⑥ 見習い調査員
そんな訳で、ボクは目出度く、チーム・サン・ジェルマンの、昭和56年支部、見習い調査員となった。
実は、時々本部から、連絡係兼サポート役として、雪子さんがやって来るのが、何よりも楽しみなのだが……この件は、伯爵が人選を配慮してくれたらしい。
そうそう、その本部なんだけど、同じ時間軸上の、20年後辺りに有るらしい。詳しい場所は、お互いの安全のためにと、教えてもらえなかったけどね。
4月になり、無事に高校2年生となったボクは、通常通り、部活動や勉学に励む事になった。例の雪子さんの、時空を超えた弟と言われている、真田雪村くんとも、また同じクラスになった。
時空調査団としては、どうやらコレが、好都合らしかった。雪村くんの成長を、陰ながら見守る事も、大事な任務なんだそうな。
学校生活以外の場面では、あの黄色いワンピースの、村田京子さんが、同じ時空に存在しているので、大丈夫らしい。なんと彼女と雪村くんは、小学生からの付き合いの、幼なじみなんだとか。
ボクは、再びクラスメイトとなった雪村くんと、言わば戦略的に友人となった。ただ、好きな部活動は譲れないので、彼は陸上部に所属したが、ボクは写真部に入っていた。そもそもボクは、運動音痴なのだ。
もっとも、彼もカメラが嫌いじゃないらしく、暇な時は、ちょくちょく写真部を、覗きに来る事もあったのだ。そんな時はよく、ボクと一緒に暗室に入り、モノクロフィルムで撮った写真を、現像したりして見せ合ったものだ。
そんな5月の、或る日曜日の事だった。ボクはいつものように、鶴舞公園の散歩コースを歩いていた。すると、例のベンチにまた、雪子さんが座って、本を読んでいるところに出くわしたのだ。
今日の本は緑色の皮表紙だった。彼女は視線を上げて、ボクに挨拶した。
「あら、正人くん。こんにちは。お元気?」
前にも思ったが、彼女の話し方は、どことなく古風な感じがした。見かけは確かに17歳だが、ホントはいくつなんだろう?……まあ、何れにしても、彼女は今日も美しい。
「こんにちは、雪子さん。今日も時空パトロールですか?」
「うん、ソレも有るけど、今日は貴方を待っていたのよ?」
「ボクに何か、任務を頂けるんですか?」
「うん、任務というか、今日から2、3日の間、ちょっと警戒して欲しいのよ。」
「ソレは、雪村くんの周辺を中心に、という事ですね?」
「そう、学校に居る間の、始業時から終業時までよ。このところ、時空に乱れが有るの。頼めるかしら?」
「…お安い御用ですよ。」
「ありがとう。頼りにしてるわよ?任務を上手にやり遂げたら、ご褒美をあげるわね。」
ボクはちょっとだけ、期待してしまった。




