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轟き照らすは金の龍  作者: 火蛍
銀龍
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手引きする銀龍

 アルムが視界を取り戻した時、そこに映っていたものはその出力に任せてスネイルキメラの外殻を引きちぎるアルジェの姿であった。

 スネイルキメラはほぼすべての外殻を失い、最初に交戦した時よりも弱々しい姿へと成り果てていた。


 「トドメは貴方が刺すべき」


 アルジェはアルムにそういうとスネイルキメラを譲るように身を引いた。

 外殻の守りなき今、アルムの攻撃を阻むものは何もない。


 『よくわからないけど、それでいいのなら!』


 アルムは体勢を立て直すと再度放電を繰り出して足場に電気を駆け巡らせた。

 スネイルキメラは感電を起こし、下半身を氷に閉ざされたまま肉体の自由を喪失して痙攣を繰り返す。

 次の瞬間、炸裂音と共に飛び出したアルムがスネイルキメラの胸部をど真ん中から貫いた。

 青白い閃光が突き抜け、アルムがスネイルキメラの背後に姿を現すと同時にスネイルキメラは倒れ込んで爆発を起こした。

 決着をつけ、足場に駆け巡った電気が逃げていく。


 アルムはアルジェの方に視線を向けた。

 アルジェは何も言わずにアルムを見つめ返す。


 『どうして力を貸してくれたの?』

 「力を貸したつもりはない。私は私の存在意義を奪おうとしたアイツが気に食わなかったから排除した。それだけ」


 アルムが尋ねるとアルジェはスネイルキメラを攻撃した動機を明かした。

 

 『随分と感情任せに動いたんだね』

 「わからない。でも今は気分がいい」


 アルジェはアルムに指摘されて初めて自分が命令ではなく個の感情によって行動を起こしたことに気がついた。

 それと同時にアイデンティティを奪おうとしていた存在がいなくなったことに喜びの感情を覚えていた。


 アルジェは人間の姿を取った。

 戦闘の意思がないことを伝える彼女なりの表現であった。

 その意思を汲み取り、アルムも人間の姿になる。


 「アルム。貴方は人の心をどれぐらい知っている?」

 「ぜんぜんわからないよ」


 アルジェからの問いにアルムはあっさりと答えた。

 予想外の答えにアルジェは小さく首を傾げる。


 「人間のことを愛している貴方でもわからないの?」

 「うん。だってカグヤが何考えてるかすらボクにはさっぱりわからないからね」


 アルムはあっけらかんと語った。

 彼女は守るべき対象である人間という生物を愛している。

 しかしその人間がその心をもって何を考えているのかを理解することはできない。


 「わからないことが怖くないの」

 「全然。むしろわからないのが当たり前だし、わからなくていいんだよ」


 アルジェは理解できない概念への恐怖を打ち明けた。

 思考を補助するAIによって『最適解』を導き出している彼女に取ってその『最適解』が出せないものが恐ろしかったのである。

 アルムは逆に『感情の発生に対する答えが出ないことが普通である』ことを解いた。


 「人間は感情の生き物って言われててね。時々その感情で理屈を超えたことを起こすんだ。ちょうどさっきのキミみたいにね」


 アルムは感情が理屈や常識を超越する可能性を示した。


 「ボクたちキメラは人間じゃないけど人間と同じようにものを考えられるし、感情もある」

 「楽しそう」

 「そうだね。人間と同じものを持ってることがボクは嬉しい」


 アルムはニコニコしながら自身の感情を表現してみせた。

 『感情という概念を受容しているか否か』

 それが自分とアルムとの精神面での違いであることをアルジェはようやく理解した。


 「しばらく一人にさせてほしい」

 「そう?じゃあボクは帰るね」


 アルジェは思考のための時間を求めた。

 彼女は自分の感情と向き合おうとしたのである。

 アルムはアルジェの行動をを肯定し、一人スクラップ置場から去っていくのであった。

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