⑮ 人形使い
翌日の月曜日。ボクはいつものように、高校に登校した。
3時限目は理科室で、地学の授業だった。
先生が黒板の前で、地層の模型を使って説明している時、ボクは視界の片隅に、ちょっとした異変を捉えていた。
理科室の右後方に置いてある、"人体模型くん"の目が、少しだけ動いたように見えたのだ。ボクの席が、たまたま中央の列の、一番後方の場所だったから、気がついた。じっと眼を凝らして見ていると、今度は頭がこちらを向いた。もう間違いない。オカルト現象でなければ、誰かがアレを、動かしているのだ。
委員長が、悪ふざけをするとは思えない。それに彼女の能力では、確か野球のボールサイズまでが限界だと、言っていたはずだ。一体誰だ?誰がヤッているんだ?ボクはそれとなく、辺りを見回した。すると教室の後方、一番左隅に座っている、ミディアムヘアの姫カットの女子が、悪戯っぽく笑いながら、こちらを見ていた。
明らかに、ボクをターゲットにして、ふざけているのだ。そしてボクと目が合うと、彼女はそっと右手を差し出し、何か白くて小さなモノを、ボクに向かって投げて来た。ボクが受け取ったソレは、結び文だった。なかなか味なマネをする女子だ。手紙には、ただ、"放課後に中央校舎の屋上で待つ"と書かれていた。
その日の授業が全て終わった後、ボクは手紙の指示通りに、屋上に向かった。姫カットの彼女は、既にそこに来て、待っていた。彼女は、ピンク色の大きなウサギの縫いぐるみを、腕に抱えていた。比較的小柄な彼女と、縫いぐるみが、同じくらいのサイズに見える。
「ありがとう。来てくれたのね。」
彼女はまず、そう呟いた。
「あの人体模型は、やっぱりキミが動かしていたんだね?」
念のために、ボクは彼女に尋ねた。
「そうよ。私のチカラは一種の念力。委員長のチカラも、そうなんでしょ?私、あなたたちの会話を、聞いちゃったのよ。」
「それで、ボクを試したんだね?」
「そうよ……こんな風にね。」
彼女はそう言うと同時に、抱えていた、大きなピンクのウサギを手放した。
するとソレは、まるで命が宿っているかのように、その場で踊りだしたのだ。まずは激しく、ステップを踏んだかと思えば、片足で立って、その場でクルクルと回転したり、果ては、ムーンウォークまで披露して見せた。そして最後に、ペコリとお辞儀した。




