⑧ 敵の攻撃
彼が走って行った先には、旧校舎の工事現場があった。
当然、割れたコンクリートや鉄パイプなど、瓦礫だらけである。
我が校の生徒の、品行方正な生活ぶりを見越して、トラ柄の紐で、簡単に囲んであるだけのその場所に、今まさに、雪村くんが突っ込んで行こうとしていた。
ボクは、彼の足元の地面と、瓦礫の中に、わずかな動きが有ったのを、見逃さなかった。だから次の瞬間、時間を止めたのだ……しかし、意識的に時間を止めたのは初めてだったので、思いのほか上手く行った事に、我ながらびっくりしていた。
雪村くんの動きも止まっていた。危なかった。そのまま瓦礫の中に突っ込んでいたら、大けがだけでは済まなかっただろう。そこに転がっている、様々のモノの尖った部分が、残らず上を向いている。ソレはやはり、不自然な事だった。
そして今、彼がつまずいて転びかけている地面にも、運動場には不似合いな小石が有った。こんなモノ、さっきまで無かったはずだ。ボクはとりあえず、彼の腕をつかんだ。すると、彼の時間凍結が解除された。カンで行動してみたが、どうやらアタリだったようだ。
「渡辺くん……コレは一体?」彼は不思議そうに訊いて来た。
「詳しい事は、後で説明するよ。それより、敵を探そう。」
ボクは彼にそう言うと、相手のコートを振り返った。
すると、全てが止まって居るはずの時間の中で、不自然に感じる人物が、一人だけ居たのだ。わずかに動いたその人物は、誰あろう、件の"委員長"だったのである。
委員長の方も、ボクたちの様子に気づいたようだった。
「なるほど。対象の人物と、自分以外の時間を、見かけ上凍結する……面白いチカラを持っているんだな?」
彼女はそう言って笑ったが、相変わらず目が怖い。
「委員長、何故こんな事を?」ボクは尋ねた。
すると彼女は、くくくっと、小さく笑ってこう言ったのだ。
「こんなつまらん念力使いより、どうせなら、オマエに乗り移るべきだったな?」
そしてそのカラダから、見る見るうちに、黒いモヤモヤしたモノが出て来た。それと同時に、委員長は意識を失い、その場に倒れてしまったのだ。そしてそのモヤモヤが、ボクに迫って来た。
ヤバイぞ。コイツ、ボクの中に入るつもりだ!
直感的にそう思った瞬間、目の前に閃光が走り、見覚えのあるセーラー服を着た人物が、ボクと黒いモヤモヤとの間に、割って入ったのである。
ソレは、雪子さんだった。
彼女は金色に輝く剣を握り、正眼に構えていた。




