灼熱の獅子
ある秋の日の夕暮れ。
アルムとアルジェは街中でキメラとの戦闘を繰り広げていた。
二人が戦っている相手は筋骨隆々の体格に赤茶色の鬣を拵えたライオン型、レオキメラであった。
レオキメラはアルムの右足を掴むと力任せに振り回して地面に叩きつけた。
そのままマウントを取り、両腕を真っ赤に光らせてアルムの首を押さえにかかったところをアルムがすんでのところで食い止める。
『なんてパワーだ!』
レオキメラのパワーは凄まじいものがあった。
アルムのパワーと互角以上であり、その腕がアルムの喉元まで迫る。
そこへアルジェがフォローに入り、レオキメラの腕を引き剥がしてアルムを援護する。
だがレオキメラはそれにも怯まず、今度はアルジェを標的に据えると怒涛の格闘を浴びせかけた。
真っ赤に光る腕はかなりの熱を帯びており、触れたアルジェの体表から激しく火花を散らす。
タックル、パンチ、キック、全身を余すことなく使ったラッシュは瞬く間にアルジェを押し込み、胸部にドロップキックを打ち込まれたアルジェは吹き飛ばされてダウンした。
銀色の鱗に覆われた体表はレオキメラの熱気で赤く赤熱化し、煙を上げる。
アルジェは自らの能力で体表を冷却して体勢を立て直すとレオキメラに冷気を浴びせかけた。
レオキメラの下半身が一瞬氷に覆われ動きを鈍らせるがすぐに熱で溶かして活動を再開する。
硬直を解いた隙を狙ってアルムが電撃を浴びせるがレオキメラはそれすらも意に介さなかった。
このままでは形成が不利であると判断したアルムは強化形態に移行した。
アルムからただならぬ気配を感じ取ったレオキメラはアルムの方に振り向いた瞬間、アルムの飛び蹴りがレオキメラの顔面に直撃した。
レオキメラは首をあらぬ方向に捩ったまま宙を舞い、アスファルトに叩きつけられたワンバウンドする。
レオキメラは首が捩れたまま立ち上がると両腕で強引に正面へ矯正し、アルムたちを睨んだ。
さらに鬣を光らせ、天を仰いで雄叫びを上げた。
するとレオキメラの周囲の熱気が急激に高まり、陽炎が揺らぐ。
危機を察知したアルジェが冷気を大量に放出し、灼熱と化した周辺の冷却にかかった。
灼熱と冷気がせめぎ合い、温い霧が立ち込める。
だがその時異変が起こった。
レオキメラの身体が自壊を始めたのである。
鬣が抜け落ち、四肢の末端がボロボロに風化して崩れ落ちていく。
その体内から生成されるエネルギーに肉体が耐えきれなくなったのである。
レオキメラの肉体は自壊を続け、ついにはアルムとアルジェが手を出すことなくその身を滅ぼしてしまった。
レオキメラに終始劣勢を強いられながらも取り残されたアルムとアルジェはただその顛末を呆然と眺めることしかできなかった。
アルムはレオキメラに対して戦慄を覚えた。
レオキメラはこれまで戦ったどのキメラよりも高い能力を持っていたためである。
自身とアルジェの二体を同時に相手取り、それでも圧倒してみせた。
もし自壊しなければこちらが危うかった可能性すらあった。
何はともあれ、ひとまず戦闘が終わったことを確認し、二体のキメラは飛び去るのであった。




