⑬ 動物園
ボクらは、そのまま真っすぐ進み、右手にインドサイを眺め、左側でゾウを見て、また右手に向かい、ライオンを見た。そのままトラの檻まで行き、キリンを見た後、シロクマとペンギンのゾーンに進んだ。
その間も雪子さんは、「わあ、凄い。」とか「まあ、可愛い。」とか、まるで動物を初めて見るような、新鮮なリアクションをしていた。実際、彼女は、小学校の写生会以来の、訪問だという事だった。
ボクはそんな無邪気そうな彼女の表情と、可愛い動物たちの姿を、どちらも余す事無く、カメラのフィルムに収めて行った。写真撮影が趣味のボクにとって、ソレは、正に至福の時間だった。因みに、デジタルカメラやスマホの普及は、まだまだ先の未来の話である。
そして、そんなボクらが、"小鳥とリスの森"という、放し飼い型のゾーンに入った時の事だった。ボクは、小学5年生くらいの不思議な少女と、少し離れた所から、ソレをじっと見つめる、怪しい白人の中年男性を、そこで見かけたのだ。
その少女の周りには、小鳥とリスがまとわりついていた。何だか、異常な程、彼女は動物たちに、なつかれている感じがした。それを、そのガイジンが、明らかに見逃すまいと、熱心に観察している。もしかして、ヘンタイなのか?
「雪子さん、アレって……?」ボクが心配になって、思わず彼女に声を掛けると、「ああ、アレ?大丈夫よ。放っておいても。」と、事も無げに答えた。
「それって、どういう……?」
「彼はいずれ、彼女をスカウトするのよ。今はその、下見中ってところかしらね。」
「……そうなんですか。」
「むしろ、この時空の彼らに、干渉しない方がイイわ。私たちは、こっそり出ましょう。」
「はい……。」
ボクは訝しい気持ちのまま、それでも雪子さんの言う事を聞いて、その場を離れた。
そのままキツネ、タヌキのゾーンに歩きながら、雪子さんがボクに言った。「因みに、さっきの小学生の方はね、まあ、私の妹みたいなモノよ。そしてガイジンの方は、私のチームのボス。貴方も先日、鶴舞公園で出会ったでしょ?」
「……えっ、あ、ああ、あの時の!」ボクはようやく思い出した。
同じ人物なのに、服装が少し違うだけで、随分印象が変わるものだ。
それにしても、ボクよりも先に、あんな幼い女の子にまで、目を付けて居たなんて。
「見ていて、何となく察しがついたと思うけど、あの子のチカラは"動物使い"。でも、動物を使役するというより、むしろ動物とお友だちになる感じなんだけどね。」雪子さんが、そんな風に説明をつけ加えた。




