㉑ 球技大会
再び木曜日になった。
今日はいよいよ、校内球技大会の本番だ。
恐らく保護者からクレームが入ったのだろう。
例の旧校舎の工事現場は、以前より厳重に、黄色い鉄板の塀で囲まれていた。
コレで、例えボールが、後ろに逸れてしまっても、ソレを追いかけて、瓦礫の中に頭から突っ込む心配は、無くなった訳である。
さて、第1試合が始まった。試合はトーナメント方式で行われた。
まずはA組対B組だ。この試合は無事に終了した。結果はA組の勝利だった。
次にC組対D組。事件はその時に起こった。
試合の終わったA組とB組は、隣の空きコートで練習していた。
負けたB組も、この後、残酷な事に、最下位決定戦が待っているのだ。
ソレは、ボクがトスを上げて、雪村くんがスパイクを打った瞬間の事だった。
その場の誰もが、ボールの行方に注目していた時、異変が起こった。
ボクらの背後の校舎の裏から、体高2m程の、ロボットが走って来たのだ。
アレは確か……ガンダムとかいう……去年の文化祭で、3年生が作った段ボール製のヤツだ。
あまりにも出来がイイから、今年の文化祭でも使いまわそうって、誰かが言い出して、渡り廊下の隅に保管されていた……待てよ。こんな事が出来る能力者は……佐倉さんは、どこだ?ボクがそんな事を考えて居る間に、そのロボットは、どんどんこちらに迫って来る。
すると今度は、籠に入っていた予備のバレーボールが、次々に飛び出して、そのロボットに向かって飛んで行く。コレは……雪子さんかな?
そして、手洗い場の水道の蛇口が、すべて上を向いて開き、水が飛び出してロボットに襲い掛かる。コレは花井くんだ。
更に、運動場の地面の小石も、まるで弾丸のように飛び交い始めた。コレは委員長だ。球技大会の現場は、最早、すっかりカオスと化していた。
最後に、さっきまで晴れていた空が、一天にわかに掻き曇り、まるでこの高校だけを狙ったような、集中豪雨になった。当然の事ながら、各試合は、即中断となった。コレはもちろん、町田さんの仕業だ。
先程の段ボール製のロボットは、コートまで辿り着く事も無く、グチャグチャに濡れそぼって、地面に倒れていた。バレーボールもたくさん散らばって落ちていたが、この雨の中、誰も拾いに行こうとは、言わなかった。
暫くすると、雨が止んで、皆で片付けをする事になった。今しがたの騒動の、一体どこまでが、皆の認識になっているのか?ボクはふと、そんな疑問を持った。そして、片付けに奔走する他の皆を尻目に、ボクはこっそり、渡り廊下の隅に行ってみたのだ。




