明るい配信
アルジェと一端のお別れを告げ、ハルヒも帰っていったところでカグヤとアルムは配信の準備を始めた。
アルムの傷がある程度癒えたところでまた配信である。
『雑談』
ただ二文字、そう題された配信が始まった。
二人の配信を視聴しに多くのリスナーが訪れる。
「はい始まりましたー」
「やっほーみんな。今日はボクたちとお話ししよ」
カグヤとアルムが配信を始めるとすぐにコメントがちらほらと付き始めた。
カグヤはその中のいくつかを拾い上げて話の種にする。
「今日何してたかって?午前中いろいろ用事あってー、昼間はアルムと映画観ててー。で、帰ってきてちょっとゆっくりしてから今配信みたいな?」
「映画はねー、救命機動エクシードレオ・サイキックウォーを観てきたよ」
アルムが映画の話を始めると二人による感想回が始まった。
今日二人が観た映画は毎年シリーズ放送されている特撮ヒーロー番組の劇場版であった。
アルムはそのシリーズの大ファンであり、カグヤも視聴を欠かしていない。
「詳しく話すとネタバレになっちゃうけどどこまで話していい?」
「ボクは全部話したいなー」
映画の話題を皮切りに配信はいつものオタク談義になった。
そんな中、カグヤはとあるコメントを見つける。
「コスプレとかしないのって?ははっ、あーしにできるコスプレなんかあるわけないじゃん」
「コスプレって?」
カグヤはコスプレに関するコメントを見つけるとそれに反応を見せた。
聞きなれない単語を耳にしたアルムがすぐにそれに食いついてくる。
「コスチュームプレイの略称、要するに何かを模した格好をするの。例えばあーしがエクシードレオの特救機動隊の格好してたらそれがコスプレ」
「へー、面白そう。ボクもやってみたいな」
「一般人からしたらアルムは今の状態で十分コスプレに見えるけど」
アルムがコスプレに興味を示すとカグヤはすかさずツッコミを入れる。
そもそも普通の人間にドラゴンのような角や尻尾はついていないのである。
「そうなの?そう言われれば確かに……」
カグヤに指摘されたアルムは少し考えて納得した。
久々に飛び出した人外仕草にリスナーたちは歓喜する。
『出たな人外仕草』
『うーんこの』
アルムの人外仕草を見たリスナーは『おやつ代』と称して次々にスパチャを投下した。
「ねーカグヤ、一緒にコスプレやってみようよ」
「やだよ。あーしに似合うやつなんかないし」
「そんなことないよー。ねーみんな?」
「どこで覚えたそんなやり方……」
アルムがリスナーに同調を呼びかけるとカグヤは引くに引けなくなった。
リスナーに期待されてしまったら配信者としてそれを無碍にすることはできない。
リスナーたちは次々にコスチュームを提案してきた。
「いっとくけどキャラコスはやらないからね。おい、一部リスナーの欲望ダダ漏れてんぞ」
カグヤは渋々コスプレをすることを受け入れつつ条件を提示した。
一部のリクエストに難色を示しつつもひとまず目を通す。
「メイド服ぐらいならまぁ」
「メイド服ってどんなの?」
「こういうやつ。アニメでも見たことあるっしょ」
「あー!確かに見たことある!」
カグヤがスマホで画像を見せるとアルムはそれが自分が知っているものであることを思い出した。
「カグヤがこの格好するの?」
「いや、あーしはこんな丈の短いフリフリなスカート履かないよ。いい?そもそもメイド服っていうのはね」
アルムが何気なく尋ねるとカグヤのオタク心に火がつき、メイド服について語り出した。
その勢いと情報量に圧倒され、アルムは何も言えなくなる。
『メイド服に詳しい女』
『これは厄介の匂いがする』
「うっさい。あーしはヴィクトリアンスタイルが好きだからそれで色々調べたことがあるだけ」
カグヤの勢いは止まらない。
リスナーすらも圧倒し、その知識を叩き込んでいく。
「というわけであーしにとってミニスカメイドは邪道なの。わかった?」
「うん」
カグヤがあらゆる蘊蓄を語り尽くした上でアルムに確認するとアルムは静かにそう答えた。
あまりの情報量に処理が追いつかず、頭が真っ白になりかけていた。
『人外を圧倒する女』
『強いオタクだなぁ』
「まーそういうわけで、なんか記念企画とかやる時にコスプレするのも検討してみるわ」
リスナーたちは口先一つでアルムの思考をパンクさせるカグヤに感心するのであった。




