかぁ……」
アルジェから忠告を受けたカグヤは肩を落とした。
元々引きこもり生活には耐性があるため大した痛手ではなかったがそれでもそれを強要されるのはなかなか堪えるものがあった。
「それにしてもさっきキメラ、これまでのとはなんか違ったなぁ……」
アルムはホークキメラとの戦闘への違和感を思い返したのであった。




