回復を待つ時
アルムとアルジェが二体のキメラを退けてから二日後。
アルムは未だに消耗から回復しきれずにいた。
力が駄々洩れになっていた状態から一転し、今は逆に力を上手く発揮できない虚脱感に苛まれていたのである。
「どうアルム、調子上がりそう?」
「うーん。微妙かもー……」
カグヤがソファでだらだらと寝転がるアルムに声をかけるとアルムは覇気のない声で返事をした。
「充電はちゃんとしたのにねー」
「その電気が勝手に抜けちゃってるカンジがするんだー」
アルムは自身が抱いている感覚をカグヤに伝えた。
するとカグヤはとある事象を思い出す。
「あー、まるでパンクしちゃってるみたいな」
「パンク……って何?」
「壊れて穴が開くことをパンクするっていうんだよ。 底に穴が開いたコップにいくら水を注いでも水は勝手に穴から抜けてくでしょ。 今のアルムはそれと同じことが起きてるんじゃないかな」
「えー!? それってどうすればいいの?」
自身の状態をパンクと形容されたアルムは対処法を尋ねるがカグヤは返答に困ってしまった。
現象としては似たようなものであるとはいえ、物と生物とではまるで勝手が違うのである。
「コップやタイヤは修理するか新しいのを用意するかでなんとかできるけど、生き物はどうすればいいのやら……」
「じゃあずっとこのままってこと……?」
「アルムは生物だから自然回復で元に戻る可能性はあるけどそうだとしたらまだ時間かかりそうかもね」
カグヤは肯定とも否定とも取れない言葉を答えた。
彼女は生物としてのキメラのことを何も知らないにも等しいため、踏み込んだことは言えなかった。
「ところでさ、キメラを探知する能力は使えるの?」
「そのあたりは大丈夫だよ。 ただ……」
アルムは現状の自身の能力を再確認した。
キメラの姿と人間の姿を行き来する変身能力や他キメラの気配を探知する能力は問題なく行使できる。
ただ放電の出力を上げられず、電気がパワーの源であるアルムにとっては戦闘能力に関わる重大な問題であった。
「キメラが出てない時に焦ってもいいことないよー。 今はアルジェも戦ってくれるし、ちゃんと回復するのを待とう」
カグヤはアルムを宥めるように言い放った。
アルムはシロガネ・レンが送り込むキメラと戦える貴重な戦力である。
今はアルジェが同じ役を担えるものの、能動的に探し出せるという意味ではその能力は唯一無二であった。
「そうだ。 久しぶりにハルヒに来てもらおっかなー」
カグヤは思いついたことをそのまま口走った。
ハルヒとはちょくちょく通話をしているが直接顔を合わせたのは現在の家に引っ越してきた日が最後であったため、そういった意味でも久々に妹と顔を合わせたかったのである。
思い立ったカグヤは昼頃を見計らってハルヒに電話をかけた。
今日はカグヤにとっては休日だがハルヒにとっては学校の真っ最中である。
「もしもしー。 今度の休みにうち来ない? アルムたちも会いたがっててさ」
『行く行くー。 今度行くときに何か食べたいものある?』
「えー? ハルヒの作るものならなんでも」
『えっへへへー。 もうお姉ちゃんってばー』
ハルヒは姉からの誘いをあっさりと許諾した。
数分程度の通話を終えたカグヤはご機嫌にスマホをポケットにしまった。
「というわけで今度の休みにハルヒが来てくれることになったからねー」
あれやこれやと言わぬうちに次々と物事を進めていくカグヤにアルムは圧倒されるのであった。




