現代キメラの謎
レオキメラとの戦闘を経たその日の夜、アルムとアルジェはカグヤから傷の手当てを受けていた。
レオキメラの破壊力はこれまでのキメラを大きく上回っており、それと交戦したアルムとアルジェの手足には切り傷や刺し傷のような生傷がいくつも付けられていた。
「へー、そのキメラは自滅しちゃったわけ?」
「そうなんだよ。 今まであんなの見たことない」
手当てを受けながらアルムはカグヤに体験を伝えた。
それと同時にアルムの中でスカラベキメラを怒りのままに打ちのめした時の記憶が蘇る。
当時も無意識にエネルギーがあふれ出し、暴走を起こしているといっても差し支えない状態であった。
今回のレオキメラの末路は自分が辿るかもしれなかった可能性の一つを示されたような気がしてならなかった。
「しかし不可解。 あのキメラはどうやってあれほどのエネルギーを生み出していたのか」
アルジェはアルムとカグヤに疑問を提起した。
レオキメラは莫大なエネルギーを生成していたがそのエネルギーの発生源が不可解であった。
レオキメラから発生していたエネルギーはアルムたちのそれと互角以上であり、本来そのレベルのものを発生させるためにはアルムたちより身体が大きくなる、あるいはその発生器官が露出するほどに肥大化するはずなのである。
だがレオキメラにはそれがなかった。
「アルム、錬金術の中にそういったエネルギーを生成できるものはある?」
アルジェに尋ねられたアルムは記憶をたどると思い当たるものを発見した。
「あるにはあるよ。 モノリスっていうんだけど」
「モノリス?」
不意に出てきた新たな単語にカグヤは首を傾げた。
「かつて錬金術師たちが完成を目指した物質だよ。 理論が正しければ”無限のエネルギー”が発生するって言われてるんだ」
「無限のエネルギー……」
物騒な言葉にカグヤは息を飲んだ。
もしそれを取り込んだキメラが現れたとなればとんでもない話である。
「でもおかしいなぁ。 モノリスの研究はボクたちキメラが生まれたことで消滅したはずなのに……」
「エレメントキメラの体内に不完全なモノリスがあったとしたら?」
アルムが首を傾げるとアルジェから指摘が入った。
かつて自分たちと交戦したエレメントキメラも多彩な力を無制限に発生させていた。
その力の発生源がモノリスだと考えると腑に落ちるものがあった。
「えー、じゃあ要するにその『エレメントキメラの体内にあった不完全なモノリス』を誰かが回収してキメラに取り込んだってこと?」
「可能性は高い」
それはあまりにも衝撃的な話であった。
もし今後現れるキメラがモノリスを取り込んだ個体になるとすればアルムとアルジェの苦戦は免れないものであった。
「ねえアルム、そのモノリスっていうのは完成させられるの?」
「千年前から完成させることはできるとは言われてたよ。 ただ当時は完成に百年かかるって結論がついて諦められたけどね」
「でも、現代の技術があればもっと短時間で作れるかもしれない」
カグヤはモノリスが完成する可能性を予感した。
工業技術が千年前とは比較にならないほどに進歩している現代ならモノリスを完成させることも不可能ではない。
もし完全なモノリスができてしまえばその影響は計り知れない。
「アルジェ、あーしの前についてたマスターって誰?」
カグヤはアルジェに問い詰めた。
アルジェがかつて付き従っていたマスター、それ即ち現代においてキメラを製造する技術を持つ人間である。
その人物がモノリスの完成を目指していることは想像に難くなかった。
「……」
アルジェは口を噤んだ。
かつてのマスターであるシロガネ・レンとはかつてエレメントキメラが出現した際に個人的な協力関係を結んだおり、その中には密約もあったためカグヤ相手と言えども答えることに躊躇いがあった。
「教えて。 じゃないとこの時代にずっとキメラが出続ける」
カグヤはもう一度アルジェに迫った。
キメラとの戦いは人々を脅かす元凶であるため、それを止めるために一刻も早くキメラの製作者を突き止めなければならなかった。
「私のかつてのマスターは、シロガネ・レン」
観念したアルジェは以前のマスターの名をカグヤに明かした。
その名を聞いたカグヤはショックのあまり思考が停止して硬直する。
その日、カグヤはキメラ事件の裏で起こしていた人物の正体を知ることとなったのであった。




