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カグヤの分析

 いったんアパートに戻ってきたカグヤはパソコンを立ち上げるとスマホを接続し、動画をアップロードしてそれをアルムとハルヒの前で再生した。

 そこにはさっきのアルムとトータスキメラとの交戦の様子が映っていた。


 「これさ、もしかすると相手のキメラの身体が電気を通さないゴムみたいになってるんじゃないかな」

 「ゴム……?あー、なるほど」

 

 動画を確認したことで確信を得たカグヤは自分の中で打ち立てた仮説をハルヒとアルムに説いた。

 それはトータスキメラがゴム状の甲殻に覆われているというものである。

 アルムの打撃を押し返す弾力性や電気に対してまるで反応を示さなかったことにも説明がつく。

 ハルヒは姉の仮説に納得して首を縦に振った。


 「えーっと、それってつまりどういうこと?」

 「このままだと次に戦ってもアルムは勝てない。向こうはアンタを対策してきてるってこと」


 カグヤは自らの仮説に基づく結論を淡々とアルムに突きつけた。

 トータスキメラは動きこそ鈍重だが単純なパワーに優れ、アルムの打撃を跳ね返す防御力と電撃を通さない絶縁体の装甲を持っている。

 能力の相性は最悪といってもいい相手であった。


 「そんな!?じゃあボクどうすればいいの!?」

 「こっちもちゃんと向こうの対策をしなきゃだねー。もし相手の装甲がゴムなら弱点はちゃんとある」

 「ゴムの弱点……あ、わかった!」


 トータスキメラへの対策方法を見出したハルヒは手を叩いた。

 

 「カグヤ、ハルヒ。ボクにもその弱点っていうのを教えて」

 「ハルヒ、教えてあげて。あーしはもうちょっとこの動画見直したいから」

 

 カグヤはハルヒに説明役を一任すると自分はパソコンのディスプレイとにらみ合った。

 ハルヒはその役を引き受けるとアルムと向き合う。


 「ゴムには大きく二つの弱点があるの。まず一つ目は切れやすいこと、もう一つは熱に弱いこと。お姉ちゃーん、輪ゴムってある?」

 「台所に置いてあるから持ってっていいよー」


 ハルヒはカグヤに確認を取ると台所から輪ゴムを箱ごと持ち出した。

 アルムは輪ゴムを興味津々に覗き込む。


 「これは輪ゴム、ちっちゃいけどあのキメラの身体と同じような特性があると考えていいよ」

 「このちっちゃいのが?」


 アルムは輪ゴムを一つ手に取るとそれを手の上で弄り回した。

 確かに力を加えるとそれを押し返そうとするし、放電してみても電気が巡るような感覚がない。

 

 「衝撃に強いし電気も通さない、でもこうやって刃物で横から力を入れると……」


 ハルヒはハサミを手に取ると輪ゴムの切断を実演してみせた。

 ハサミの入った輪ゴムはスパっと切断され、円形から一本のひも状に崩れる。


 「すごーい!こんなに簡単に切れちゃうんだ」

 「もう一つの弱点の熱についても見せてあげる。ちょっと台所に来て」


 ハルヒはゴムの弱点を実演すべくアルムを台所へと誘った。

 輪ゴムを菜箸でつまむとコンロを点火し、直接火にかけて炙る。

 すると輪ゴムはすぐに溶けて千切れ、ハサミを入れたときと同じようにひも状に崩れた。

 アルムはハルヒが持っている知識に驚愕させられた。

 ハルヒはオタク的な知識こそ聞きかじった程度しか持っていないものの、家庭的な道具に関する知恵はカグヤよりも遥かに豊富であった。


 「ね?これがゴムの弱点」

 「わかったけど、ボクの身体じゃ刃物みたいな切れ味出せないし、火を出したりなんてできないよ」

 「じゃあ電熱を利用すればいいんじゃない?電気ストーブみたいな感じで」


 弱点を理解しつつもそれを攻略する術が思いつかないアルムにハルヒは知恵を出した。

 ゴムの弱点である熱は必ずしも火によるものである必要はなく、電気を使うことで発生する熱でも十分である。

 それを利用すればアルムでもトータスキメラの弱点を突ける見込みがあった。


 「よし、そうとなれば新しい技を考えるぞ!どんなふうにすればいいかな?」

 

 アルムはハルヒに協力を仰いだ。

 ハルヒはそれを快諾し、電熱を利用した新しい技を一緒に考える。


 (すっかり仲良しだなぁ)


 カグヤは二人の様子を横目に動画を見直して考察を続けた。


 (やっぱ向こうはアルムのことを意識してキメラの能力を作ってるよなぁ。まるでこっちを試してるみたい……)


 カグヤはキメラの傾向について推察した。

 前回のカメレオンキメラはアルムを偵察していたし、今回のトータスキメラはアルムの攻撃能力を測るかの如く自ら攻撃を受けに行っていたようにすら見えた。

 まるでこちらのことを調べられているかのように思えてならなかったのである。


 (なーんて、考えすぎか)


 カグヤは自らの推察を邪推だとしていったん切り捨てるのであった。 


 一方その頃、トータスキメラは自らのマスターである男の元にいた。

 アルムとの交戦結果を報告するためである。


 「金龍の攻撃は確かに受けきった。しかし限界が迫った故にとどめを刺すには至らず……」

 「そうか。となればあちらは次に戦う時は対策を立ててくるだろう」


 男はトータスキメラの報告を受けると淡々と再戦に関して警告した。

 前回のカメレオンキメラを通して金龍に協力者がいることは把握しており、さらに対策されたことを鑑みるに今回もそうなる可能性は大いにあった。


 「お前の活動限界を伸ばすための強化を施す」

 

 男は再戦に備えてトータスキメラに強化を施すことを決めたのであった。

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