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轟き照らすは金の龍  作者: 火蛍
金龍覚醒
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穿ち貫く

 トータスキメラとの戦闘から翌日、アルムは再びトータスキメラ出現の気配を感じ取って目を覚ました。

 時刻は午前六時、カグヤとハルヒはまだ寝息を立てている。


 (大丈夫。今度のボクならやれる)


 アルムは拳を握りしめると窓から飛び出し、ドラゴンの姿に変身してトータスキメラの居場所へと向かった。

 アルムが飛び出した後に開け放された窓から入る風に肌寒さを覚え、カグヤが眠気混じりにうっすらと目を開ける。

 

 (アイツまた飛び出していったのか……)

 

 カグヤは眠気が覚めきらないままソファから身体を起こし、窓を閉めた。

 一人で飛び出していったものの、学習能力の高いアルムのことである。

 対策方法さえ分かってしまえばあとは自力で何とかしてくれるだろうと信頼を置き、欠伸をするともう一度ソファに戻ると横になって瞼を閉じた。

 

 トータスキメラは逃げ惑う人を尻目に悠々と街中を歩く。

 その姿はまるでアルムが自分の元に誘われるのを待っているかのようであった。

 そしてその願望をかなえるかの如く、早朝の空から雷鳴と共にアルムが現れる。


 アルムはトータスキメラの気を引くように空中から咆哮を上げると全身から電気を迸らせた。

 空中を旋回飛行してトータスキメラの背後を取るとそのまま背中から掴みかかり、軽々と飛び立つ。


 アルムはトータスキメラを抱えたまま街から離れた雑草の伸びる廃公園へと戦いの場を映した。

 高度を付けて急降下し、トータスキメラを投下して地上へと叩きつける。

 トータスキメラの身体は地面と激突するが弾力のある身体が衝撃を吸収し、ダメージを追う様子もなくゆっくりと起き上がった。


 アルムは低空を飛行しながら放電し、地上に雷を落とした。

 トータスキメラは持ち前の絶縁体で受け流すがアルムはお構いなしに落雷させ続ける。


 次第に落雷が周囲の雑草を焼き、廃公園に火の手が上がり始めた。

 トータスキメラが行動の意図に気づいたときにはすでにアルムの狙いは達成されていた。

 それもそのはず、アルムの狙いはトータスキメラに落雷を直撃させてダメージを与えることではなく、火を起こして熱を発生させることだったのである。


 火の手が広がり、トータスキメラの身体から蒸気が吹きだし始めた。

 先の強化によって耐熱性と放熱効率が上がったとはいえ、火中に晒されて平然としていられるほどではない。

 トータスキメラは地中に潜って退避しようとするがアルムはすかさずそれを妨害した。

 圧倒的に勝る機動性で行く手を塞ぐように回り込み、正面から蹴り飛ばして即座に離脱して反撃も許さない。

 重装甲で電気を通さない鉄壁の防御とアルムにも迫るパワーを誇るトータスキメラだが武器はあくまで肉体のみであるがゆえに空を飛ぶアルムに対して地上から手を出せず、機動力の差から逃げることすらできなかった。


 トータスキメラの身体から吹きだす蒸気の勢いが増す。

 排熱能力を最大稼働させるが放熱が追い付かず、体内に熱がこもり始める。

 次第にトータスキメラはその場から動くことができなくなり、膝をついて炎熱に晒されることとなった。

 全身から蒸気を吹きだし、ただその巨体を火の海に焼かれるだけのキメラの姿がそこにあった。


 トータスキメラの甲殻の輪郭が歪みだし、縁からなにかが滴りだした。

 耐熱の限界を超え、甲殻が溶解を始めたのである。


 空中からそれを見ていたアルムはすかさず攻勢に出た。

 全身に帯電し、威力を増した肉弾戦で攻め立てる。

 強度を失った甲殻では威力を殺せず、トータスキメラはサンドバッグ同然に殴られる。

 猛攻の果てに胸部の甲殻が吹き飛び、無防備となった本体がさらけ出された。


 『よし、決めるぞ!』


 アルムは士気を上げるように宣言すると地上に降り立って翼をはためかせた。

 羽ばたきによって起きた突風が火の海を鎮め、その直後にくすんだ灰色を塗り替えるように青白い電流が地面を駆け巡る。

 耐熱限界を超えた高熱に晒され続けたトータスキメラの排熱が今更追いつくはずもなく、絶縁体の守りを失ったことで電気を踏んで感電し身動きの一切を封じられた。


 アルムは力を溜めるように身を引くと勢いをつけてまっすぐ飛び込んだ。

 その速度は捉えられず、電光の青白い軌跡を描いてトータスキメラの肉体の中心を貫通して背後へと通り抜けた。

 これこそがアルムがカグヤたちとの協力を得て作り出した『必殺技』であった。


 アルムが動きを止めたときにはトータスキメラの胸部には巨大な穴が開いており、前後の景色が筒抜けで繋がっていた。

 亡骸となったトータスキメラの全身から過剰に食らった電気が迸り、背中から倒れると同時に爆散する。

 青白く光っていた地面は電流が止まったことで焼け焦げた更地へと姿を変え、戦いの決着を物語る。


 「グオオオオオオオオオン!」


 アルムは勝利の咆哮を上げると空高く飛び去った。

 アルムの姿が雲の中に消えると朝焼けの空に雷鳴が轟くのであった。


 「ただいまー!」


 朝七時過ぎ、アルムは元気な声と共にアパートに戻ってきた。

 そこではハルヒが朝食の支度をしており、カグヤが寝ぼけた様子で朝食の完成を待っている様子が見えた。


 「アルムさんおはよー」

 「おはよー。今度はちゃんと倒せた?」

 「ばっちり。ボクのカッコいい必殺技をカグヤたちにも見せてあげたかったな」

 

 アルムはトータスキメラを倒してきたことを自信満々にカグヤたちに報告した。

 新しい技を獲得し、それでキメラを倒すことができて非常に気分がよかった。

 

 「あんまり調子乗んなー。でもまあ、お疲れ」

 「もうすぐ朝ごはんできるよー。お姉ちゃん準備手伝って」

 「あいよー」


 カグヤはアルムを窘めつつもその活躍を労った。

 アルムは日常に戻り、カグヤたちといつものような朝を迎えるのであった。

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