王子様の悩みの種 <後編>
ヴィル殿下視点のお話のラストとなります
レヴィは1ヶ月程で学院に戻ってきた。
生徒会の仕事には復帰したが、家督についでは未だにセドと揉めている。
レヴィは戻ってきてからよく話すようになったし、雰囲気も柔らかくなり、話しかけられていることが増えていたが、戻ってきてから2ヶ月近く経つ頃、不機嫌になることが増えた。
恐らくアリア嬢が再びルーチェに行くからその事が原因だと予想していたのだが、レヴィはルーチェ行きの事すら知らずにいた。
話を聞けば未だに妹のようだと言い出す始末だ。
アルに指示を出してヴィーゼ家に向かわせる。
あらかじめ馬車を用意しておいたのだが、それに気付くこともなくレヴィは乗っていったらしい。
全く世話が焼けると書類を確認しながらため息をついた。
数日後、生徒会室に顔を出したレヴィに詳細を聞いた私達は固まった。
「レヴィ、悪いがもう一度言ってくれるか?」
「うん?アリアと文通の約束をしてきたと言ったんだが?」
「まてまてまて!!ずっと側にいて欲しいと言いながら何故文通なんだ?」
「しばらく会えなくなるのだからお互いの状況知るためには必要だろう?」
「側にいて欲しいと言ったのならば文通ではなくて他に言うべき事があるだろう?」
「・・・?言うべきこと?」
アルの言葉に首を傾げながら聞くレヴィに私達が何も言えずにいると、レヴィは調べものがあると図書室に向かってしまった。
「ヴィル、あれはどういうことだ?」
「私に聞かれても困るのだが・・・」
「どうして側にいて欲しいまで言っておいて文通って結論に至ったのでしょうね」
「ソフィアとの手紙のやり取りが羨ましかったのでしょうか」
「しばらく様子をみるか・・・」
誰もが甘い展開を期待し、如何にレヴィをからかうか考えていたのだからこの展開は予想外すぎだった。
だが、レヴィとアリア嬢は似た者同士というべきなのか、手紙のやり取りをしていても2人の仲に進展があった様子はなく、アリア嬢の静養が終わってこちらで共に過ごすことになっても2人は変わらずの日々だった。
私の婚約者候補だったエミリアを婚約者と決め、学院を卒業後に婚約発表、その1年後に結婚となったのに、レヴィとアリア嬢は婚約すらしていないという状況が続いた。
どうみても2人は夫婦のようだと周りの誰もが思っていると言うのにレヴィは”このままで幸せだ”と答えるのみだ。
アリア嬢の兄であるティルフにアリア嬢はレヴィをどう思っているのか聞いてみたのだが、さすがヴィーゼ家と言うべきなのかアリア嬢は”お守りするべき大切な方です”と答えたそうだ。
側付のメイドには”側に入れるだけで幸せ”と言っているそうだが、このままでは2人は永遠に現状維持になるのではないかと結論に至った。
我々も2人の状況を見ているのに限界を感じ、公爵家と男爵家に承諾を取り、陛下の承認を得、式の準備を本人達に告げずに進めることにした。
はっきりいって、通常の王子の仕事より大変な仕事だった。
何しろ常に側にいる補佐役のレヴィに気付かれないように進めないといけないのだから、中々に骨の折れる仕事だった。
そしてようやく、結婚式を迎えることになった。
「やっとここまできましたね」
「長かったな」
「これでようやく自分達の式の準備に専念できます」
「まったく子供の頃はレヴィは何でもできる奴だと思っていたのだがな。
まさかここまで世話を焼く羽目になるとは思いもしなかった」
「同感です。あの2人の事で頭を悩ますのはこれで最後にしたいです」
コンラートの言葉に皆が頷いた。
これで2人は落ち着き、我々が2人の事で悩むことはないだろう。
願わくは平穏がいつまでも続くことを誰よりも望む。
この後、アリアに護衛の依頼が来てトラブルに巻き込まれたり、
レイヴィンが暴走したりとヴィル殿下達の悩みはつきません。
番外編はひとまずこれで終了とします。
またいつか番外編をかけたらいいなと思います。
最後までお付き合いありがとうございました。




