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何かが潜む

 カグヤのバイトが休止期間中のとある日の朝。

 カグヤは外の喧騒で目を覚ました。

 窓を開けて外の様子を見ると何やら警察が立ち会って何かをしているようであった。

 警察がいるのはアパートの隣の物件であった。

 あまりに身近な場所であるため、他人事で済ませられないと感じたカグヤは寝巻き姿のまま外に様子を見に行った。


 「おはようございますカナメさん」

 

 カグヤが外に出るとアパートの大家が挨拶をしてきた。

 大家は普段カグヤとは家賃の徴収の際に一言二言会話をする程度の関係である。


 「おはよーございますー。何があったんですか?」

 「空き巣が入ったんですって。それも家族が揃ってる夜中に」


 大家は隣の家で起きた出来事をカグヤに伝えた。

 どうやらすぐそこで空き巣被害が発生したようであった。


 「空き巣ですか」

 「怖いですよねー。防犯を周知しないと」


 大家は一言添えるとそそくさとカグヤとの会話を切り上げていった。

 

 (そういえばアルムを見てないな)


 カグヤは今朝からアルムの姿を見ていないことを思い出した。

 家の中にいる様子もない。

 カグヤはスマホを手に取るとアルム宛に通話をかけた。

 発信から数秒程度でアルムから反応が返ってきた。


 「もしもし、今どこにいるの?」

 『アパートの近くだよ。キメラの気配を感じるんだ』


 アルムは電話越しにキメラの気配を察知したことを伝えた。

 彼女はカグヤが寝ている間に先にキメラの気配を感じ取って目を覚まし、周囲を探っていたのである。

 以前パピヨンキメラを察知したときと同じ声色を感じ取り、カグヤの気が引き締められる。


 「わかった。気を付けてよ」

 『うん。カグヤも戸締りはちゃんとするんだよ』


 カグヤとアルムは互いに注意喚起をして通話を終えた直後、カグヤは自宅の鍵をかけずに出てきたことを思い出して不安を煽られた。

 アパートと隣の家は目と鼻の先とはいえ、アルムがキメラの存在を嗅ぎつけたことでその脅威が非常に身近に思えてならなかったのである。

 カグヤは急いで自室へと引き返した。


 「ハァ……ハァ……何もない……よね?」


 カグヤが息を切らして部屋に戻ると、そこにはさっきと何も変わっていない空間があった。

 カグヤは安堵のため息をついて胸をなでおろす。


 朝のひと騒動がひとまずの鎮静を迎え、カグヤがスマホの画面を睨んでいるとアルムが帰ってきた。

 しかしその表情は神妙なものであった。


 「おかえり。キメラは見つかった……わけじゃなさそうか」

 「おかしいんだ。確かに気配はあるのに姿がどこにも見えないんだ」


 アルムは探索の結果をカグヤに報告した。

 曰くキメラの存在は確実だがその姿を確認することができなかったのだという。

 カグヤの中で姿が見えないというキーワードが引っかかった。


 「マジでそれっぽい影も見えなかったの?」

 「うん。ボクの目には見えなかったな」

 「カメレオン的な奴かも」

 「カメレオン?」


 カグヤがふと口走るとアルムがそれに興味を示した。

 彼女はカメレオンという生物を知らなかったのである。


 「そういう動物がいてさ。周りに合わせて身体の色を変えるのよ」


 カグヤはスマホで検索をかけるとカメレオンの写真と動画をアルムに見せた。

 

 「なるほどー。こんな動物がいるんだー」

 「感心してる場合じゃないでしょ。どうやって見つけるの」

 「あっ、確かに」


 カメレオンに関心を寄せるアルムにカグヤは思わず突っ込みを入れた。

 いくら力の差があろうと相手の姿を捉えられなければそもそも戦いようがないのである。

 相手が姿を消す能力を持っている可能性がある以上、まずはその種を明かすところからであった。


 「そのカメレオンっていうのはどうやって姿を消すの?」

 「肌の色を調節して色を変えるだけ。目につきにくい色にはできるけど完全に姿を消すなんてできないよ」

 「えー!?じゃあなんでボクには見えなかったの」

 「マンガとかアニメだと誇張されて姿を消せるみたいに書かれてることあるからそれかも。キメラだってそうでしょ」

 「確かにそうかも」


 カグヤがカメレオンの能力について説明するとアルムは納得したように頷いた。

 そもそも実在しない生物であるドラゴンのキメラの存在そのものの方が出鱈目だという感想はあえて口にはしなかった。


 「マンガやアニメだと見えない相手にどうやって対抗するの?」

 「テクノロジーで見えるようにするーとか、姿を現すタイミングを計ってそこを狙うーとか?そもそもキメラは何をしようとしてるんだろ」

 

 カグヤの独り言のような呟きにアルムはあることを思い出した。

 それは自分を含めたキメラの行動の習性についてである。


 「ねえカグヤ、ボク一つ思い出したことがあるんだ」

 「どしたの急に」

 「ボクたちキメラはマスターから与えられた使命に従って行動するんだ。ボクなら『他のキメラを倒して人間を守ること』みたいにね」


 キメラの習性、それは自らに与えられた使命を果たすべく行動を起こすということであった。 

 過去に現れたキメラも例外ではなく、真相こそわからなかったがどれも使命を抱えていた。


 「じゃあ今回のキメラにも使命があるってこと?」

 「そういうこと」

 「空き巣が使命のキメラって何」


 カグヤは頭を抱えた。

 今回の空き巣事件はキメラが起こした可能性が高いが、だとすれば何のために空き巣をしているのかがまるで分らない。

 推理をするにはあまりに判断材料が乏しかった。


 「はぁ、てかなんで真面目に考えてんだろあーし……」


 カグヤは自分が一般人でありながらアルムに対して真面目に協力していることに気づき、頭を抱えたまま机に伏したのであった。


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