活性化の反動
カグヤの家を離れ、無人島へと移動したアルムは過剰に発生させられるエネルギーを発散させていた。
アルジェはそれに付き添い、アルムの様子を監視していた。
アルムのエネルギーの影響で島の周囲には絶えず落雷が発生し、上空には暗雲が立ち込める。
アルジェはそんな状況を意にも介さず木陰で寝息を立てていた。
「アルジェ、アルジェ起きなよ。 もう朝だよー!」
アルムは角と尻尾を発現させた人間の姿でアルジェを起こしにかかった。
時刻は午前七時、カグヤの家を出て半日近くが経過していた。
アルジェはアルムに揺り起こされて瞼を開くと小さく欠伸をした。
「気分は?」
「絶好調!」
「無駄だったらしい」
アルムの元気に満ちたリアクションを見たアルジェは自らの淡い期待が実現しなかったことに落胆した。
だがエネルギーの過剰放出こそ治らなかったものの、フラストレーションの発散という意味では確かな効果があった。
「行くよアルジェ。 キメラの気配だ」
アルムはキメラの気配を探知するとドラゴンの姿に変身し、先行して島から飛び立った。
それを追いかけアルジェもドラゴンの姿になって島を出る。
町ではスティングレイキメラとファルコンキメラが破壊行動を働いていた。
オブジェクトを破壊し、通行人を無差別に襲撃して手数を負わせる。
そのわざとらしいまでに大々的な活動はまるでアルムとアルジェがやってくるのを待っているかのようであった。
二体のキメラの気配を辿り、アルムとアルジェが空から駆けつけた。
ファルコンキメラが飛び出し、アルムを狙って先制攻撃を仕掛ける。
だがそれを見越していたアルジェがアルムに覆い被さるように上を取り、ファルコンキメラの急降下を正面から受け止めた。
アルジェはファルコンキメラの体当たりの直撃を受けるが激突ざまにファルコンキメラを掴み、その身体を抱えたまま地上へと落下した。
『逃がさない』
アルジェは道連れにする形でファルコンキメラを地上に叩き落とすと氷の槍を生成し、ファルコンキメラの翼を刺し貫いた。
ファルコンキメラの翼から大量の羽毛が飛び散り、筋肉が凍結して活動を停止した。
ファルコンキメラの窮地を庇うようにスティングレイキメラが地面から出現し、アルジェを背後から切りつける。
スティングレイキメラの刃を受けたアルジェの体表から火花が散るが痛手にはならず、アルジェは尻尾の一振りでスティングレイキメラを跳ね飛ばす。
『こっちは私が処理する』
アルジェはファルコンキメラの相手を引き受けるとアルムにスティングレイキメラの相手を任せた。
アルムはスティングレイキメラに飛び掛かるとその背後を取り、両腕を掴んで上空へと運び去った。
そのままとあるビルの屋上に投げ飛ばし、地中への潜行を封じて戦闘を進めた。
地中への逃走が出来なくなったスティングレイキメラは左腕の刃を振り回して応戦するがアルムは持ち前のスピードを活かしてその悉くを回避する。
アルムが優位に戦闘を進め、トドメを刺そうとしたその瞬間であった。
アルムの放電がついに止まったかと思うとそのまま膝から崩れ落ちた。
毒が抜けきり、それによって強制的に活性化させられていた身体が疲労の限界を迎えていたのである。
アルムは身体を動かそうとするがその意思に反して肉体はピクリとも動かない。
その現象を好機とみなしたスティングレイキメラはアルムに接近する。
スティングレイキメラが反撃をしようとしたところへアルジェが駆けつけてそれを阻止した。
ファルコンキメラを氷漬けにして始末した彼女はアルムの支援に来たのである。
アルジェは身体をぶつけてスティングレイキメラの左腕の刃をへし折ると氷の槍でその腹を貫いた。
さらに追撃を入れ、スティングレイキメラの肉体は氷塊と化して粉々に砕け散った。
「アルム、戦闘は終了した」
二体のキメラを片付けたアルジェはアルムに声をかけた。
アルムは人間の姿に戻るがやはり身体が動かない。
呼吸は正常に行われているがその瞼は閉じたまま開く気配を見せなかった。
アルジェはドラゴンの姿で人間体のアルムを回収すると一夜ぶりにカグヤの家へと戻るのであった。




