王子様の悩みの種 <中編>
後編は11/16 PM12:00に投稿します
結局私がアリア嬢に会ったのは彼女が学院に入学してからだ。
ティルフとはレヴィの護衛として何度か顔を合わせたが、その時のレヴィはいつもと変わらない様子だった。
私達が入学した時にはヴィーゼ家の長女のセシリア嬢がいたが、レヴィとは全く接点がなく、2人がしゃべっているのは一度も見たことがなかった。
そして私達が3年の時にアリア嬢が入学してきた。
アリア嬢はごく普通の令嬢で笑顔が印象の令嬢だった。
レヴィともそんなに接触する様子もなかったが、お互いが1人の時は声をかけているのをたまたま目撃してしまい、その時のレヴィの目元が若干和らいでいるのに気が付いた。
レヴィがアリア嬢に気を許しているのならば、いつか学院内でもレヴィの笑顔が見れるかもしれないと私はその時を楽しみに思うのだった。
だが1年経っても2人の関係は変わらず、私達が最終学年になった年にあの事件がおきてしまった。
魅了の呪にかけられていた時の記憶もちゃんと残っていた。
呪にかかっていたとはいえ、自分が生徒会の仕事を放棄し、あまつさえレヴィにひどいことを言いそうになっていたと思うと自分に腹が立ってしかたなかった。
父上からは今回の件は全員を不問とするが、一刻も早く正常な状態に学院を戻せと告げられた。
学院が再開する前日に、今後の為に生徒会室に向かうが、レヴィにどんな顔をすればいいのかわからず、部屋に入るのをためらっていると扉が開き、レヴィが立っていた。
「やあ、ヴィル。君で最後だよ」
「あ、ああ」
何か違和感を感じつつも私が部屋の中に入ると何故かセドも生徒会室にいた。
「各自の机の上にある資料が私とイリヤで今までやってきた分。
各自の分と私とイリヤの分を分けてある。
わからないことはイリヤに聞いてほしい。
セドは私の分を全て引き継いでやってほしい」
「なっ!?どうして僕が兄さん引継ぎをしないといけないのですか!!」
「今回の件で早急に学院を元のようにしないと駄目だろう?
私はしばらく休学するからその代りをしばらくはセドが埋めて欲しい」
「休学だと?レヴィどういう事だ?」
「しばらくルーチェ国に行くことにした。
家督もセドが継ぐことになる。父上も了承済みだ」
「「「「「なっ!!」」」」」
「聞いてませんよそんな事!!何故僕に言わずにそんな事決めるんですか」
私が席に着くなり話をはじめ、こちらが謝罪をする暇もなく告げるレヴィに正直言って驚いた。
セドすら聞いてなかったようですごい勢いでレヴィに詰め寄り、前言を撤回するよう言うが、レヴィの首を横に振るばかりだった。
目の前で起きている兄弟喧嘩もそうだが、レヴィが今までに自分から話を始めることなどなかった。
そしてこの時点で先程感じた違和感の原因に気付いた。
いつも無表情で言われてから行動するレヴィが今日は自分から率先して動いているのだ。
周りを見ればイリヤも含めて全員が驚きと戸惑いの顔をして2人の言い合いを見ている。。
それにしても休学と家督を譲ると言う言葉は聞き捨てならない。
「悪いが、レヴィと2人で話がしたい」
セドの説得を割り込むように私が告げると全員が私の顔を見て頷くと静かに部屋を出て行った。
セドも渋々皆と共に部屋を出て行った。
「ルーチェに行くのは今回の呪の件が原因か?」
皆の気配が遠くなったのを確認をしてからの質問にレヴィは頷いた。
「ヴィルはどこまで知っている?」
「今回の事件に魅了の呪が使われたこと。
魅了の呪をかけられた者は全員解呪されている。
表向きは怪我人はいない事になっているが、1人倒れた者がいる。
呪の関係で倒れた者がルーチェに行くことになったとは聞いているが・・・」
「その倒れたのが私を庇ったアリアなんだ」
「ヴィーゼ家のか?
なるほど。それでレヴィも一緒に行くと?何故だ?
レヴィが共に行く理由はないと思うが?」
「理由・・・?」
「ああ。ヴィーゼ家はシュテルン家を代々護衛している。これは誰もが知っている。
そして護衛者にとっては主を守ることは当たり前だ。
アリア嬢にとっては当たり前のことをしたにすぎないだろう?
怪我したことを主がいちいち気にしてたらきりがない。
レヴィが休学して家督まで放棄する必要があるのか?」
我ながら意地悪な問いだなとは思うが、レヴィが何を思って共に行くと言っているのか興味があった。
どんな理由でレヴィが共に行くことを決意したのか。
それだけは聞いておかねばならないと思ったのだ。
「確かに護衛者の怪我を気にしてたらきりがないことかもしれない。
だが、シュテルン家にとってヴィーゼ家は護衛者じゃない。
家族のような存在で、ティルフ達は私にとって兄弟のような存在だ。
ヴィーゼ家もヴィル達も護衛者が怪我するのは当然と思っているようだが私は違う。
ヴィーゼ家が私を守ってくれるならヴィーゼ家を守るのが私の役目だ。
今回、アリアが庇ってくれなければ怪我していたのは私だ。
私が共に行ったからアリアが治るとは限らない。
それでもアリアには今まで色々と助けられきたのだから、私は私ができる事をする」
「・・・その為なら家督もいらないと?」
決意のこもった目でレヴィは頷く。
レヴィの答えにいささか怒気が入っていたのも気付いた。
私の問い方が悪かったのはわかるが、あの事件だけでこうも変わるのかと私は内心で驚いていた。
そしてレヴィは”兄弟のような存在”と言うが、本当にそうなのかと問い詰めたい気分だったが、今日はここまでにしておこうと追及するのをやめた。
「わかった。だが、1つだけ言っておくことがある。
例え家督を継がなかったとしてもレヴィはレヴィで、私の友だ。
何かあれば頼ってくれ。まー先日は痛い失敗はしたがな・・・」」
「頼りにしている」
視線をそらしながら言う私にレヴィは苦笑しながら答えた。
考えてみればレヴィと2人きりでこれだけ思ったことを話したのは初めてだった。
あの事件は忌々しいが、レヴィとこう言う時間を持てるようになったのならば悪いことばかりでもなかったのかもしれない。
あの後、私がレヴィがルーチェへ行くことを認めたのでアル達もこの件は何も言わなくなったが、セドだけはギリギリまで考え直すように説得を続けていた。
レヴィの旅立つ日、私達が未だに言えずにいた謝罪の言葉を告げるとレヴィが珍しいと言うより我々にとっては初めて微笑む姿を見せた。
「その件は学院を早く元に戻してくれるなら私は気にしない。
イリヤ、この件は全て君に任すから後はよろしく」
「お任せください」
レヴィの言葉にイリヤも笑顔で答えたが、私達にはその会話に嫌な予感がしてならなかった。
学院が再開し、私達は元に戻すために力を入れ、セドも文句を言いながらもレヴィの後を継いでいた。
そしてイリヤは嫌な予感通り、スパルタな指導で私達のサポートをしてくれた。




