交わる金と銀
アルジェの鱗を移植することで不調から回復に向かい始めたアルムは完全な復活に向けて休養に入った。
充電能力も機能を取り戻し、昼間のホワイトレオキメラとの戦いで負った傷もすでにほぼ完全に塞がっていた。
その夜、アルムは夢を見ていた。
夢の中でアルムは自分が自分でなくなっているような感覚を覚えた。
視点が低く、ものの見え方が普段とは全く違う。
加えて自分の意志と身体が何かをなぞっているかのように勝手に動いていた。
『これは……アルジェの記憶?』
アルムは自分が行っていることの正体に勘付いた。
今の自分はアルジェの過去の記憶の中の出来事を辿っていたのである。
自分を打倒するために生み出され、その過程でカグヤをマスターと認識し、己の使命とそれに反するカグヤの意志とで板挟みとなっていた事実を夢という形で追体験したアルムはカグヤをマスターに鞍替えしたところで現実に引き戻されるように目を覚ました。
カーテン越しに見る外の景色はまだ仄暗い。
アルムは寝ぼけてぼんやりしながら夢が意味するものを考察した。
アルジェの記憶を追体験したのは彼女の鱗を自分の身体の一部として取り込んだことによるものだと認識したところでアルムの中でとある仮説が浮上する。
アルムは口元に手のひらを添えると静かに息を吹きかけた。
しかし吐息が吹き抜けるだけで特に何も起こらない。
(流石にアルジェの力まではついてこないか)
アルムはアルジェが持つ冷気の力を獲得した可能性に淡い期待を寄せたがその幻想はあっさりと打ち砕かれた。
同系のキメラであるとはいえ、その能力まで引き継がれることはなかった。
寝起きで混濁していた意識が鮮明になってきたところでアルムは自身のコンディションを再確認した。
力はこれまで通り、電気のコントロールも以前のように戻っている。
不安定な様子もなく、アルジェから移植した鱗も違和感なく右足に馴染んでいた。
万全を期したところでアルムはキメラの気配を感じ取った。
昨日と同じ、ホワイトレオキメラの気配である。
「アルジェ、あのキメラが出た。 行くよ」
アルムはアルジェの寝室に赴くと彼女を叩き起こした。
アルジェは即座に覚醒状態に移行し、アルムと共に外へと飛び出していく。
早朝の町中ではホワイトレオキメラが道のど真ん中に鎮座していた。
何をするでもなく、何かを待つかのように微動だにしない。
アルムたちが駆けつけてくると、それに呼応するかのようにホワイトレオキメラは立ち上がり、鬣から炎を迸らせた。
アルムは闘志を燃やして全身から電気を放った。
アルジェも口元から冷気を漂わせて臨戦態勢に入る。
かくして、早朝の町中で二体のドラゴンのキメラとホワイトレオキメラとのリベンジマッチが幕を開けたのであった。




