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轟き照らすは金の龍  作者: 火蛍
銀龍
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強化成長型キメラ

 アルムがスネイルキメラと初めて交戦した翌日。

 カグヤが住む町の近隣の小中学校で不可解な事件が相次いで発生していた。

 白線を引くための石灰がきれいさっぱり無くなってしまったのである。


 そのどれもがスネイルキメラによるものであった。

 そして当のスネイルキメラは人気のないスクラップ置場にて大量の石灰を吸収したことで更なる力を獲得し、その形態を変化させた。

 以前全身を覆っていた透明な粘液はなくなり、より厳つく強固になった外殻に身を包んだ姿へと変貌したのであった。


 キメラの姿を現したことで気配を察知したアルムが雷鳴と共にスネイルキメラの前に現れた。

 スネイルキメラは毅然と構え、アルムを迎え撃つ姿勢を取る。


 アルムは得意の急加速を乗せた突進から蹴りを繰り出した。

 スネイルキメラはその初動に反応し、盾のように形成された左腕の外殻を正面に構えて防御の姿勢を取る。

 アルムの蹴りは外殻の正面に直撃し、その威力でスネイルキメラの身体は後退するがよろけもせず、外殻によって完全に蹴りの威力を抑え込んでいた。

 アルムはさらに一押しをかけて外角を足蹴にしたまま押し込もうとするがスネイルキメラはそれに動じず押し返す。

 その反応からアルムはスネイルキメラが確実に強くなっているのに気づいた。


 スネイルキメラは左腕を外に払い除けた。

 アルムはその身を弾き出されるが空中で姿勢を立て直し、中距離からスネイルキメラと睨み合う。


 スネイルキメラは右腕を正面に構えると外殻の隙間から何かを射出した。

 アルムは不意をつかれたものの、すんでのところでそれを回避した。

 射出された何かはアルムの後ろにあったスクラップに付着し、セメント状に凝固する。

 それはかつてスネイルキメラの体表を覆っていた粘液であった。


 スネイルキメラは粘液を射出してアルムの動きを牽制しながら距離を詰めていく。

 アルムはスネイルキメラの周囲を旋回しながら電撃で応戦するがスネイルキメラはそれにも動じず、冷静に狙いをつけてアルムの逃げ場を塞ぐように追い込んでいく。

 

 機動戦を封じられた地に足をつけるとアルムは真っ向勝負へと切り替えた。

 足場に電気を駆け巡らせるがスネイルキメラはそれを踏んでも怯むことなく詰め寄ってくる。

 彼の外殻にはアルムの電撃が通らなかったのである。


 アルムとスネイルキメラとの戦闘は肉弾戦へと移行した。

 アルムはスネイルキメラの外殻を殴りつけるが強固な守りの前にダメージはなく、逆にスネイルキメラが重量の乗ったパンチを返すとアルムの身体がよろめく。

 固さと重さを兼ね備えたスネイルキメラの打撃の強さはアルムの想定を上回る威力があった。


 スネイルキメラの強みがその外殻にあることに気づいたアルムは外殻を破壊しようと試みた。

 電撃を放出してスネイルキメラを怯ませると同時に右側面に回り込み、足と尻尾で上半身に組みつくとその腕と外殻の隙間に腕を突っ込んで力任せに引き剥がそうとした。


 対するスネイルキメラも全力の抵抗を仕掛けた。

 外殻は彼の守りの全てを担う重要なものであるため、それを失えばどうなるかは目に見えている。

 アルムを振り払おうとするがアルムはがっしりと組みついたまま離れない。

 次第にスネイルキメラの右腕と外殻の隙間が広がりかけ、メキメキと音を立て始めた。


 アルムと組み合っていたスネイルキメラは突如として首を伸ばして背後のアルムに目を向けた。

 軟体動物の特性を持つキメラであるが故に外殻のない部分の可動域が非常に柔軟であった。

 アルムと目が合った刹那、スネイルキメラはアルムの顔目がけて口から粘液を吹きかけた。

 粘液はアルムの目と鼻を覆うように直撃し、怯んだアルムは反射的にスネイルキメラを背後から蹴り飛ばし、密着を解いて離脱する。


 アルムの顔に付着した粘液はすぐに凝固して視界を塞いだ。

 光すらも遮り、アルムの視界は闇に閉ざされる。

 その時、アルムの肌を凍てつく冷気が刺した。

 それはアルジェの襲来を告げるサインであった。


 「銀龍、手出しは不要である」

 「どうでもいい。今は貴方に用がある」


 アルジェはアルムのことをそっちのけにするとそのままスネイルキメラへと襲いかかった。

 アルムはその後からアルジェとスネイルキメラが戦っていることを察知した。


 『なぜキメラを攻撃してるの?』

 「気に食わないから。他に理由はない」


 アルムがテレパシーで語りかけるとアルジェはノイズの混じった声で答えた。

 今の彼女は自分から存在意義を奪おうとしているスネイルキメラに対して非常に腹を立てており、半ば八つ当たりで攻撃を仕掛けたのである。


 アルジェは自身の重量と硬さに身を任せた肉弾戦でスネイルキメラを叩いた。

 アルム以上の破壊力を持つ一撃は確実にスネイルキメラの外殻を削るようにダメージを与えていく。

 スネイルキメラも粘液を射出して抵抗するがアルジェの放つ冷気によって付着前に凝固し、固形物として着弾する。

 

 「貴様裏切るつもりか!?」

 「なんのこと」

 

 命令を反故にするような行動を取るアルジェに対してスネイルキメラが窘めるとアルジェはシラを切るように答えた。

 今の彼女は明らかに命令を逸脱しており、個の感情によって行動していた。


 「破壊する」


 アルジェはスネイルキメラの右腕の外殻が浮いているのを確認すると冷気を纏ったブレスを吐きかけた。

 スネイルキメラの下半身は氷に覆われ、身動きを封じられる。

 アルジェはスネイルキメラの右腕から外殻を引きちぎった。

 事前にアルムが剥がしかけていたこともあり、大量の粘液と同時に音を立てて乖離した。

 外殻を引きちぎったアルジェは勢いそのままに左腕、胸部と外殻を引きちぎっていく。

 

 顔に付着した粘液を剥がし、視界を取り戻したアルムの前にはスネイルキメラを叩きのめすアルジェの姿があったのであった。

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