錬金術生誕の地
カグヤの家を飛び出して数時間後、アルムは異国の地を歩いていた。
そこはかつて錬金術が生まれ、栄華を極めた地であった。
しかしそれも千年以上昔のこと。
その地は寂れた廃墟の密集地となっており、かつての面影はどこにもない。
そこに残されているかもしれない錬金術の残滓を探し求めてアルムは廃墟の中を歩いた。
(ボクの記憶が正しければ……)
アルムは記憶を頼りに廃墟の中を探索した。
千年前のここに何があったのかは記憶に残っており、それを辿ってとある場所で足を止めた。
その時、アルムのスマホに一件の通知が入った。
カグヤからのメッセージが届いたのである。
『今どこにいる感じ?』
カグヤは行き先を伝えず飛び出していったアルムの身を案じているようであった。
そのメッセージを呼んだアルムはその場で写真を取るとそれをそのままカグヤへと送信した。
『どこここ。 日本じゃないよね』
『そうだよ。 ボクが生まれた場所』
アルムは現在地を簡潔にカグヤに伝えるとスマホの通知を切ってポケットにしまった。
廃墟に侵入し、錬金術の痕跡を探す。
(流石に見つからないかなぁ。 千年前とは建物の形も違うし)
アルムは廃墟の中を物色するがそれらしきものはさっぱり見つからなかった。
そもそも廃墟自体が近代から現代にかけて作られた建造物であり、アルムがいた時代のそれとはまるで別物である。
だがアルムは根気よく探索を続けた。
建物から建物へと移り、探索を続けること約一時間。
アルムは誰かの足音が近づいてくるのを聞きつけた。
建物の陰に身を移し、足音の正体を観察していると次第に話し声が聞こえだし、その内容が聞き取れるようになってきた。
「エレメントキメラ様の計画は順調に進んでいる。近い未来、世界はアルギア様の描くものになるであろう」
廃墟にやってきた集団はエレメントキメラの配下であった。
日本以外にも思想を共有する配下がいたことにショックを受けつつもアルムは聞き耳を立てる。
(アルギアの思い描く世界……?)
アルムは記憶の中のアルギアの人物像を思い出した。
彼はオルフェウスと同じ錬金術師でありながら錬金術に対して全く異なる思想を持っていた。
それを思い出した時、アルムの脳裏にエレメントキメラの言葉が過った。
『万物を統べる神』
エレメントキメラが自称したそれの意味がわかった。
アルギアは錬金術を『人間が神になり代わるだめの力』と考えていた。
エレメントキメラは自らがそれを体現する存在になろうとしていたのである。
(やっぱりここには錬金術にまつわる何かが残っていたんだ。 あの集団を追っていけば……)
アルムは集団を尾行することにした。
そこにエレメントキメラに関する何かがあると読んだのである。
集団を尾行していくと、一行はとある廃墟の中へと入っていった。
そこはまだアルムが探索していない場所であった。
(確かあの場所は……)
アルムは過去の記憶を遡った。
記憶が正しければそこはかつてアルギアが工房を構えていた場所である。
「こんなところで何をしている」
アルムは廃墟の入り口の前で門番をしていた男に声をかけられた。
「えーっと、その、内部見学みたいな?」
アルムはその場の思いつきで嘘をついた。
門番の男は首を傾げる。
「関係者の許可は?」
「ないよ!」
「では通せぬ」
門番はアルムの侵入を拒んだ。
アルムは一度は引き返したがやはりその奥に何があるのかを確かめたくてならなかった。
(本当はこんなことしたくなかったけど……)
再度折り返したアルムは入り口に向かって突撃を仕掛けた。
門番の男に電気ショックを浴びせ、有無を言わさず速攻で気絶させると男を入り口の隅に運び、建物の中へと足を踏み入れた。
「みんなごめん!できるだけ痛くしないようにするから!」
アルムは放電し、建物内部にいた人間たちを感電させて麻痺ないし失神させた。
できれば人間相手に力を使いたくはなかったが話が通じる相手ではないためやむを得なかったのである。
単騎で建物を制圧したアルムはエレメントキメラないしその創造主であるアルギアの手掛かりを追って廃墟の奥へと進んでいくのであった。




