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轟き照らすは金の龍  作者: 火蛍
銀龍
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変化の自覚

 「ただいまー!」

 

 日没前になってアパートに戻ってきたアルムはハチミツの入った瓶を回収するとそのままUターンして外へ飛び出していった。

 その姿を確認するまでもなく声だけを残して消えてしまったアルムにカグヤは首を傾げ、そのさらに数分後にはまた何事もなかったように帰ってきた。


 「……ん?」


 カグヤはアルムの姿を見て違和感を覚えた。

 昼間にはなかったはずの角が二本増えており、また尻尾の先についている棘がより鋭利になっていたからである。


 「どうかした?」

 「ねえアルム、なんか角増えた?」

 「えー、まっさかー」


 カグヤに尋ねられたアルムは逆に首を傾げた。

 彼女は自身の身体に起きた外見的変化を自覚していなかったのである。

 

 「ちょっと鏡見てみ」


 カグヤはアルムを洗面所へと連れて行くと彼女を鏡の前に立たせた。

 

 「えー!なにこれー!」

 

 アルムは自身の変化を自覚して逆に驚いていた。

 彼女自身の筋力が向上していることもあり、角が増えて重量が増していることにも気づいていなかったのである。

 

 「なんで急に進化したん」

 「ボクもわかんない。でもなんか前よりも強そうでカッコいい!」


 アルムは自身の変化を前向きに捉えていた。

 その矢先に振り回した尻尾の先が洗面所の壁を擦り、その刃が壁面を紙切れのように切り裂いて跡を残す。


 「あー!何してくれてんの!?退去するとき弁償しないといけないじゃん!?」

 「ゴメン!そんなつもりはなかったんだよー!」


 カグヤとアルムは洗面所で騒ぎ立てる。

 そのやり取りに二人は出会ったばかりの頃を思い出す。

 

 「よし、お披露目配信だ」


 カグヤは機転を利かせ、アルムの新たな姿を動画で披露することにした。

 緊急で告知を回し、二人で内容の打ち合わせをする。

 少し遅れてアルジェが合流し、三人での動画企画となった。


 そして午後十九時、カグヤたちは一本の動画を投稿した。


 『はいどーもー。今回は緊急企画だからあんまり長尺はやらないよー』

 『今回の内容……アルムが新たな姿になったからみんなにお披露目』


 カグヤとアルジェが司会を進行し、カメラを回すとアルムの姿が映った。

 角が四本に増え、尻尾の先端がより鋭利になったアルムが画面に納められる。


 『じゃーん!どう?前より強そうでしょ?』


 アルムはクルクルと回りながら全身を見せるように動く。

 比較画像も用意され、アルムが変化したことは誰の目にもわかるように編集されていた。


 『なんでこうなったん?』

 『うーん……なんだか今朝眠かったからいっぱいお昼寝してー、起きたらこうなってた!』

 『理解不能』


 『パワーも前より上がってるんだっけ?』

 『もちろん!それも見せちゃうよー!』


 アルムは動画内で張り切って能力を行使する姿を見せた。

 四本の角が青白く光り、その先から紫電が迸った次の瞬間にはノイズキャンセリングで音がすべて遮られるほどの爆音を伴う雷が落ちてくる。


 時間にして十分程度に新しい姿、より強化された能力、無邪気に喜びを振りまく様子とリスナーの考えるアルムの魅力が存分に納められた動画はカグヤのチャンネルのリスナーからは大好評であった。

 以前の姿が見られなくなる可能性を惜しむ声も多少は見受けられたがリスナーのほとんどはアルムの変化を好意的に受け入れていた。

 多少姿が変われど彼女の本質はそのままであることをしっかりと理解していたのである。


 動画には投稿して一時間程度で多数のコメントが寄せられた。


 『さらに強くなるんかこの人外娘』 

 『強くなったきっかけが謎すぎて草』

 『なんか関東にバカデカい雷落ちたなって持ったらこれの撮影してたんか』


 「その力は戦いには活かせそう?」

 「大丈夫!さっきアルジェに付き合ってもらったときに制御できるようになったから!」


 カグヤからの問いに対してアルムは自信満々に答えた。

 はじめは暴走気味だった力もアルジェと身体を動かすうちに完全に制御可能になり、今は暴走の可能性は皆無である。


 「その割にはさっき壁をズタズタにしてくれたけど」

 「いや、それはその……ね?」


 カグヤに上げ足を取られたアルムは尻尾の先を抱えながら気まずそうに釈明を試みる。

 その先端に付いた白銀色の刃は照明を反射して鋭い輝きを放つ。

 そんな二人のやり取りをアルジェはスマホでゲームをしながら聞き流すのであった。


 

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