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今度こそ逃がさない

カメレオンキメラとの交戦の翌日。

 アルムは再戦に意気込んでいた。

 カメレオンキメラの気配を近くに感じており、その時がすぐに訪れることを予感させる。


 (マズい……あの女に接近できん……)


 カメレオンキメラは前回よりも離れた間合いからアルムとカグヤの動向を観測していた。

 圧倒的な戦闘能力を持つアルムの背後に指令役のカグヤがついている限りカメレオンキメラ側に勝機はない。

 しかしアルムがカグヤのそばに常についているためその排除すら困難を極める状態であった。


 「なんかさ、あの家の屋根の上変じゃない?」


 カグヤはふと見えた近隣の家に違和感があることをアルムに伝えた。


 「変って?」

 「なんかさ。ちょっと空間がブレてるっていうの?なんか見えない障害物があるみたいなさ」


 カグヤは違和感の内容をアルムに共有する。

 アルムがカグヤの指さす方を目を細めて注視すると、確かにそこには景色を歪める『何か』があるように見えた。

 アルムはそれがカメレオンキメラであることを確信する。


 (なぜ居場所を掴まれた!?)


 カメレオンキメラが不覚を取られた時にはすでに金龍となったアルムの足が目の前に迫っていた。

 先の戦いで受けた電撃によって透明化能力に障害が発生しており、精度が下がったことで目視で捉えられるほどに弱体化していたことに気づいていなかったのである。


 アルムは牽制の電撃でカメレオンキメラの退路を断つと空中から蹴りを浴びせてカメレオンキメラを屋根の上から叩き落とした。

 カメレオンキメラの身体はアスファルトの上に叩きつけられ、深緑色の姿を露わにする。

 

 「なぜだ。今度はなぜ居場所がわかった!?」

 『うっすらと見えてたんだよ!どうせ見えないと思って手でも抜いた?』

 

 アルムに直々に伝えられたことでようやくカメレオンキメラは自分の能力が破られていたことを理解した。

 もう逃げられないことを悟り、覚悟を決めて鞭を抜く。


 カメレオンキメラは鞭を勢いよく振り回した。

 だが鞭は空を切ってアルムには命中していない。

  

 (偶然だ。次は当てる)


 カメレオンキメラは次の一手を繰り出した。

 しかしそれもアルムには当たらない。

 先の戦闘ではまったく避けられずに滅多打ちにされていたはずの金龍の巨体に擦りすらしていないのである。

 それどころかアルムは鞭を掻い潜って目と鼻の先まで迫っていた。


 『カグヤの言った通りだ』


 アルムはカグヤからカメレオンキメラの攻略法を伝授されていた。

 

 『いいかーアルム、鞭はその先を見るんじゃなくて使い手の手元を見て動きを予測しなー。だいたい腕の振り方と同じ軌道で動くから』


 カグヤが伝授した鞭の攻略法、それは持ち手の手の動きで軌道を予測するというものであった。

 普通の人間であればまず実践不能だが人間を超えた能力を持つキメラであるアルムならそれが可能であった。


 アルムは鱗に帯電させると鋭い飛び込みからのショルダーチャージを繰り出した。

 電気の力で強化された瞬発力によってその巨体がワープしてきたかのように迫り、カメレオンキメラの身体を蹴飛ばされた石ころのように吹き飛ばす。

 カメレオンキメラは手から鞭を落とし、得物を喪失した。

 

 アルムの追撃は止まらない。

 吹っ飛ぶカメレオンキメラを電光石火の速さで追い抜いて背後に回ると蹴り上げで空中に打ち上げ、今度は上を取って遠心力をかけた尻尾の一振りで地上へと叩き落とした。


 『今度は逃さない』


 アルムは倒れたカメレオンキメラにすかさず飛び掛かるとその腕で頭を押さえ込み、密着状態からの放電を仕掛けた。

 猛攻を立て続けに受けたカメレオンキメラはダメ押しの放電でついに意識を失い、ガクンと首を落とした。


 アルムは動かなくなったカメレオンキメラの身体を足で掴むとそのまま上空へと飛び立った。

 その身体はみるみるうちに雲の上まで到達し、地上から姿が見えなくなった次の瞬間には雲の切れ目から迸る雷光と共に雷鳴が力強く轟いた。

 

 こうしてカメレオンキメラは消失し、アルムは勝利を収めたのであった。


 「ただいまー!」


 雷鳴が轟いてから数分後、アルムは上機嫌に帰ってきた。

 

 「おかえりー。やったじゃん」

 「今度こそバッチリやっつけたよ」


 アルムは今回の成果を誇るようにカグヤに右手でピースサインを出した。

 カグヤはそれに対して小さくピースサインを返したのであった。


 その頃、時を同じくして某所では男が一人新たなキメラの生成に着手していた。

 アルムから剥げ落ちた鱗から力の一部を解析し、それに対応するための力を持った新たな個体である。


 「金龍、その力をもっと知りたい……錬金術の粋の極みにあるそれを……」


 キメラを作る男の目はアルムの力を解明することへの執着と錬金に対する情熱と興味に塗れていたのであった。

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